180 / 328
教師2年目
発見
しおりを挟む
「これ、俺の魔力との根競べじゃないか……?」
「そんなのわかりきってたでしょ?」
「いや、これ最終盤に見つけたら俺使い物にならないと思うんだけど……」
「その時は仕方ないから私が全て薙ぎ払ってあげるわ」
それが問題なのである。
王都内でライヤというストッパーなくしてアンが暴れればどこまで被害が拡大するかわかったものではない。
各家の庭が広すぎて家と家の距離がいかに遠いとはいえ、そこはアン。
どこまで巻き込まれるやら。
フィオナが見せてくれた各家の地下の様子などを思い出しながら順にめぐっていく。
「王家としてはどうなんだ? 各貴族家もわざわざ自宅の地下のことまで伝えたりはしないだろ? なにか地下で良からぬことを企んでいたりとかは想定していないのか?」
「想定していないと言えば嘘になるわね。ただ、今回のような国家の未来を左右しない事項については捨て置いているのが現状よ。捨て置いているというより、把握できていないっていうのが実際のところだけれど」
「そんなもんか」
ずっと緊張していてももたない。
軽く話しながら移動していく。
魔力の感知にライヤは魔力を全て費やしているので飛行しての移動などできない。
徒歩での移動となる。
「明らかにおかしい反応があるのはいいのか?」
「今回の事件に関係ないならとりあえず捨てていいわ」
「了解」
記憶にある地図と明らかに違った地下空間が広がっている場所などもあったが、とりあえずは無視して進んでいく。
「……?」
「どうしたの?」
ライヤが地面に視線を落とし、立ち止まる。
「ここおかしいぞ? 魔力が小さすぎる……」
貴族家の地下にいるのはほとんどは貴族だ。
公に出来ない何かを地下で行っているのだろう。
彼らは総じて魔力を多く持っている。
だからこそ、ライヤの魔力感知でも読み取りやすいのだが、その足元に感じる魔力はかなり微弱。
それこそ平民の、発展途上のような。
「アン!」
「すぐに軍を呼ぶわ!」
「それには及びません」
振り返れば、フィオナと見たことのない顔が十数人。
「こんなこともあろうかと、部下と共に令状を取ってまいりました」
「流石ね。行くわよ」
暗部も、一応は軍属。
その権限を使って来たのか。
「あまりにもタイミングが良すぎないか?」
「私も驚いています」
とにかく、助かったのは確かだ。
時刻は午後3時ごろ。
どんな立場の貴族であれこの時間に家にいることは少ない。
「アン・シャラルよ。少し入らせてもらうわ」
名前だけで使用人たちを退かせるアン。
こういう時に名前って便利だな。
邸宅から地下に20メートル程下がったところ。
かなり綺麗に整備された空間がそこにはあった。
「ここだな」
木の扉の奥に小さな魔力が数個とそれよりは大きな魔力が一つ。
「鍵はあるけど、アン」
「任せて。中にいる人! 下がっていないとどうなっても知らないわよ!」
アンは大声で扉奥に注意を呼びかけ錠前に手をかける。
ジュウ……!
音を立てて錠前が溶け落ちる。
「……間違いないわね」
扉の奥にいたのは攫われたと思しき少女たち。
怯えて部屋の奥で縮こまっている。
「俺はライヤ・カサン。学園の教師だ」
自らの白ローブを示すように前に出る。
教師だと分かれば安心してもらえるだろうと思っての行動だったが、効果はない。
「ひっ……」
むしろ、逆効果まであった。
そんなに俺って怖いか……。
目つきが悪いのは認めるけど……。
「……ここにはアン王女と共に来た。安心して欲しい。すぐに地上に連れて行く。そして、教えて欲しいんだけどここにもう1人来なかったか?」
ぷるぷると震えて口を開かない少女たち。
無理もないか。
「お願い、私の友人も捕まってるの」
「……わかりませんけど、奥の方かもしれないです………」
アンが話しかけると、割とすんなりと一番大きな子が口を開いた。
恐らく彼女が貴族の子女だろう。
「奥だな、わかった。先輩」
「えぇ、私たちはひとまず彼女たちを学園まで送ります」
「いや、軍の方で一旦保護して欲しい」
「? わかりました」
フィオナとその部下たちにその場を任せ、アンと共に奥に進む。
奥と言っても、精々数十メートル。
すぐに目標には辿り着いた。
「嘘……!?」
アンが言葉を失う。
声が出なかったのはライヤも同じだ。
そこで2人が見たのは一糸まとわぬ状態で手枷により吊り下げられていたヨルの姿だった。
「そんなのわかりきってたでしょ?」
