325 / 328
教師3年目
いつから味方だと錯覚していた……?
しおりを挟む
「じゃあ、気を取り直して……」
キリトが連れていかれたのはもはや避けようのない事態であった。
そう自分に言い聞かせて場を仕切りなおす。
「ここが七年生の棟だな。七年生ともなると学校で学ぶよりも実習などに出かけていることが多いのであまり活用はされていない。学年の生徒が揃うことなんてないんじゃないか?」
「卒業式の日でも?」
「そうだな。すでに何らかの現場で戦力として活躍している生徒も多いし、彼らの中にはどうにも都合がつかなくて卒業式に来られない者もいる」
特に珍しい話でもない。
「卒業式と聞くと、特別なものに感じる者が多いかもしれないし、その通りかもしれない。でも、人によっては現場での働きがそれよりも優先される場合もある。それだけのことだよ」
多くの場合、ここでいう「現場」とは軍であったり、警備隊である。
卒業式よりも現場での信頼が大事だというのも頷ける。
「他の棟よりは講演が多いのも多いのも特徴かな。各分野で活躍している人たちが来てくれるから、そのあとの道標になりやすい。コネクションもうまくいけば作れるかもな」
順に各棟を回っていく。
「もしかして、各学年に訓練場などがありますか?」
「その通り。学生の人数が多いから、数個じゃ賄えないんだ。F級とかだと生徒数が多すぎて一つあっても間に合っていないというのが問題だけど」
「いずれ分校もこのような形になるのですか?」
「いや、人数も違うからこうはならないだろうな……。みんなは一期生だから一気に教えてるけど、本来なら学年も違っただろうし、本腰を入れ始める来年からは教師の数も増えて学年ごとになるだろ? そこでの人数次第かな……」
とはいえ、ズンバ周辺の子供の人数は把握しているし、おおよそどのくらいが入学してくるかも試算してある。
ほぼほぼ予定通り進むだろう。
「先生!!」
三年生の棟に到着すると、待ってましたとばかりにウィルが飛びついてきた。
「……授業は?」
「中止にしてもらいました! こんな機会を逃すわけにはいきませんから! ね、リヒター先生?」
「あはは……」
わらわらと群がる生徒たちの向こうから出てきたのは幸薄そうな顔の白色ローブの男。
つまり彼が噂の俺の後任か。
「どうも、ライヤです」
「リヒターと申します。お噂はかねがね……」
「どうせろくな噂じゃないでしょうね」
「いえ、私はライヤ先生の二年後輩でして。学生時代から多くのうわさを聞いてますよ……。ドラゴン討伐の逸話なんて最早伝説ですから」
若気の至りだな。
「というより、リヒター先生は教師一年目でS級の担任ですか? かなり期待されているのですね」
「謙遜ではなく、それほどでもないです。どうやらこの人事もひと悶着あったようで……。何かと目立ったライヤ先生の後に就きたい人なんていなかったみたいで……」
「あー……」
数少ないライヤを認めていた人間はズンバに共についてきた。
つまり、本校にはライヤ肯定派は校長くらいとなったのだ。
「まあ、おかげさまで生徒が大変優秀で助かってはいますが……。私みたいなのでもなんとかやっていけている次第です」
「そんなことは良いのです! さ、修練場に行きましょう!」
ライヤ一行が向かうと、そこには見覚えのある生徒たちが。
というか、これ三年生のほとんどがいるんじゃないか?
「それでは! これよりライヤ先生とリヒター先生によるエキシビションマッチを行います!」
ワアアアアァァ……!
こりゃ見事な大観衆。
「どういうことだっ……!」
「リヒター先生がライヤ先生の実力を見てみたいとおっしゃっていたので特等席をご用意させていただきました!」
「学校でこんなことしていいのか!?」
「そこはライヤさん、あれをご覧ください」
ウィルがさす方向をライヤが向くと、特等席と思われる少し上等な席に座る校長とアンの姿。
しまった、校長も敵だったか……!
