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教師2年目
期待
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氷魔法に相性がいいのはもちろん火魔法。
魔法に得意不得意のないライヤならまず間違いなく火魔法を選ぶ。
問題は、技量で上に立たれているライヤがなりふり構わず力業を使って来た時にどう対応するか。
わずかな時間しかなかったが、ウィルはこの問いに答えを出した。
ウィルがくるりと指を回すと水のヴェールがその姿を包む。
氷魔法をライヤの火によって水にされたものをまた魔法で操るのとは違う。
溶かされた結果の水にはライヤの魔法が作用しており、通常よりも制御を奪われるリスクが高い。
よって、新たに水魔法を発動する必要がある。
だが、これによって単純な熱量による攻撃は避けることが出来る。
「なるほど。そりゃそうだ」
ライヤは独り言ちて火力を徐々に緩める。
ライヤが一帯を覆う魔法を使えるのなんて些細な時間でしかない。
ならば、やり過ごす。
単純な話である。
相手の場に乗ってやる道理はない。
ライヤが常に言っていることだ。
それに、今回ライヤが作り出した場は、本来のライヤのやり方に則るものではない。
無理をした上に成り立っているものである。
ライヤとしても待たれるのがわかっていて限りある魔力を無駄遣いする理由はない。
「じゃあ、仕切り直しだな」
そんなことを言いながらライヤはウィルを包むヴェールの前に立つ。
パキンッ!
ガシュッ!
左手を水にかざすとその部分の水が凍り、右手に握った剣に雷魔法を纏わせ高速で振るう。
「ぐっ……!」
ウィルはその剣を辛くも受け止めながらヴェールを下ろして後ずさる。
ライヤはと言えば、ウィルに息つく暇を与えない連続攻撃。
それも、ただ剣を振るうだけでなく、使っている魔法がほとんど一振りごとに変わっている。
こうなると受けている相手もそれに合わせて魔法の属性を変える必要が出てくる。
より後手に回っていく。
「先生、俺たちの時よりも厳しくないか?」
ゲイルが言うように、ライヤはウィルに対してより厳しくしていた。
とは言っても露骨なものではないし、特に問題になるような程度でもない。
横で見ているヨルはライヤが零していた言葉を思い出す。
「俺はさ、別に規格外な人間じゃないんだよ。どこまでいっても普通の人間の延長なわけで。何からでもヨルたちを守れる気なんてさらさらしない。もちろん、守ろうという気概はあるけどな。でも、むしろ俺が助けてもらうことが多いと思うんだよな」
「でも、私は戦えませんよ?」
「魔法はな。でも、近接は中々のものだろ?」
「それは、まぁ」
「なら、ちょうどいい人材が家族にいるじゃないか。どちらかと言えば魔法が得意で成長過程のな」
その時は聞き流していたが、ライヤはウィルを強くするつもりなのだろう。
教師としてどうなのだろうかという個人への期待だが、行き過ぎていれば止めればいいだけのこと。
「思考が回らなくなると、制御が甘くなるわけだ」
あっ、とウィルが声を出す間もなく。
剣を振るっていた右手とは逆の左手がウィルのローブの腰あたりを掴み、足払いをかけられたウィルは簡単に床に転がる。
「どんな時も、思考を止めないこと。これが簡単なようで難しいんだよな」
そう言ってライヤはテストを締めくくった。
「ライヤさん! 意地悪が過ぎます!」
「悪かったって! ウィルならもっとできるという期待を込めてだな……」
「か弱い10歳の女の子なんですよ!?」
「か弱い……?」
「何か文句が?」
「何もないです」
家に帰ってからというもの、ウィルは不満たらたらであった。
悔しさで八つ当たりしているだけだったが、そんなやり取りも楽しい。
「あら、良いところの1つや2つもなかったの?」
話を聞いていてアンが意外そうに言う。
アンの所感では、勝てないのは当然としても見せ場の1つくらいはウィルが作れると踏んでいたのだ。
「なんか、俺の調子が凄い良かったんだよなー。アン、何か知らないか?」
「さぁ? そんなこと言われてもねぇ」
「またライヤが強くなったんじゃないの~?」
晩御飯の片づけを終えたフィオナがその豊かな双丘にライヤの頭を抱えながら言う。
