嫌われ悪役王子は死にたくない!!《本編完結済》

えの

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お散歩日和な今日この頃、俺は今、猛烈に悩んでおります。それは先日と同じ光景を目撃したからだ。そう、主人公とキースの密会場面。非常に追跡したい…でもガイとヘラに怒られるのも嫌…でも何してるか気になるし…頭を悩ませ2人を見つめているとキースがこちらを振り向いた気がした。焦って壁際に背中を張り付けるが、ブライアンは突っ立ったまんまだったからバレたかもしれん。

キース達が居た方を見つめたまま動こうとしないブライアン。既に2人は居ない。ブライアンどうしちゃったの?ぴょんぴょん飛び跳ねて顔の前で手を振り大丈夫ですか~?!とアピールすると、ようやく我に返った様だ。ゆっくりと俺を見下ろすブライアンは相変わらず無表情だ。

「ヘラがお披露目会のお召し物を決めたいとお呼びでしたよ。ご案内致します」

何時もより早足で歩くブライアンに俺は少し小走りでついて行く。ちょっ、マジで歩くの早ッッ!!少し息を切らしながらも置いていかれずに目的地であろう場所に到着した。ここ?ブライアンを覗くように目で質問すると、ゆっくりと目を逸らし頷いた。何今の可愛い動作…。

コンコン

「はぁーしんど。ヘラー、来たよー」

早く座りたくて、返事も待たずに扉を開けると部屋の中はガランとしていた。どこに居るんだよ。

「ヘラー、ヘラーッ?!居ないのー?!」

部屋の中を探すが誰かがいる気配は無い。ブライアンが早すぎたのだろうか…確かに俺もまだ心臓バクバクしてるぐらい息が上がっている。

パタン

扉が閉まる音に振り向くと、俺は驚きに目を大きく見張った。えっ、ちょっ、なんで主人公とキースが居んのさ…。えっ?どーゆーこと?驚き過ぎて声が出ない。ニヤつく2人の横には先程まで俺の隣に居たブライアンが立っていた。

「えっ…ブライアン…?」

「…」

キースは1歩踏み出すと如何にも悪役が似合いそうな笑みを携え話し出した。聞いてもないのに教えてくれるとかマジでドラマみたい。自分の置かれた危うい状況にも関わらずどーでもいい事を考えてしまう。

「シオン様、相変わらずお美しい…。この様な獣をおそばに置くとは…やはり噂は本当だった様ですね…なんと嘆かわしい…」

コイツ前よりもちょっと演技上手くなってるんじゃねぇ?わざとらしい声を出しやがって、俺が信じるとでも思っているのかよ。きな臭い目を向けるがキースは全く気付いて居ないようで、尚も大袈裟な身振り手振りで俺を労る言葉を並べる。

「お可哀想なシオン様…貴方がどの様な素晴らしいお方だったのか思い出させて差し上げますよ…ねぇ、ロゼ?」

「はい、キース様。シオン様?ショック療法ってご存知ですかぁ~?きっと大嫌いだった完全獣人に酷く犯されたら、ショックを受けて以前の様なシオン様に戻ると思うんですよぉ」

猫なで声を出しながら俺のすぐ側まで来たロゼは、俺にだけ聞こえるように話を続けた。

「お前が不幸にならないと僕が幸せになれないの。ハーレム目指してるのに…シオンが学園に居ないせいで皆が僕に惹かれないんだよね~。ガイみたいな獣は真っ平御免だけど…ってゆーかあんな奴とヤるとか無理」

スキップするような足取りでキースの元に戻るロゼから目が離せない。えっ?ハーレム?このゲームにハーレムエンドなんて無かったはずだけど…顔に出さないように考えを巡らせた。
つまりですよ…ゲームであって現実…ロゼはハーレムエンドを目指している。それは出来るかもしれんが…何故、俺を巻き込むんだよ!!お前が頑張ればいい話であって、俺を踏み台にして恋を実らせるな!!そもそも先程のガイに対する発言。こいつ完全獣人差別主義者じゃねぇか…。とりあえずハーレム完成させる為にガイも攻略しとくか的な?ぶさんけんなよ!!お前にガイの素晴らしが分かってたまるかッ!!完全獣人の可愛さが分かってたまるかッ!!

「怯えているのですか?可愛いですね…獣に犯された後は私が可愛がって差し上げましょう」

「キース様ッ!!僕が居るのに酷いですぅ~」

泣き真似をするロゼにキースは慌てたように、冗談だよと取り繕った。本当ですか?と涙をためて頬を赤く染めるロゼはキースなんかよりも立派な役者だった。すげー。俺はロゼがニヤリと悪どい笑みを浮かべていたから、演技だって丸分かりだったけど…キースは完全に騙されてやがるな。

「ブライアンッ!!何をしている?!さっさと服を脱げ!!」

キースはバツが悪そうな表情でブライアンに強く命令した。何時もと同じ表情で俺を見つめ動こうとしないブライアンにロゼが痺れを切らしたように告げる。

「ブライアン?命令を聞かないと、どうなるか分かってるよねぇ~?」

脅しとも取れる言葉。大方その通りなんじゃなかろうか。なんか弱みでも握られてるんかね…。ブライアンは手を握り締めた後、自分の着衣を脱ぎ出した。

おぉぉぉー!!あの寡黙なブライアンが…俺の目の前で…突然のストリップショー開催を…少しずつ露になるもふもふを食い入るように見つめる。何処まで?!ズボンまでいっちゃう?!パンツは流石に…俺の方が照れちゃうよ!!見たい俺と、見せたくないブライアンのせめぎあい。しかし、上半身を脱ぎ終わった所で、キース達から野次が飛ぶ。

「そんな醜い姿を見せるな!!」

「獣くさーい、キース様…僕、獣のセックスなんて見たくないですぅ…」

ふっざけんなよ!!ぶっ飛ばすぞ!!後ちょっとでズボンに手を掛けたものを!!恨みの籠った目で2人を睨みつけた。それに2人が気付くことはなく、ブライアンに蔑むような視線を送り部屋の外に出て行く。残されたのは俺とブライアン2人。
素晴らしいもふもふを見せつけるように、ブライアンはゆっくりと俺に近づくと俺を床に押し倒し上に跨った。

「ぐはっ…!!」

防ぎきれない重さと衝撃を一度に腹にくらい、殴られたように体が跳ねた。くまさん重すぎでしょ…。圧迫感が半端ないっす…。

「シオン様…申し訳ありません」

前もって謝罪したからって何をしても言い訳じゃないからな。いくらもふもふが可愛いからと言っても、飴と鞭の使い分けは大事だ。

「謝るぐらいなら退いて欲しいんだけど」

精一杯の冷たい声を出して言う。1ミリたりとも笑ってやるもんか。ブライアンは奥歯を噛み締め顔を歪めた。

「申し訳ありません…」

「それはさっきも聞いた。で?どうすんの?俺の事犯すの?そんな事されたら…ブライアンの事嫌いになるよ」

「ぐっ…」

感情の無い目で見つめ口元だけ笑ってみせた。ブライアンは目をギュッと瞑ると、肩を揺らし小さく震え出す。上体を少し起こして見れば、なんとポロポロと大粒の涙を流し、声を押し殺して泣き始めているではないか!!

「ふぁッ?!」

なんてこった!!この世界に来て初めて誰かを泣かせてしまった…しかも大きなくまさんを…体は大きいけどピュアハートの持ち主だったのね…。ごめんよブライアン…。モフモフの涙に俺は罪悪感に駆られた。これって立場逆転してるんじゃ…。傍から見て俺がイジメてるように見えないよね?!

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