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第2話 引退したい(2)
しおりを挟むそろそろこのパーティにいるも限界だと感じていた。
だってみんなあまりにも強すぎる。
僕なんかじゃ、とうに歯が立たないほどに、みんなの成長は早かった。
最初は、僕もなんとか追いつこうとした。
だけど、みんなは天才だった。
僕みたいな凡人が、努力でどうこうできる問題じゃない。
みんなは天才で、あっと言う間にAランク冒険者になっていったのだ。
僕は、戦闘能力がないから、ずっと荷物持ち。
みんなといるのは、もちろん楽しかった。
最初はみんな、同じくらいの実力で、そのころは僕も、このパーティーに不満なんてなかったんだ。
だけど、正直もう限界だ。
このままじゃ命がいくつあってもたりない。
みんなのおこぼれでAランク冒険者にはなれたけど、そろそろ引退だなって思う。
Sランクにまでなれば、敵はさらに強くなるだろう。
そうなれば、いよいよ僕も本当に死にかけねない。
みんなとは一緒にいたいけど、ここらへんでお別れするのが、お互いのためだと思う。
僕は、死にたくなんかない。
これまでなんとか自慢の逃げ足で、死なずに戦場を駆けてきたけど、もう無理だと思う。
いっそのこと、僕のこと追放してくれたら辞めやすいんだけどな……。
どうせ引き留められるだろうし……。
パーティーのみんなは、本当にやさしい。
戦闘能力のない僕に文句ひとつ言わずに、ここまで連れてきてくれた。
だから、僕が抜けるなんていえば、まず引き留められるだろう。
いっそのこと、シュバールとか、僕のこと追放してくれないかな……。
パーティーメンバーで唯一、シュバールだけが、僕に悪感情を抱いていた。
それは表には出さないけど、僕にはわかる。
追放してくれれば、すぐにでも出て行くんだけどな……。
今回のS級オークの討伐。
これはさすがに危険だと思う。
僕がついていったら、確実に死ぬ。
だから、これ以上はみんなの迷惑にもなる。
僕はクエスト出発の前日、みんなに話を切り出すことにした。
「あの、僕そろそろこのパーティーをやめようと思う。みんな、いままでありがとう。本当にお世話になったよ……。別れるのは悲しいけど、これがベストだって、僕はわかってる。みんなも、理解してくれるよね……?」
クエスト出発の前日の夜、泊っている宿屋で僕がみんなにそう切り出すと、場が静まり返った。
あれ……僕なにかおかしなこと言ったかな……。
みんな、呆けたように無表情で、僕のほうを見つめる。
しばらく、しーん、とした静寂があった。
ややあって、ロランが堰を切ったように口を開く。
「ぎゃっはっはっはっはっは! それはなんの冗談だ! ノエル! お前がいなきゃ俺たちダメにきまってるだろ! お前がいないなんて、それこそパーティの崩壊を意味するぜ! おもしれえ冗談だなぁ……!」
「えぇ……? いや、冗談じゃないんだけど……」
僕はいたって真面目に相談しているのに、まさかの冗談だと思われた。
それに続くように、エリーもこう言った。
「そうよねーノエルがいてこその私たちだもんね」
「だめだこりゃ……」
この人たち、やっぱり僕の話なんかきくきがない。
そう、なんとこのパーティー、シュバール一人を除く全員が、僕のことが大好きなのだ。
ロランなんかは、もはや僕の信者というくらい、僕のことを崇拝すらしている。
なぜなのかはさっぱりわからないけど、みんな僕のことをあまりにも過大評価しているのだ。
だから、絶対に僕のことを追放なんかしてくれないし、まして抜けるといっても、こうやって話すらきいてもらえない。
でも、勝手にいなくなったりして心配をかけるのもアレだしなぁ……。
どうにかならないものか……。
このままじゃ、そのうちSランクモンスターに襲われて、死ぬ未来しか見えない。
僕はなんとか、もう一度説得を試みる。
「ほら、僕じゃ役に立たないだろ? この先、もっとモンスターは強くなる一方だし、足をひっぱることになると思う……。だから、パーティーを抜けさせてくれ!」
僕がそう言うと、ロランは。
「そうだよな……やっぱり、そうだよな。うん」
と、なにやら一人納得したようにうなずく。
よかった、ようやくわかってもらえたようだ。
そう思ったのもつかの間。
「そうだな、じゃあ俺たちもっと頑張るよ! ノエルにいらない心配かけさせるようじゃだめだな!」
「え……?」
「心配しなくても大丈夫だ! 俺がもっと強くなる! それでいいだろ!」
「えぇ……いや、そうじゃなく……」
「大丈夫! 俺に任せておけ! だからノエルはなにも心配すんなよな!」
「う、うん……」
あかんこのままじゃホンマに死ぬ……。
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