女子だけが【異能力】を扱える世界で静岡県民である私は、オタク生活を楽しみながら悪い敵をやっつけます!!

秋葉缶

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S級アイドル

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「くっ…」

ひまりは雷果に立ち向かうために【ツヴァイハンダー】を顕現させた…が。


「「「待ちなッッ!!!!」」」


サイレンのような大声でそれを阻止するものがいた。それは先ほど対岸に殴り飛ばされた澪の声だった。
澪が突っ込んだビルの一階は運良く改装中で怪我人は居ないようだ。
澪は瓦礫の山からゆっくりと起き上がり首をポキポキと鳴らす。

「へぇ…」

感心したように雷果が薄く笑う。

「このレベルの一撃を喰らったのは久しぶりだね。等級は何?」

「S級。スキルは見ての通り【雷を起こす能力】」

バチバチ、と雷果の腕に電撃が纏われる。

「ホワッツ!?」

ひまりが驚きのあまり外国人化した。
日本でも10人程しか居ないとされるS級アイドル。昇格条件は圧倒的強さのみ。

実力は協会の「クラス持ち」アイドルに匹敵しうる実力を持つ。
つまり国家転覆を起こせるレベルのアイドルというわけだ。

「ははっこれがS級…」

「怖気付いた?」

「思ったほどじゃないかなぁ!!!」

ブゥン!!!と澪は地面に落ちていた大きなコンクリートを野球選手顔負けのスピードで投げつける。
時速数百メートル。しかし雷果はそれよりも速く、澪の懐に移動していた。

「遅いんだよ」

「っ!!」

雷果は澪の顎を蹴り上げる。
ガコッ!!と澪の顎にクリーンヒットし10mほど体が宙を舞う。
身動きのできない彼女に追撃を加えるべく自ら地面を蹴りジャンプする雷果。

脚力は凄まじく、ジャンプした反動で地面が割れ、コンクリートが粉砕されていた。
その脚力で澪の腹を回転しながら勢いを付け、蹴り飛ばした。

「ぐはっ!!」

胃液を吐きながら再びサッカーボールの様に吹っ飛ばされる澪。
追撃は終わらない。

ベキィッ!!ドゴォッ!!

目にも止まらぬ速さで、ビルからビルへ飛び移る雷果。
スピードは側からみても段違いに違う。

「オラァァ!!!!!」

バンッ!と澪は地面を踏み砕き、コンクリートを周りに弾き飛ばした。
あまりのスピードに目で追うのは不可能と感じ、目眩しを使った。

「効かないよそんなもの」

再び正拳突きが澪の腹に減り込む。
苦悶の表情を浮かべながら後方数十メートルの距離を殴る飛ばされた。


「み、澪ちゃん…」


親友の凄惨な姿を見せられて絶句するひまり。
そんなひまりを見て、先ほどまでダンマリだったサファイアが一歩足を踏み出した。

「サファイアちゃん?」

「今の私は何故か本来の力を出せない。けど戦力にはなるでしょう」

「もしかして戦う気!?」

「ひまりさんの友人は私の友人でもあります!」

「サファイアちゃん…」

「…燃えろ(Ardere)」

ゴォッッッ!!!!と、炎が燃える音と共に簡素な短剣がサファイアの手に握られる。
それと同時に駿河学園の制服から初めて出会った時の白いドレスにフォルムチェンジする。

「ぶわぁ!!」

あまりの風圧にひまりは吹き飛ばされない様にその場に踏みとどまる。


「っ!!」


サファイアから生じる莫大なエネルギーを感じ取り、雷果は戦闘中にも関わらず視線をそちらに移す。

「…あの子何者?」


「「「喝ッ!!!!!!!!」」」


澪が叫びあたりに突風が吹く。
戦闘に参加しようとしていたサファイアが思わず足を止めてしまう程の声量だった。


澪の体に赤い紋章が浮かび上がる。
彼女のスキル【肉体強化】が作動した。


「あんた達はそこで見てなッッッ!!!!!!」


「し、しかし…」


ボコボコにされている澪は周りの反応に反して高揚していた。


「(私をタコ殴りにできるアイドルに出会ったのは初めてかもね)」

「(私の肉体は普通の人よりも、普通のアイドルよりもはるかに強靭にできていた)」

「(結構色んな人に疎まれてきた…実の親にさえも。小さい頃力の加減が効かなくて色んな子を怪我させたっけ…)」

「(だからできるだけスキルを使わないように、力を振るわないように気を付けてきた。試験で手を抜いてたのもそのせい)」

「(……ひまりはそんな私にも普通に接してくれてたな)」


目の前に雷果。彼女の体がバチバチバチと雷に覆われている。
澪にトドメを指す気だ。


「(こんなに殴ってくれちゃって…もうコイツは本気で殴っていいんだよね?)」


澪はこの戦いで初めて拳を振り抜く。
型も何もない、素人の喧嘩で使うようなパンチ。だがそれをライオンが使ったらどうか、ヒグマが使ったらどうか、そして澪が使ったらどうなるか。


ガッ!!!!


