国の命運を握る星読みの魔女やってます

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妹の薬

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キッチンにはいろんな薬草が干してあり、棚には沢山の瓶が並んでいる。
雑貨屋の方で度々注文が入る珍しい薬草などが置いてあるのだ。
この森は素材の宝庫だ。
先代魔女ローラが元気な時から、こうして森で素材を取っては加工したり保存したりしている。
「ええと、スピリナ草の花を単体で煎じたらいいのよね」
リリアナは薬研という原料をすりつぶす道具でスピリナ草をペースト状にすりつぶすと、小さな瓶に入れた。
「しっかし、偶然もここまで来ると怖いな。たまたまスピリナ草の依頼があって森に行ったら、それを必要とする奴が行き倒れているなんて事あるか? でも悪意があるわけでもないし……。わけわからん」
レオンがキッチンカウンターに飛び乗って、前足を顎に添えると首を傾げた。
「ほんとよね。なんか都合良すぎてびっくりしたわ。とにかく早く薬を渡して帰ってもらおう」
ジェイドのところに戻ると、彼は居ても立っても居られないというふうに、部屋をウロウロと歩き回っていた。
「できたわ。これがスピリナ草の薬よ。早く帰って妹さんに飲ませてやりなさい」
ジェイドは大切そうに小瓶を手に取り、懐にしまった。
「ありがとうございます。さっそく妹に飲ませます。これ足りないかとは思いますが、今用意できるお金です」
ジェイドは小さな皮袋を出すと丸テーブルの上に金貨を置いた。
「これで金貨十枚になります。あと、どのくらい必要ですか?」
金貨十枚といえば騎士の一年分の給料くらいだ。
「……貴方は貴族ですか?」
リリアナがジェイドに向かって聞いた。
「はい、リルグランド伯爵家嫡男です。
決して怪しいものではございません」
貴族だったとは……。
厄介な相手に占いを見せてしまったかもしれない。
しかしやってしまったものはしょうがない。
「料金は占いと薬代込みで金貨五枚で結構です」
こうなったら早く帰ってもらおう。
王であるマーカスおじさまにも気軽に貴族を占わないようにと言われていたのだった。
なんせ貴族のパワーバランスが崩れると厄介なことになるとか何とか。
「そんな! 助けてもらったうえに、占いと薬までいただいて、金貨五枚は安過ぎます。聞いた話では金貨十枚でも足らないと……」
どんだけ強欲だと噂されてるんだ。
「薬代と助けたポーションは妹さんを思う貴方の心に免じて無料です。その代わりくれぐれもここのことは他言無用ですよ。わかりましたね」
しっかり念をおしておかなければ。
「はい、それはもちろんです。ありがとうございます」
「ならさっさとお帰りなさい。ほら、魔獣よけの香を持っておいきなさい」
「ありがとうございます。ご恩は決して忘れません」
ジェイドは涙を浮かべ頭を下げ星読みの魔女の館を後にした。
「なんか疲れた。調子が狂う人だったね」
私はジェイドが結界の外に出るのを確認するとヨロヨロとソファに行き、座り込んだ。
猫姿のレオンがソファに座り込んだ私の膝に飛び乗る。
「そうか? 俺は別に何とも思わなかってけどな」
「まあ、二度と会うことはないと思うけど。それより今日はもう街の家に帰ろう」
「そうだな。腹も減ったし」
星読みの魔女の館に紹介もなしに辿り着くものは滅多にいない。
彼と会ったことも星の巡り合わせなんだろうか。
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