国の命運を握る星読みの魔女やってます

iru

文字の大きさ
17 / 21

大賢者の弟子④

しおりを挟む
後日……。
「イエローサーペントの巣に火魔法を放ったんですって!?」
私の店にいたウノを見つけてマチルダがドアを開けるなり叫んだ。
「やあ、マチルダ。なんだい慌てて」
びっくりしている私とレオンを気にもせず、ウノはゆっくりとマチルダに向かって言った。
「慌てるに決まってるでしょ。イエローサーペントの素材を取らずに全て灰にするなんて頭がおかしいわ。全部売ったらいくらになると思ってるの」
それには私にも責任がある。
「あの……マチルダ。ウノは私のために……」
事情を説明しようとすると、ウノに止められた。
「マチルダ。俺を誰だと思ってるの? 金なら使いきれないほどあるんだよ」
これ絶対マチルダをからかって楽しんでるな。
魅惑的に微笑むウノにマチルダの頬が少し赤くなる……が、さすがマチルダ。頭を二、三回振ると正気に戻ったようだ。
「なんなの! 人がせっかく言ってあげてるのに。はあ、もういいわ、なんか疲れちゃった」
マチルダは店のカウンターに置いてある椅子にため息をついて座った。ウノの隣だ。
「マチルダ。せっかく来たんだからお茶でも飲んで行って。今入れてくるね」
わたしがそう言うと、マチルダは力無く答えた。
「リリィ、ありがとう。いただくわ」
レオンを連れてキッチンに向かい、お茶を入れる。
「ねえ、マチルダってひょっとして……」
レオンに話しかけるもレオンはさして興味なさそうだ。
「どうだろうな。ウノは完全に面白がってるみたいだな」
「そうかな。ウノも結構気に入ってると思うけど」
ウノは関心のない人達には当たり障りのない態度しか取らない。煽るようなあんな態度を取るのは気に入ってるんじゃないか。
「人の恋愛に首を突っ込むと碌なことにならないからやめとけ」
レオンは過去に一体何があったんだ。しかし言うことも一理ある。
「そうだね。見守るしかないよね」

マチルダに入れるついでに私とウノにも新しいお茶を入れ、店のカウンターまで持って行くと、何やら微妙な空気が流れている。
「どうしたの? 何かあった?」
お茶を二人の前におきながらわたしが聞くと、マチルダが怪訝な顔をして言った。
「リリィ。あなた彼に何かしたの?」
「彼?」
マチルダがこっそり指差す方を見ると、窓の外に人の顔の目から上だけ出ている。
ジェイドだ。
あれで本人は気づかれていないつもりなのか。
「はあぁ~~」
まだ勘違いをしているんだろうな。
思わずレオンと顔を見合わせる。
「何あいつ? 知ってるやつ?」
ウノがムッとした顔を隠そうともせず私に聞いた。
「まぁ、知ってると言えば知ってるんだけど……」
私がそこまで言うとウノが突然立ち上がってドアを開けて外へ出た。
「あっ、ウノ!」
しまった。事情を話してない。
ウノは素早くジェイドの前に立つとジェイドを見下ろして言った。
「なんなのお前? 俺のリリィになんか用でもあるわけ?」
ジェイドはしゃがんでいた状態からウノを見上げ、慌てて立ち上がった。
「お前こそなんだよ。あいつとどんな関係なんだ」
ウノはこれ以上ないくらい冷たい目でジェイドを見ると言った。
「お前……おれを知らないのか。リリィとどんな関係かだって? どうしてお前にそんなこと教えなきゃいけないんだよ」
そう言うとジェイドに向かって人差し指を伸ばす。
「お、お前! 何をした!」
ジェイドが動きを封じられたようだ。
やばい。ウノがキレる。
慌てて私とマチルダは店から飛び出した。
「ウノ! 落ち着いて」
「そうよ。その子は伯爵家の嫡子なのよ。色々まずいって」
マチルダも慌てて言った。
「そうだ! ウノ! 今からウノの大好きな紅茶のパウンドケーキ焼きたいから手伝って」
なんとか必死で気を逸らそうとウノの大好物の提案をしてみると、ウノが一瞬止まった。
「紅茶のパウンドケーキ?」
チャンスとばかりにマチルダも援護する。
「あれ美味しいのよね。私も食べたいな」
「そうそう。早く作ろう」
私はウノの背を押して店に入ることに成功した。
マチルダ。後は頼んだ。
「今よ! 酷い目に遭わされたくなかったら、早く来なさい」
マチルダがジェイドの手を引いて大通りに走った。
「いい? あの男が王都にいるうちは二度とリリィに近寄らないように。これは脅しじゃなくてあなたのために言ってるんだからね」
呆然とするジェイドに念を押してマチルダは店へと戻った。
「なんなんだ……一体」
ジェイドの呟きは大通りの雑踏に消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。

皇帝とおばちゃん姫の恋物語

ひとみん
恋愛
二階堂有里は52歳の主婦。ある日事故に巻き込まれ死んじゃったけど、女神様に拾われある人のお世話係を頼まれ第二の人生を送る事に。 そこは異世界で、年若いアルフォンス皇帝陛下が治めるユリアナ帝国へと降り立つ。 てっきり子供のお世話だと思っていたら、なんとその皇帝陛下のお世話をすることに。 まぁ、異世界での息子と思えば・・・と生活し始めるけれど、周りはただのお世話係とは見てくれない。 女神様に若返らせてもらったけれど、これといって何の能力もない中身はただのおばちゃんの、ほんわか恋愛物語です。

剣士に扮した男爵令嬢は、幽居の公子の自由を願う

石月 和花
恋愛
 両親が亡くなって男爵家を叔父に乗っ取られた令嬢のアンナは、騎士だった父から受けた手解きのお陰で、剣を手に取り冒険者として日銭を稼ぎながら弟を育てていた。  そんなある日、ひょんな事から訳ありそうな冒険者ルーフェスと知り合ったのだった。  アンナは、いつも自分の事を助けてくれるルーフェスに、段々と心が惹かれていったが、彼女にはその想いを素直に認められなかった。  何故ならアンナの目標は、叔父に乗っ取られた男爵位を取り返して身分を回復し、弟に爵位を継がせる事だったから。この願いが叶うと、冒険者のルーフェスとは会えなくなるのだ。  貴族の身分を取り戻したい気持ちと、冒険者としてルーフェスの隣に居たい気持ちの間で悩み葛藤するそんな中で、アンナはルーフェスの重大な秘密を知ってしまうのであった…… ## ファンタジー小説大賞にエントリーしています。気に入って頂けましたら、応援よろしくお願いします! ## この話は、別タイトルで小説家になろうでも掲載しています。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています

鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」 そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。 お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。 「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」 あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。 「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。   戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」 ――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。 彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。 「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」 「……本当に、離婚したいのか?」 最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。 やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。

聖女じゃなかったので、カフェで働きます

風音悠鈴
恋愛
光魔法が使えず「聖女失格」と追放された大学生・藍里。 聖女じゃないと城を追い出されたけど、実は闇属性+女神の加護持ちのチートだった⁉︎ 望みはカフェでのスローライフだけ。 乙女ゲーム世界の歪みから大切な日常を守ります! 全30話予定

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

処理中です...