受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128

文字の大きさ
218 / 328
教師2年目

忘れていた課外学習

しおりを挟む
「学園長、他クラスとの交流戦とかしても大丈夫ですか? 何なら、他学年でも構わないです」
「その心は?」
「流石にクラス内だけで向上心を持ち続けろと言うのも無理があります。端的に言えば、刺激が欲しいんです」

競争相手もはっきりしないのにとりあえず鍛えろと言うのは無理がある。
そんなことが出来るのは一部の格闘家くらいではないだろうか。
自らを律し、自らの限界を超える。
凄いことだとは思うが、同時に出来るわけないなとも思う。

「他クラスを提案したのは、ちょうどよくSクラスを目の敵にしているクラスがあるからです。彼らならうちをどうにか負かしてやろうと全力を注いでくれるでしょう」
「……どの学年でも共通してその問題はありますからね……」

学年内の不和。
第一位はS・Aクラスとその他に分けられる貴族と平民の隔たり。
第二位はSクラスとAクラスの関係だ。
ちなみにそれ以外は基本的にない。

「不和が解消されないのは互いに関わりを持たないからだと思います。相手のことを知らないままでは仲良くなれるものもなれないでしょう」
「より溝が深まる可能性は?」
「そいつらは放っておいてもどうせ社会に出たタイミングでより仲悪くなりますよ。今だから顔を合わせてないだけなんですから。でも、相手に特別嫌な感情を抱いていないのに情報がないから敬遠しているままなのは学校として何とかしてもいいのでは?」
「ふむ……」

学園長はその綺麗な顔立ちをわずかに思案に曇らせる。

「確かに、学園をコミュニケーションの場として扱ったことは無かったかもしれません」
「勉強を教えるのは大切ですが、たかがクラス分けの結果で生徒同士の不和が起こってしまうのはどうかと」
「言われてみればそうね。その解決策が交流戦?」
「はい。終了後は互いに意見を出し合う時間を設けようかと思っています」
「……喧嘩にならないかしら?」
「喧嘩程度なら可愛いものでしょう」


「いいでしょう。予定しておきます。ただ、すぐには行えませんよ?」
「もちろんです。何なら、3年生になってからでもいいかもしれません。学年途中で変更するのは難しいでしょうし」
「来年はライヤ先生がSクラスの担任とは限りませんよ?」
「それはそうですが。まぁ、その時はその時です」

だが、ライヤは十中八九来年も担任できるだろうと踏んでいた。
ライヤとウィルの関係をウィルが恐らく意図的に漏らした以上、彼らの動向には気を付けなければいけない。
その監視役として、当事者であるライヤが担任ならば先生から漏れるということがなくなるからだ。

それはそれとして。
生徒たちの仲が悪いのが嫌なのも本音だった。




「今年の課外授業で行きたいところとかあるか?」
「それって生徒に選ぶ権利があるんですか?」

もう11月になろうかという日。
ライヤがクラスで言い出したことだ。

「いや、決定権はないけど」
「なんですか」
「担任が候補を出すんだけどさ。別にないんだよなぁー」

つまり、ライヤが考えるのが面倒だったのである。
この頃忙しくて忘れていたというのもある。

「だから、採用するかはともかく行きたいところないか? もちろん、授業の一環だからな?」

海に遊びに行きたいとか言われても困る。
遠いし。

うーんと悩む生徒たち。

「あ、俺! 王城に行ってみたいです!」
「なるほど」

ゲイルは王城を提案した。
興味を示したのはデラロサとマロン。
この3人は貴族とはいえ王城に足を踏み入れたことは無いだろうから、当然か。

「でも、王城ってウィルの家なんだよな。ティムとエウレアも出入りしてるし、シャロンもだっけ?」
「……ぁ、はい……。……おばさまに会いに……」
「だよな? ってことで有力候補にはならないかな」
「じゃあー、お菓子屋さんはー?」

マロンの提案にギラリと目を光らせる女子陣。
ウィル、エウレア、シャロンもやはり女の子という事か。

「確かにお菓子の製造工程とかは勉強になるだろうな。職人さんの技術を見るっていうのもあんまりない機会だし。割と良い案だな」
「やったー」
「ただ、お菓子食べ放題とかはないからな?」
「ええー」

高望みが過ぎる。

「あ、あの、魔物と戦ってみたいです」
「……強気だな?」

そんなことを言い出したのはティム。

「もちろん、先生が僕たちに見合うと判断した魔物で構いません。ですが、僕としてはそろそろ実戦をと……」

王女を守るという任があるティムとエウレア。
ティムは責任感が人一倍強いので早く強くならなければと焦りがあるのだろう。
相棒であるエウレアが強い分尚更か。

「それも候補の一つかな。確かに勉強になるだろうな、色んな意味で」

魔物は動物と違って殺したところで得られるものはほぼない。
どういう理屈か知らないが、死体が消えるのだ。
肉も取れなければ皮や骨も当然取れない。
だが、他の動物や人を襲う習性があるので討伐はしておくに越したことは無い。
ただ、命を奪うのには変わりない。
10歳で学ぶことだろうか。

「……学園長に確認だな」

学園長が過労死しないだろうか。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...