キリトが連れていかれたのはもはや避けようのない事態であった。
そう自分に言い聞かせて場を仕切りなおす。
「ここが七年生の棟だな。七年生ともなると学校で学ぶよりも実習などに出かけていることが多いのであまり活用はされていない。学年の生徒が揃うことなんてないんじゃないか?」
「卒業式の日でも?」
「そうだな。すでに何らかの現場で戦力として活躍している生徒も多いし、彼らの中にはどうにも都合がつかなくて卒業式に来られない者もいる」
特に珍しい話でもない。
「卒業式と聞くと、特別なものに感じる者が多いかもしれないし、その通りかもしれない。でも、人によっては現場での働きがそれよりも優先される場合もある。それだけのことだよ」
多くの場合、ここでいう「現場」とは軍であったり、警備隊である。
卒業式よりも現場での信頼が大事だというのも頷ける。
「他の棟よりは講演が多いのも多いのも特徴かな。各分野で活躍している人たちが来てくれるから、そのあとの道標になりやすい。コネクションもうまくいけば作れるかもな」
順に各棟を回っていく。
「もしかして、各学年に訓練場などがありますか?」
「その通り。学生の人数が多いから、数個じゃ賄えないんだ。F級とかだと生徒数が多すぎて一つあっても間に合っていないというのが問題だけど」
「いずれ分校もこのような形になるのですか?」
「いや、人数も違うからこうはならないだろうな……。みんなは一期生だから一気に教えてるけど、本来なら学年も違っただろうし、本腰を入れ始める来年からは教師の数も増えて学年ごとになるだろ? そこでの人数次第かな……」
とはいえ、ズンバ周辺の子供の人数は把握しているし、おおよそどのくらいが入学してくるかも試算してある。
ほぼほぼ予定通り進むだろう。
「先生!!」
三年生の棟に到着すると、待ってましたとばかりにウィルが飛びついてきた。
「……授業は?」
「中止にしてもらいました! こんな機会を逃すわけにはいきませんから! ね、リヒター先生?」
「あはは……」
わらわらと群がる生徒たちの向こうから出てきたのは幸薄そうな顔の白色ローブの男。
つまり彼が噂の俺の後任か。
「どうも、ライヤです」
「リヒターと申します。お噂はかねがね……」
「どうせろくな噂じゃないでしょうね」
「いえ、私はライヤ先生の二年後輩でして。学生時代から多くのうわさを聞いてますよ……。ドラゴン討伐の逸話なんて最早伝説ですから」
若気の至りだな。
「というより、リヒター先生は教師一年目でS級の担任ですか? かなり期待されているのですね」
「謙遜ではなく、それほどでもないです。どうやらこの人事もひと悶着あったようで……。何かと目立ったライヤ先生の後に就きたい人なんていなかったみたいで……」
「あー……」
数少ないライヤを認めていた人間はズンバに共についてきた。
つまり、本校にはライヤ肯定派は校長くらいとなったのだ。
「まあ、おかげさまで生徒が大変優秀で助かってはいますが……。私みたいなのでもなんとかやっていけている次第です」
「そんなことは良いのです! さ、修練場に行きましょう!」
ライヤ一行が向かうと、そこには見覚えのある生徒たちが。
というか、これ三年生のほとんどがいるんじゃないか?
「それでは! これよりライヤ先生とリヒター先生によるエキシビションマッチを行います!」
ワアアアアァァ……!
こりゃ見事な大観衆。
「どういうことだっ……!」
「リヒター先生がライヤ先生の実力を見てみたいとおっしゃっていたので特等席をご用意させていただきました!」
「学校でこんなことしていいのか!?」
「そこはライヤさん、あれをご覧ください」
ウィルがさす方向をライヤが向くと、特等席と思われる少し上等な席に座る校長とアンの姿。
しまった、校長も敵だったか……!
0
あなたにおすすめの小説
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる