好きだと伝えたい!!

えの

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任務は順調に進んだ。狸獣人の老夫婦協力の元、まずは一緒に食堂で働き、周囲に俺の存在を知ってもらう。次に食堂を譲ってもらう振りをする。その間、老夫婦は遠くの街で身を潜める。そして食堂を譲り受け、しばらくした頃に、金貸しの二人組がやって来た。概ね聞いていた話通りの内容を言われ、例の貴族の名前もチラッと口にしていた。だが、これだけでは到底お貴族様を捕らえる事は出来ない。借金の返済期間は一年だ。






俺が騎士団長のオーランド様と出会ったのはその頃。俺は店の仕入れの為に市場に買い出しに来ていた。その時、馬車を牽いていた馬が何かに驚き、突然暴れだした。それをいとも簡単にいなしたのがオーランド様だ。手綱を取り、端によせ馬の興奮を冷ます。その姿は堂々としていて、純粋に格好良いと思った。一目見て心を奪われた。


それからは朝の巡回から帰ってくるオーランド様を待ち伏せて毎日告白し続けた。最初は何だお前?みたいに全く相手にされなかったが、一ヶ月も続ければ嫌でも記憶に残る。もっと良い方面で印象に残るように、毎日お弁当を差し入れた。


俺には一年しか猶予がない…一年後には娼館に行く予定となっている。でもこの恋は実らない…だってオーランド様は全然俺を相手してくれない…きっと恋愛対象として見てくれていないのだろう…。でもいいんだ!!だって毎日告白してたら、突然いなくなっても、そんなやつ居たなーって思い出して貰えるだろ?忘れられない存在になれたら…オーランド様の記憶に残り続けられたら…それだけでいい。


俺、この任務が終わったらしばらく休暇を取ろう…。傷心の旅にでも出ようかなー。そんな事を考えて居たある日。ついにその時はやって来た。







蜜月の館。例の貴族とここの楼主が繋がっているのは調査済だ。もちろん雇い人の中にも諜報部員は放ってある。俺の客は全部偽客。一日分の料金を払い朝までコースを頼んでもらう。知らない奴が予約してくる事はない。


つまり、俺が本当の意味で客を取ることはないのだ。だか…客を用意してくれた事は感謝するが、如何せん皆揃いも揃って話が長い…。仕事の愚痴から始まり、恋人、家族…まぁ誰かに話を聞いてもらったらスッキリするしね…。でも朝までお酒飲みながらってどうなんですかね?!惚気とか殺気湧くわ!!おまけに、毎日毎日違う相手に朝まで愚痴に付き合わせられてみろ!!俺は全く疲労が取れない!!おまけにメンル様が相手の時は仕事の話とお説教が混じる…。


特に俺が任務中なのにオーランド様にうつつを抜かしてた事とか…。もし恋人になってたらどうするのかと。作戦が失敗するだろと。いやー悲しい事に全然その心配は要らなかったんですけどね!!






しかし予想外の事が起きた。オーランド様の登場だ…。例の貴族は猫の獣人を探していたらしい。理由は想像がつく。愛玩として手元に置きたいんだろう。だから俺が囮役に適任だった。娼館での従順な働きぶりをみて、そのうち身請けするだろう。欲しい者が手に入った時は興奮して口も緩くなるもんだ。上手いことベッドに誘い、決定的な言質をとる。現段階で捕らえる事も出来るが、どうせならば他の貴族も関係しているか色々と聞きたい。



しかし、しかしだ!まさかのオーランド様の登場。おかげで、楼主達は一層用心深くなってしまった…。あの日、オーランド様が去った後…メンル様からの説教は怖かった…。超がつくほどに…。ほら見ろと。何が大丈夫だ、面倒事になるぞと。でも俺は嬉しさの方が勝って、説教受ける所では無い!!だって…だってオーランド様が!!俺に!!会いにっ…。一年間告白し続けた甲斐があった…。オーランド様にとって忘れられない一人になれた…。こんな嬉しい事はないっ…!!
後は、身請けの話を待つだけだった…。だったのに…。








俺は今、






オーランド様に、






殺されそうです…。




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