「そうだったらいいなぁ」
そうだったらいいなぁ……。
魔法に得意不得意のないライヤならまず間違いなく火魔法を選ぶ。
問題は、技量で上に立たれているライヤがなりふり構わず力業を使って来た時にどう対応するか。
わずかな時間しかなかったが、ウィルはこの問いに答えを出した。
ウィルがくるりと指を回すと水のヴェールがその姿を包む。
氷魔法をライヤの火によって水にされたものをまた魔法で操るのとは違う。
溶かされた結果の水にはライヤの魔法が作用しており、通常よりも制御を奪われるリスクが高い。
よって、新たに水魔法を発動する必要がある。
だが、これによって単純な熱量による攻撃は避けることが出来る。
「なるほど。そりゃそうだ」
ライヤは独り言ちて火力を徐々に緩める。
ライヤが一帯を覆う魔法を使えるのなんて些細な時間でしかない。
ならば、やり過ごす。
単純な話である。
相手の場に乗ってやる道理はない。
ライヤが常に言っていることだ。
それに、今回ライヤが作り出した場は、本来のライヤのやり方に則るものではない。
無理をした上に成り立っているものである。
ライヤとしても待たれるのがわかっていて限りある魔力を無駄遣いする理由はない。
「じゃあ、仕切り直しだな」
そんなことを言いながらライヤはウィルを包むヴェールの前に立つ。
パキンッ!
ガシュッ!
左手を水にかざすとその部分の水が凍り、右手に握った剣に雷魔法を纏わせ高速で振るう。
「ぐっ……!」
ウィルはその剣を辛くも受け止めながらヴェールを下ろして後ずさる。
ライヤはと言えば、ウィルに息つく暇を与えない連続攻撃。
それも、ただ剣を振るうだけでなく、使っている魔法がほとんど一振りごとに変わっている。
こうなると受けている相手もそれに合わせて魔法の属性を変える必要が出てくる。
より後手に回っていく。
「先生、俺たちの時よりも厳しくないか?」
ゲイルが言うように、ライヤはウィルに対してより厳しくしていた。
とは言っても露骨なものではないし、特に問題になるような程度でもない。
横で見ているヨルはライヤが零していた言葉を思い出す。
「俺はさ、別に規格外な人間じゃないんだよ。どこまでいっても普通の人間の延長なわけで。何からでもヨルたちを守れる気なんてさらさらしない。もちろん、守ろうという気概はあるけどな。でも、むしろ俺が助けてもらうことが多いと思うんだよな」
「でも、私は戦えませんよ?」
「魔法はな。でも、近接は中々のものだろ?」
「それは、まぁ」
「なら、ちょうどいい人材が家族にいるじゃないか。どちらかと言えば魔法が得意で成長過程のな」
その時は聞き流していたが、ライヤはウィルを強くするつもりなのだろう。
教師としてどうなのだろうかという個人への期待だが、行き過ぎていれば止めればいいだけのこと。
「思考が回らなくなると、制御が甘くなるわけだ」
あっ、とウィルが声を出す間もなく。
剣を振るっていた右手とは逆の左手がウィルのローブの腰あたりを掴み、足払いをかけられたウィルは簡単に床に転がる。
「どんな時も、思考を止めないこと。これが簡単なようで難しいんだよな」
そう言ってライヤはテストを締めくくった。
「ライヤさん! 意地悪が過ぎます!」
「悪かったって! ウィルならもっとできるという期待を込めてだな……」
「か弱い10歳の女の子なんですよ!?」
「か弱い……?」
「何か文句が?」
「何もないです」
家に帰ってからというもの、ウィルは不満たらたらであった。
悔しさで八つ当たりしているだけだったが、そんなやり取りも楽しい。
「あら、良いところの1つや2つもなかったの?」
話を聞いていてアンが意外そうに言う。
アンの所感では、勝てないのは当然としても見せ場の1つくらいはウィルが作れると踏んでいたのだ。
「なんか、俺の調子が凄い良かったんだよなー。アン、何か知らないか?」
「さぁ? そんなこと言われてもねぇ」
「またライヤが強くなったんじゃないの~?」
晩御飯の片づけを終えたフィオナがその豊かな双丘にライヤの頭を抱えながら言う。
「そうだったらいいなぁ」
そうだったらいいなぁ……。
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