20 / 40

第20話 ゴブリン戦

しおりを挟む

 近場の森林までやってきた俺は、さっそくゴブリンを探しまわった。

「いた……! あれか……!」

 だが、そこで俺は後悔することになる。

「おいマジかよ……」

 俺の想像していたゴブリン、それは小鬼のようなものだった。
 それも、漫画やゲームに出てくるようなデフォルメのきいたものを勝手にイメージしていたのだ。
 しかし、目の前にいるのは本物のゴブリンだ。

 俺のようなヒョロヒョロの引きこもりとは比べ物にならないほどの筋肉量。
 背丈こそ俺よりも低いが、トップアスリート並みのガタイのよさ。
 しかも顔つきも様々で、知性をしっかりと感じられる。

「あれと戦うのか……ゴクリ……」

 イメージとまったく違う、本物の化け物がそこにはいた。

「ゴブ……!」
「やばい、気づかれた……!」

 いくらこちらに魔法があっても、使えるのは一回づつだ。
 しかし、ゴブリンは集団で襲ってくる。

「まずい……囲まれた……!?」
「ゴブゴブ……」

 ゴブリンたちは俺のことを最大限警戒しつつ、取り囲んでじりじりと距離をつめてくる。
 さすがに向こうも一回きりの命がけの勝負だとわかっているのか、むやみに突っ込んでくるようなことはしない。
 そこも、ゲームとは違ってこれが現実だからこそだ。

「動いたら……やられる……」

 仮に俺が一体に向けて魔法を放ったとして、他の個体にやられてしまうだろう。
 逆に向こうも、味方がやられるのは避けたいのか、なかなか俺に攻撃をしかけてこない。
 シロも俺が手を出すまではガルルとうなって威嚇するだけだ。

「動く……!」

 数分たっただろうか、急にゴブリンの一体がしびれを切らして俺に突進してきた。
 みな賢い生き物だが、我慢のできない個体がいたらしい。
 だが、俺としてはピンチだ。

「やばい……怖い……! このままじゃ殺される……!」

 だが、なにもやらずに死ぬなんてごめんだ。
 俺は恐怖に身をまかせて魔法を放った。
 ゴブリン全員を倒せなくても、せめてこの一匹くらいは刺し違えたい。

「ファイア……!」

 すると――。
 ――ボウ……!

 俺の手のひらから炎が炸裂した。
 こちらへ向かってきたゴブリンの顔面に直撃。
 そしてそのままゴブリンの顔から肩へ燃え移り、奴は地面に倒れ悶え苦しんだ。

「ごぶうううううううううう!」
「はぁ……はぁ……」

 なんとかこの一匹はやれそうだ……。
 そう思った瞬間、ある違和感に気づく。
 おかしい、他のゴブリンが攻撃してこない。

「…………!?」

 不思議に思って俺が周りを見渡すと、さきほどまで俺を囲んでいたゴブリンたちがちりじりに散っていっているではないか……!

「ど、どうしたんだ……!?」

 よくよく彼らの表情を見てみると、なにかにひどく怯えているのがわかった。

「そうか……! 火が怖いのか……!」

 そう、これは単純なゲームなどではない、現実だ。
 現実の世界に置いて、野生の生き物がなによりも恐怖するのが火だ。

「もしかして……ゴブリンには火を操るほどの知性はない……!?」

 仮に知性があっても、少なくともそういった文化はなさそうだ。
 これは勝機だ。

「そういうことなら……! えい……!」

 俺は周りにいたゴブリンたちを威嚇するように、あたりにファイアをばらまいた。
 すると――。

「ゴブぅ……!」

 ゴブリンたちは面白いくらいに俺を恐怖しはじめて、しまいには背中を見せて逃げ出した。

「そこだぁ……!」

 そうやって一度崩れてしまえばあとは簡単だった。
 逃げ惑うゴブリンたちに後ろからこうげきを加えていくだけで、簡単に倒せる。

「ファイア……! ファイア……! ファイアあああ!」
「ゴブゴブぅ……!?」

「よっしゃああ!」

 みごと、俺は形勢逆転してゴブリンたちを蹴散らすことに成功した。
 いくつかのドロップアイテムが地面に残されている。
 こういうところは妙にゲーム的なんだな……。
 ゴブリンの死体は時間経過とともに、魔力になって地面へと返還されていった。

「なるほどな……ゴブリンって現実だとこんなに恐ろしいのか……」

 受付嬢さんがあれほど注意するわけだ。
 まあ、今回は魔法のおかげでなんとかなったし結果オーライだ。

 俺が勝利に浸って安心していると……。

 ――ドシン。
 ――ドシン。

「なんだ……?」

 森の奥から、巨大ななにかの足音が聞こえてきた。
 音だけでもわかる、これはただならぬ大きさのモンスターだ。

「グオオオオオオオオオオオオ!!!!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~

草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
ファンタジー
黒き狼の神獣ガルーと契約を交わし、魔人との戦争を勝利に導いた勇者が天寿をまっとうした。 勇者の養女セフィラは悲しみに暮れつつも、婚約者である王国の王子と幸せに生きていくことを誓う。 だが、王子にとってセフィラは勇者に取り入るための道具でしかなかった。 勇者亡き今、王子はセフィラとの婚約を破棄し、新たな神獣の契約者となって力による国民の支配を目論む。 しかし、ガルーと契約を交わしていたのは最初から勇者ではなくセフィラだったのだ! 真実を知って今さら媚びてくる王子に別れを告げ、セフィラはガルーの背に乗ってお城を飛び出す。 これは少女と世話焼き神獣の癒しとグルメに満ちた気ままな旅の物語!

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました

黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。 これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...