「いや、これ最終盤に見つけたら俺使い物にならないと思うんだけど……」
「その時は仕方ないから私が全て薙ぎ払ってあげるわ」
それが問題なのである。
王都内でライヤというストッパーなくしてアンが暴れればどこまで被害が拡大するかわかったものではない。
各家の庭が広すぎて家と家の距離がいかに遠いとはいえ、そこはアン。
どこまで巻き込まれるやら。
フィオナが見せてくれた各家の地下の様子などを思い出しながら順にめぐっていく。
「王家としてはどうなんだ? 各貴族家もわざわざ自宅の地下のことまで伝えたりはしないだろ? なにか地下で良からぬことを企んでいたりとかは想定していないのか?」
「想定していないと言えば嘘になるわね。ただ、今回のような国家の未来を左右しない事項については捨て置いているのが現状よ。捨て置いているというより、把握できていないっていうのが実際のところだけれど」
「そんなもんか」
ずっと緊張していてももたない。
軽く話しながら移動していく。
魔力の感知にライヤは魔力を全て費やしているので飛行しての移動などできない。
徒歩での移動となる。
「明らかにおかしい反応があるのはいいのか?」
「今回の事件に関係ないならとりあえず捨てていいわ」
「了解」
記憶にある地図と明らかに違った地下空間が広がっている場所などもあったが、とりあえずは無視して進んでいく。
「……?」
「どうしたの?」
ライヤが地面に視線を落とし、立ち止まる。
「ここおかしいぞ? 魔力が小さすぎる……」
貴族家の地下にいるのはほとんどは貴族だ。
公に出来ない何かを地下で行っているのだろう。
彼らは総じて魔力を多く持っている。
だからこそ、ライヤの魔力感知でも読み取りやすいのだが、その足元に感じる魔力はかなり微弱。
それこそ平民の、発展途上のような。
「アン!」
「すぐに軍を呼ぶわ!」
「それには及びません」
振り返れば、フィオナと見たことのない顔が十数人。
「こんなこともあろうかと、部下と共に令状を取ってまいりました」
「流石ね。行くわよ」
暗部も、一応は軍属。
その権限を使って来たのか。
「あまりにもタイミングが良すぎないか?」
「私も驚いています」
とにかく、助かったのは確かだ。
時刻は午後3時ごろ。
どんな立場の貴族であれこの時間に家にいることは少ない。
「アン・シャラルよ。少し入らせてもらうわ」
名前だけで使用人たちを退かせるアン。
こういう時に名前って便利だな。
邸宅から地下に20メートル程下がったところ。
かなり綺麗に整備された空間がそこにはあった。
「ここだな」
木の扉の奥に小さな魔力が数個とそれよりは大きな魔力が一つ。
「鍵はあるけど、アン」
「任せて。中にいる人! 下がっていないとどうなっても知らないわよ!」
アンは大声で扉奥に注意を呼びかけ錠前に手をかける。
ジュウ……!
音を立てて錠前が溶け落ちる。
「……間違いないわね」
扉の奥にいたのは攫われたと思しき少女たち。
怯えて部屋の奥で縮こまっている。
「俺はライヤ・カサン。学園の教師だ」
自らの白ローブを示すように前に出る。
教師だと分かれば安心してもらえるだろうと思っての行動だったが、効果はない。
「ひっ……」
むしろ、逆効果まであった。
そんなに俺って怖いか……。
目つきが悪いのは認めるけど……。
「……ここにはアン王女と共に来た。安心して欲しい。すぐに地上に連れて行く。そして、教えて欲しいんだけどここにもう1人来なかったか?」
ぷるぷると震えて口を開かない少女たち。
無理もないか。
「お願い、私の友人も捕まってるの」
「……わかりませんけど、奥の方かもしれないです………」
アンが話しかけると、割とすんなりと一番大きな子が口を開いた。
恐らく彼女が貴族の子女だろう。
「奥だな、わかった。先輩」
「えぇ、私たちはひとまず彼女たちを学園まで送ります」
「いや、軍の方で一旦保護して欲しい」
「? わかりました」
フィオナとその部下たちにその場を任せ、アンと共に奥に進む。
奥と言っても、精々数十メートル。
すぐに目標には辿り着いた。
「嘘……!?」
アンが言葉を失う。
声が出なかったのはライヤも同じだ。
そこで2人が見たのは一糸まとわぬ状態で手枷により吊り下げられていたヨルの姿だった。
0
あなたにおすすめの小説
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる