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教師3年目
機会
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「あれは気にしないように」
「とは言いますけど……」
ミクがチラリと後ろを向くが、笑顔で自分に手を振っているマリオットと目が合ってバッ! とこちらを向く。
そら怖いよな。
「そこの見学者。うちの生徒を怖がらせるようならつまみ出すぞ」
「そんなことしていいのかな?」
「もちろん。ここは俺が責任者だ。俺の生徒に危害を加えるやつは俺の権限でつまみ出す」
無駄に気迫のこもったライヤの言葉にマリオットは口をつぐむ。
それを見てライヤは視線を外す。
「さて、そろそろ校舎が出来るから来学期からは座学の授業も始まるだろう。つまり、テストが実技だけの最初で最後の機会ってことだな。準備は順調か?」
「でも、先生。準備って言っても何をすればいいか……」
紙で受けるテストとの最大の相違点は合格基準が明確でないことだろう。
特に今回は同じクラスに本来なら違う学年である生徒たちが所属しているため、目安でも合格点を設定することが難しい。
学年が違えば同じことを教えていても成長率が違うのは当たり前だろう。
前提として持っている知識であったり、体力であったリが違うのだから。
「まぁぶっちゃけた話、俺は今回そう簡単に落第を出すような気はない」
いつもないが。
「みんなの努力は授業でずっと見てきたし、ちゃんと成長しているのも確認している。ただそれを試験という形で確かめるというだけだ。手を抜くとか、ズルをするというような行為がない場合はちゃんと合格させる」
「いやー、本当に先生なんだねぇ……」
「まだ信じてなかったのか」
「その場限りの嘘で生徒たちに一日だけ先生と呼ばせている可能性だってあるよね」
「それで? 信じてもらえたか?」
「あんなに信頼されている様子ならまぁ間違いはないだろうねぇ」
そこまで疑われていたことが甚だ不本意だが。
「学校ねぇ……。ランボル、僕の印象にある学校とはかなり違ったイメージだったんだけど、僕が間違っているのかな?」
「いえ、帝国のものと比べれば違うのは当然でしょう。帝国における学校とはつまり軍人を養成する場です。対してこちらは民衆の平均値を高めようとしているように感じます。帝国ではその後軍に所属することを加味して厳しい指導を行うこともありますが、こちらではそんなことはないのでしょう」
丁寧な説明をどうも。
「でも、平民が余計な知識をつけたら治めるのが大変だったりしないのかい?」
「平民がもつ知識は元々余計なものなんかじゃないんだよ。前提として、王族貴族に都合の良い政治をし過ぎているだけで、政治は平民まで含めた国民のためにあるものだ。それが間違っていない限り、国民から牙をむかれることなどそうそうないし、あっても少数で鎮圧できる。俺は教育の価値は才能の発掘にあると思っている」
「と、言うと?」
「想像して欲しいんだが、ある辺境に知識を持てば時代を変えるレベルの発明を行える天才がいたとする。お前たちに分かりやすいように兵器でもいい」
「うん」
「だがその子供は農家の生まれで文字すら書けず、そのまま農家を継ぐことを当然だと思っているとしよう。本人が変わりたいと思っているならまだしも、そのままでいいと思っているような人材をどうやって国は発掘すればいい?」
答えは、出来ない、だ。
「そこで、学校だ。王国のように7年間と言わずとも、3年ほどでもいい。学問に触れる機会を作って自分に適性があるのかを俯瞰的に判断する機会を与える。国としても優秀な生徒というのは喉から手が出るほど欲しいもんだろ? 王国ですらいくら優秀でも平民だと苦労する傾向にあるから帝国だともっと難しいかもしれないけどな」
ライヤもアンと同じ学年じゃなかったら埋もれてしまっていただろう。
良くてイプシロンと同じ方向性だ。
ライヤの人生で最大の幸運はアンと出会ったことだろう。
それがなければすべての前提が崩れる。
「新しい国造りの参考にさせてもらうよ」
「せいぜいそうしてくれ」
「ライヤさん、お待たせしました!」
少し時間がかかっていた事務仕事を終えたヨルがととと、とライヤに駆け寄ってくる。
「じゃあ、俺たちは帰るから」
「あ、僕もお邪魔しようかな……」
ライヤはヨルをグッと引き寄せてマリオットを正面から見据える。
突然強引なライヤに目を白黒させながら赤くなるヨル。
「絶対に、来るな」
「ライヤ君から今までにない圧を感じたよ……」
「それだけ男女の絆というものは強いという話でしょう」
「……君には相手はいるのかい?」
「いると思いますか? あなたこそより取り見取りでしょう」
「あぁはなれない気がするね……」
後にはみじめな男2人が残された。
「とは言いますけど……」
ミクがチラリと後ろを向くが、笑顔で自分に手を振っているマリオットと目が合ってバッ! とこちらを向く。
そら怖いよな。
「そこの見学者。うちの生徒を怖がらせるようならつまみ出すぞ」
「そんなことしていいのかな?」
「もちろん。ここは俺が責任者だ。俺の生徒に危害を加えるやつは俺の権限でつまみ出す」
無駄に気迫のこもったライヤの言葉にマリオットは口をつぐむ。
それを見てライヤは視線を外す。
「さて、そろそろ校舎が出来るから来学期からは座学の授業も始まるだろう。つまり、テストが実技だけの最初で最後の機会ってことだな。準備は順調か?」
「でも、先生。準備って言っても何をすればいいか……」
紙で受けるテストとの最大の相違点は合格基準が明確でないことだろう。
特に今回は同じクラスに本来なら違う学年である生徒たちが所属しているため、目安でも合格点を設定することが難しい。
学年が違えば同じことを教えていても成長率が違うのは当たり前だろう。
前提として持っている知識であったり、体力であったリが違うのだから。
「まぁぶっちゃけた話、俺は今回そう簡単に落第を出すような気はない」
いつもないが。
「みんなの努力は授業でずっと見てきたし、ちゃんと成長しているのも確認している。ただそれを試験という形で確かめるというだけだ。手を抜くとか、ズルをするというような行為がない場合はちゃんと合格させる」
「いやー、本当に先生なんだねぇ……」
「まだ信じてなかったのか」
「その場限りの嘘で生徒たちに一日だけ先生と呼ばせている可能性だってあるよね」
「それで? 信じてもらえたか?」
「あんなに信頼されている様子ならまぁ間違いはないだろうねぇ」
そこまで疑われていたことが甚だ不本意だが。
「学校ねぇ……。ランボル、僕の印象にある学校とはかなり違ったイメージだったんだけど、僕が間違っているのかな?」
「いえ、帝国のものと比べれば違うのは当然でしょう。帝国における学校とはつまり軍人を養成する場です。対してこちらは民衆の平均値を高めようとしているように感じます。帝国ではその後軍に所属することを加味して厳しい指導を行うこともありますが、こちらではそんなことはないのでしょう」
丁寧な説明をどうも。
「でも、平民が余計な知識をつけたら治めるのが大変だったりしないのかい?」
「平民がもつ知識は元々余計なものなんかじゃないんだよ。前提として、王族貴族に都合の良い政治をし過ぎているだけで、政治は平民まで含めた国民のためにあるものだ。それが間違っていない限り、国民から牙をむかれることなどそうそうないし、あっても少数で鎮圧できる。俺は教育の価値は才能の発掘にあると思っている」
「と、言うと?」
「想像して欲しいんだが、ある辺境に知識を持てば時代を変えるレベルの発明を行える天才がいたとする。お前たちに分かりやすいように兵器でもいい」
「うん」
「だがその子供は農家の生まれで文字すら書けず、そのまま農家を継ぐことを当然だと思っているとしよう。本人が変わりたいと思っているならまだしも、そのままでいいと思っているような人材をどうやって国は発掘すればいい?」
答えは、出来ない、だ。
「そこで、学校だ。王国のように7年間と言わずとも、3年ほどでもいい。学問に触れる機会を作って自分に適性があるのかを俯瞰的に判断する機会を与える。国としても優秀な生徒というのは喉から手が出るほど欲しいもんだろ? 王国ですらいくら優秀でも平民だと苦労する傾向にあるから帝国だともっと難しいかもしれないけどな」
ライヤもアンと同じ学年じゃなかったら埋もれてしまっていただろう。
良くてイプシロンと同じ方向性だ。
ライヤの人生で最大の幸運はアンと出会ったことだろう。
それがなければすべての前提が崩れる。
「新しい国造りの参考にさせてもらうよ」
「せいぜいそうしてくれ」
「ライヤさん、お待たせしました!」
少し時間がかかっていた事務仕事を終えたヨルがととと、とライヤに駆け寄ってくる。
「じゃあ、俺たちは帰るから」
「あ、僕もお邪魔しようかな……」
ライヤはヨルをグッと引き寄せてマリオットを正面から見据える。
突然強引なライヤに目を白黒させながら赤くなるヨル。
「絶対に、来るな」
「ライヤ君から今までにない圧を感じたよ……」
「それだけ男女の絆というものは強いという話でしょう」
「……君には相手はいるのかい?」
「いると思いますか? あなたこそより取り見取りでしょう」
「あぁはなれない気がするね……」
後にはみじめな男2人が残された。
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