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しおりを挟む翌日、小説に目を落としながら俺は昨日の事について少し考えてみた。まず、学園に行かないという事は主人公に出会わないので処刑される事はなくなったはず。
次にガイについて…。学園で繰り広げるイベント等で好感度が上がる仕様だから、俺が城に居てガイの好感度を上げるのは難しいか…下がるのは簡単そうだけどね!!いや、もしかしたら主人公がガイを選ばなければワンチャンあるのでは?どうか違うキャラを選んでくれー!!そうなれば…あの逞しいもふもふの体に抱かれる可能性も…うぉおおお!!興奮の余り小説を持つ手がプルプル震え出す。
「シオン様…大丈夫ですか…?」
何故かジト目のヘラが心配してくれた。なんだその目は?俺腐っても第二王子なんですけどー!!しかし何時もより距離が近いので許す!!手が届きそうな距離にもふもふの太いしっぽが…。手を伸ばしかけたが、何かを感じ取ったヘラはクルリと背を向け離れてしまった。待っておくれしっぽちゃん…。チックショー!!
「今日は逃げないで下さいよ」
ちゃんと釘を刺してから部屋を出て行くあたり素晴らしいです。優秀で可愛い従者を持って俺は幸せです。が、俺が言う事を聞くかどうかは別物です!
シーツを剥がし、括り合わせ片方を窓の外に垂らす。もう片方の端はベットの支柱に括り付け強度を確認。よしッ!!慣れたものでシーツに捕まりスルスルと滑り降り無事に地面にご到着っと。
この時間は騎士団が外で訓練をしているはず…。逞しい体を拝みに行きますか。遠くからこっそり覗くのでは無く、遠くから堂々としっかり視姦…じゃなくて覗き見する。そして目に焼き付け夜のオカズに…。ではなくカッコイイと憧れ夢見るのだ。
いつもの覗き見スポットに到着すると既に訓練は始まっていた。騎士団の中には完全獣人が混じっているが、甲冑が嫌いなのか惜しげも無くもふもふを晒している。俺の目的はまさにそれ。
普通の獣人の中にも雄っぱいを見せている奴がいるが、あんまりときめかないなー。ってかどうせなら本物のおっぱい拝みたいよねー。あのたわわ…ぐへへ。まぁ、この世界には男しか居ないから無理なんだけどさ。ほんと男しか居ない世界とか…ゲームに関係ない箇所は普通の設定にしとけよ!
脳内ツッコミを入れていると、おい、と背後から声を掛けられた。振り向くとそこには何とアレンが立っていた。嗚呼、今日はなんてついてない日なんだ。
スンッと顔の表情がなくなる俺。何故ここに?お前学園行ってるはずだろう?サボりなのか?筋肉バカなのか?疑問は尽きないが、絶対に俺から話し掛けはしない。
「最近ここで何をしている?」
鋭い目つきに強い物言い。強面イケメンなだけに余計に怖い。最近…?コイツ俺が覗き見に来る度に監視してやがったのか…。普通に学校行けよ。勉強しろよ。俺が言えたことじゃないけど。
「いいなって見てました」
表情をキープして正直に言う。だってもふもふ堪能したいし、ここならタダで見放題だし。誰も怒らないし。俺嫌われてるから皆注意もしてこないですしー。怒ってくれるのはヘラだけだもーん。
「フンっ。人間とはなんと脆弱性な生き物か」
急な人間ディスりに驚く。えっ、俺のせいで人間嫌いになったりしてないよね?!それじゃぁ主人公とイチャラブ出来ないよ!ピクリと片眉だけを動かしてしまった。
「まぁ、俺が弱いのは認めますが…人間でも強い人は居るんじゃないですかー」
「ほう!自分が軟弱で貧相な体の人間と認めると」
嫌味な笑い方で俺を見下すアレン。馬鹿にしているのが丸わかりで気に入らない。こんなキャラだっけか?確かに獣人に比べれば弱っちいだろう。しかし!!このシオン様はなんと腹筋がシックスパッドに割れているのだ。まさにゲームクオリティ!!身体能力も中々高い。でも最近、体型維持出来るんか?と気になりだしたので密かに腹筋と背筋を始めた。
「確かに貧相ですけど、俺、筋トレ始めたんですよ。ほら」
服を胸まで捲りあげ見事な腹筋をアレンに見せ付けてやった。勿論、筋トレのお陰では無いが…。そして、ちょっと乳首まで見えちゃったところはご愛嬌だ!!褒め言葉を待っていたが、返ってきた返事はブホォ!!と噎せながら吹き出す声だった。
「しっ、失礼するッ!!」
何やらソワソワと落ち着きが無くなり、アレンは言葉短く去って行った。何なのあれ?俺の体が吹き出すほどお粗末だってか?つーか、アイツ一体何しに来たんだよ。
再び訓練に目を向けると、なんとそこにはガイが混ざっていた。おぉぉぉー!!なんてこったい。あの白くてキラキラと輝く毛並みはまさにガイ。惜しげも無く見せて…。しかし、光りすぎて良く見えない。逆光が俺の邪魔をする。太陽めふざけんなよ!!出る場所考えろや!!良く見えそうな位置に移動しようとした時、両肩を強い力で抑え込まれた。おう…。バレたか。せっかくいい所だったのにー!!くっそ。推理ドラマの犯人が分かる前にCMを挟んだもどかしい気持ちが込み上げる。
ヘラは無言で肩にヒョイと俺を担ぎ、勉強部屋へと歩き出す。俺は最後の最後まで、姿が見えなくなるまでキラキラと眩しく光る白い物体を目に焼き付け続けた。次こそ必ず神々しいまでのもふもふを拝んでみせる!!もふもふの名にかけて!!
その後の勉強時間は拷問だった。ヘラは怒らせると怖い!!怒った表情も可愛い!!真面目に勉強して早く終われば外に出ても良いと言われたが、そもそも前提が間違ってんだよ。俺は勉強したくない。だから、早く終わるも何も無い!!これからも逃げ続けるぜ!!
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