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1話 恋のペントグラム
その1 恋のペントグラム
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9月に入っても相も変わらずうだるような暑さは続き、昼食後の5時間目の教室、廊下側の一番前の席で睡魔と戦う私、佐藤由佳里、高3女子。
「この漢詩は、九月四日のまだ鶏も鳴かない早朝に作られ―」定年間近の男性教師の声は、眠りを誘う呪文のよう。
(ああ、もうだめ。眠い。何か、何か目が覚める刺激が欲しい……誰か。そして、それがBL的な何かなら尚のこと良し。)
刺激を求めるべく窓側に目をやると、腐女子仲間の田中が窓の外を見ていた。クールビューティーで知られる田中が珍しく目を見開いている。
田中よ、中庭に何があるというのか?いや、中庭……では、無いな!田中のあごは少し上を向いている。中庭を挟んだ向かいの3階の教室では、何かが時々キラッと反射していた。
(あのクラスは、確か「2年の女クラ」。)
前身が女子高という我が校は、伝統的に女子生徒の方が多い。その為どの学年にも2、3クラスは女子だけのクラス、通称「女クラ」ができるのであった。因みに男女一緒のクラスは「混|《こん》クラ」という。
(なるほど。これが件の校内伝説……。)
「9月になると、女クラの生徒がオペラグラスで向かいの混クラ男子を物色する」という校内伝説がわが校には存在する。毎年8月31日の体育祭で応援団員をやった男子には、空前のモテ期が訪れる。そしてその男子を物色する女子が9月に発生するというわけだ。女クラの女子には男子が物珍しい。
ましてや、今年うちのクラスには、応援団長であり元サッカー部主将の山田がいる。さぞ、物色し甲斐があるであろう。
その山田といえば、窓側の後ろの席なのだが、山田は教室の真ん中辺りを見ている。山田の視線の先には……。
(あれはワンコ系男子、坂下!)
自分の中のBLセンサーがキュピーンと音を立てた気がした。
(ほう。山田君、そういう事かね、君。いいね、いいねえ。青春だねえ。)
腐女子のBL脳は何でもBLに変換できる便利な代物である。
山田が坂下を見ている確証もないが、「坂下に思いを寄せる山田」という構図を脳が勝手に生み出した。
(刺激いただきましたー、あざーす。二人には悪いけど、想像するのは自由なんで。すいませーん。)心の中で二人に軽く手を合わせる。
さて坂下はどうかと視線を動かすと、何でかこちらを見ていて、坂下とバッチリと目が合ってしまった。
(あれ?坂下こっちを見てた?)
坂下はただでさえ大きな目をさらに大きく見開き、みるみる赤くなっていく。
(えっ、かわっ。「可愛い」かよ、坂下。)
つられて、こっちも顔が熱くなる気がするよ?
坂下の態度に動揺してしまった私は、顔を前に戻す途中、こちらを見ていた田中と目が合った。その瞬間、田中が小さく親指を立ててきた。
(何のつもりだ、田中。)
もう一度坂下を見たい衝動に駆られ、後ろを振り返ってみると、俯いたままの坂下の後ろで、何でかこちらも親指を立ててくる山田。
(だから、山田もなんなんだよ。)
次の教師の声が決定的な覚醒の呪文となる。
「この詩から、晴れ渡った空に突然雷が鳴るように、思いがけない突然の衝撃を受ける事-これを『青天の霹靂』といいます。」
えっ、これって……。まさか、坂下が私を……?私は坂下を……?んんっ?
いやいや、誰もそんな刺激は求めてないですから!
「この漢詩は、九月四日のまだ鶏も鳴かない早朝に作られ―」定年間近の男性教師の声は、眠りを誘う呪文のよう。
(ああ、もうだめ。眠い。何か、何か目が覚める刺激が欲しい……誰か。そして、それがBL的な何かなら尚のこと良し。)
刺激を求めるべく窓側に目をやると、腐女子仲間の田中が窓の外を見ていた。クールビューティーで知られる田中が珍しく目を見開いている。
田中よ、中庭に何があるというのか?いや、中庭……では、無いな!田中のあごは少し上を向いている。中庭を挟んだ向かいの3階の教室では、何かが時々キラッと反射していた。
(あのクラスは、確か「2年の女クラ」。)
前身が女子高という我が校は、伝統的に女子生徒の方が多い。その為どの学年にも2、3クラスは女子だけのクラス、通称「女クラ」ができるのであった。因みに男女一緒のクラスは「混|《こん》クラ」という。
(なるほど。これが件の校内伝説……。)
「9月になると、女クラの生徒がオペラグラスで向かいの混クラ男子を物色する」という校内伝説がわが校には存在する。毎年8月31日の体育祭で応援団員をやった男子には、空前のモテ期が訪れる。そしてその男子を物色する女子が9月に発生するというわけだ。女クラの女子には男子が物珍しい。
ましてや、今年うちのクラスには、応援団長であり元サッカー部主将の山田がいる。さぞ、物色し甲斐があるであろう。
その山田といえば、窓側の後ろの席なのだが、山田は教室の真ん中辺りを見ている。山田の視線の先には……。
(あれはワンコ系男子、坂下!)
自分の中のBLセンサーがキュピーンと音を立てた気がした。
(ほう。山田君、そういう事かね、君。いいね、いいねえ。青春だねえ。)
腐女子のBL脳は何でもBLに変換できる便利な代物である。
山田が坂下を見ている確証もないが、「坂下に思いを寄せる山田」という構図を脳が勝手に生み出した。
(刺激いただきましたー、あざーす。二人には悪いけど、想像するのは自由なんで。すいませーん。)心の中で二人に軽く手を合わせる。
さて坂下はどうかと視線を動かすと、何でかこちらを見ていて、坂下とバッチリと目が合ってしまった。
(あれ?坂下こっちを見てた?)
坂下はただでさえ大きな目をさらに大きく見開き、みるみる赤くなっていく。
(えっ、かわっ。「可愛い」かよ、坂下。)
つられて、こっちも顔が熱くなる気がするよ?
坂下の態度に動揺してしまった私は、顔を前に戻す途中、こちらを見ていた田中と目が合った。その瞬間、田中が小さく親指を立ててきた。
(何のつもりだ、田中。)
もう一度坂下を見たい衝動に駆られ、後ろを振り返ってみると、俯いたままの坂下の後ろで、何でかこちらも親指を立ててくる山田。
(だから、山田もなんなんだよ。)
次の教師の声が決定的な覚醒の呪文となる。
「この詩から、晴れ渡った空に突然雷が鳴るように、思いがけない突然の衝撃を受ける事-これを『青天の霹靂』といいます。」
えっ、これって……。まさか、坂下が私を……?私は坂下を……?んんっ?
いやいや、誰もそんな刺激は求めてないですから!
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