「(あれ…?)」

雷果は一瞬気を失っていた。ほんの一瞬、1秒以下の時間。気がついたらビルの壁にめり込んでいた。

その後に腹部に激痛が走る。激痛と共に腹から喉にかけて熱いものが込み上げてくる。

「がはっ!!」

ビチャビチャ、と吐血する雷果。

「な、に…!?この私が…?」

雷果は想定外の一撃に狼狽する。
直後、目の前に上空から澪が降ってきた。


ドシン!と地面にヒビを入れながら着地する澪に雷果は睨みながら問う。


「あなた等級は?」

「ん?Bだよ」

「は?ありえないでしょう。Bに私を傷つけられるアイドルが居るわけない」

「言っちゃ悪いけど私等級なんて興味ないんだよね。試験とかめちゃ手抜いてるし。スキルとか殆ど使ったことないし」

「その赤いのがスキルか…力の増幅とかかな?何にせよ怪物だ」

「あはは、まぁ怪物なのは否定しないよ。てかあなたもスキルとは別に生身の肉体だけでも私をいたぶってくれたよね。アイドルは筋力も普通の人間より優れてる…といっても私たちはその範疇を遥かに超えている」

「私たち『ティアマト』のメンバーは皆神に近い肉体を得ている…」

「ティアマト?」

スッ…。
雷果の空気が変わる。

「これは選ばれしアイドルにしか使えない、スキルの先の領域…あなたに耐えられるかな」

雷果を中心に悍ましい程のエネルギーが集中しているのを感じる。
明らかに今までの比にならないレベルの何かを発動しようとしている。

「(これヤバいかもね…)」

頬に汗が流れる澪。

「(私のスキルは【肉体強化】。名前の通り筋力を上げて攻撃や防御力を向上させるものだけど…さて、このレベルの一撃に対抗できるかな?)」


「天衣…」


「そこまでっ!!!!」


雷果が何かを発動させようとした瞬間2人の戦闘を制止する声が響いた。
いつのまにか彼女らの周りには黒と赤の軍服のような制服を着た女性が10数人おり、今し方声を上げたのはその中の1人。

1人だけ白い軍服を着ており、腕章を捲った周りとは格の違うアイドル。
白い髪を短いツインテールで纏めた小柄な少女だ。
その腕章には「九」の文字が刻まれていた。
「クラス」持ちのアイドル、国家転覆すら単独で可能の化け物がもう1人現れた。

「私はアイドル協会所属の9(ナインス)アイドル水面白子みなもしらこです!!双方戦いを中止しなさい!」

「……うわまじか」

「……」

澪はげんなりしながら白子に視線を移す。
先ほどまで滞在していた協会に客人としてではなく、罪人として行かなければならないのかと憂鬱になる。
白子の後ろの制服を着たアイドルも一人一人がかなりの実力者と見てとれた。
澪は大人しく白子に従うことにした。

一方で雷果は何を考えているか分からない無表情で白子を見つめている。
そして一言

「相性が悪いな」

「ほう?私のスキルを知っているのですか?」

「東條学園の情報網を舐めないほうがいいよ。あなた達が知らないことも知ってるかも」

「それは興味深い、ぜひ協会で聞かせてください」

「はっ!【雷撃弓矢(サンダーアロー)】!!!!!」

白子の提案を鼻で笑いながら、手のひらで雷でできた弓矢をマッハを超えるスピードで射出する。
常人が当たれば原型すら残らない一撃、澪であっても直撃は避けたいだろう。
しかし白子は避けようとしない。避けれなかったわけではない。

スパァン!!と雷果の放った矢は白子に着弾すると真っ二つに分かれて四方に散らばっていった。

「おぉ…」

澪が感心した様に声を上げる。

「あなたでは私には勝てません。分かったら大人しく投降を…おや?」

白子が先ほどまで雷果のいたところに視線を移すともう彼女はその場にいなかった。
矢は目眩し変わりだった様だ。

「ま、逃げるでしょうね彼女は。さて澪さん、一緒に来てもらいましょうか。だいぶケガが酷いみたいだ」

「ちょいちょい。あの子を逃したままでいいのかい?喧嘩したのは事実だけどあの子が一般人を半殺しにしてたところを私が止めたんだよ?」

「我々にも色々あるのですよ…事情はひまりさんから大体は聞いています。あなたの処遇はそれほど酷いことにはならないでしょう、分かったら同行願います」

「へ~い」

心底うんざりした様子で返事する澪。

「(今日は厄日だ…)」
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