40 / 48
第39話 魔族(1)
しおりを挟むファイナルドラゴンとの戦いを終え、僕はついに決意した。
あかん……このままじゃ、ほんまに死ぬ。
あのときはたまたま剣が僕を助けてくれたけど、このままだと命がいくつあっても足りない。
僕はついに、逃げることにした。
もうクランもパーティーもどうでもいいよ。
僕は自分の命をまもるために、もう全部捨てて逃げることにしたのだ。
「はぁ……とはいっても、これからどうするかなぁ……」
とりあえず着の身着のまま逃げ出してきたけど、ここから行く当てもない。
まあとりあえず、実家にでも戻るか……?
僕は森の中を当てもなくさまよう。
しばらく一人で歩いていると――。
突如、上空から雷のような音がした。
上を見上げると、空がまるで毒の沼地のように、まがまがしくうなっている。
そして空に切れ目が入り、なんとそこから悪魔の角と羽根、尻尾を持った人間が現れた。
これって、もしかして……魔族……!?
話にはきいたことがある。
数百年に一度、魔王が復活するという伝説だ。
魔王が復活する直前、空が割れて大量の魔族が現れるらしい。
もしかして、それなのか……?
でも、なんでこんなところに……!?
しかも、その魔族はちょうど僕のところに向かってくるじゃないか……!
なんで一人になった途端こんな目にあうんだよぉ。
僕は結局、どうやっても死ぬ運命なのか……!?
「けけけけ……! これは弱そうな人間がいるなぁ。さっそく殺して、魔王様への手みあげとしよう」
「ひぃ……!?」
魔族は僕をみつけると、襲い掛かってきた。
ど、どうしよう……!?
このままじゃ僕は殺される……!
だけど僕だってただで殺されるわけにはいかない。
僕は剣をさやから抜いた。
「うおおおおおお!」
僕は剣で魔族に攻撃するけど、また空振りだ。
やはりこの剣は僕には重すぎる。
「雑魚め……!」
魔族は僕の攻撃をかわし、頭上から襲い掛かってきた。
死ぬ……!
そう思ったその瞬間。
また、剣から謎の光線が出た……。
――ビイイイイイイ!!!!
「ぎゃあああああああああああああ!?」
魔族は光線に焼かれ、地面に落ちた。
「今だ……!」
僕は動かなくなった魔族にとどめをさす。
――グシャ!
「ふぅ……なんとかなったけど……」
でもやっぱり、これってこの剣がすごいだけだよね……?
もし剣が発動しなかったら僕はやっぱり殺されてたわけだから、うん、やっぱり引退するべきだ。
剣が発動する条件もよくわからないしね……。
はやく実家に帰りたい……。
魔族を倒し、一息ついたときだった。
急に、茂みの中から、なにやら荘厳な鎧を身に着けた騎士が現れた。
騎士は僕と、倒れている魔族を交互に見ると、驚いた顔で近づいてきた。
あれ……これやばい……?
「魔族の反応を追ってきてみたら……これは驚いた……」
「え……?」
魔族の反応……てことは、ここに魔族が現れることをあらかじめ知っていたのか?
この人はなにものだ……?
もしかして、魔王や魔族を追ってるってことは、勇者……?
いや、そんなまさかな……。
「これは君が一人で倒したのか……?」
「いや、まあ……一応そうですけど、でも、剣が倒した……みたいな……?」
「なにを言ってるかわらないが、まあいい。とにかく、君の話がききたい。少し私と来てもらえないだろうか……?」
「えっと、その前に……。まずあなたは?」
「ああ、私か。私は王国騎士のラインハルトだ。まあ、ちまたで言われてるところの勇者というやつだな」
そのまさかでしたわ……。
って、こんなところで勇者に会えるなんて……。
それにしても、僕に話がききたいなんて、これはもしかして面倒なことになったか……?
勇者の手柄横取りしちゃったもんなぁ……。
「あの、僕はノエルです」
「ノエルくん、一緒に城まで来てもらおうか」
「えぇ……城……!?」
城ってことは、王様もいるってことだよね……。
王様かぁ……僕にファイナルドラゴンの討伐を指名してきた人だよね。
僕が閃光のノエルだってバレたら面倒なことになりそうだ。
このままじゃ、クランに連れ戻されるんじゃないのか……?
そうだ、逃げよう。
僕はこっそりと、逃げようとしてみる。
しかし、ラインハルトは僕の肩をがっしりつかんで離さない。
「ノエルくん、どこへいくんだい。さあ、城はこっちだ。いこうじゃないか」
「あ、はい……」
逃げられそうにない。
僕の力では、彼の手を振り払って逃げるなんてことは不可能だ。
くそう……引退したいのに……。
30
あなたにおすすめの小説
ゴブリンしか召喚出来なくても最強になる方法 ~無能とののしられて追放された宮廷召喚士、ボクっ娘王女と二人きりの冒険者パーティーで無双する~
石矢天
ファンタジー
「ラキス・トライク。貴様は今日限りでクビだ」
「ゴブリンしか召喚できない無能」
「平民あがりのクズ」
強大で希少なモンスターを召喚できるエリート貴族が集まる宮廷召喚士の中で、ゴブリンしか召喚できない平民出身のラキスはついに宮廷をクビになる。
ラキスはクビになったことは気にしていない。
宮廷で働けば楽な暮らしが出来ると聞いていたのに、政治だ派閥だといつも騒がしいばかりだったから良い機会だ。
だが無能だとかクズだとか言われたことは根に持っていた。
自分をクビにした宮廷召喚士長の企みを邪魔しようと思ったら、なぜか国の第二王女を暗殺計画から救ってしまった。
「ボクを助けた責任を取って」
「いくら払える?」
「……ではらう」
「なに?」
「対価はボクのカラダで払うって言ったんだ!!」
ただ楽な生活をして生きていたいラキスは、本人が望まないままボクっ娘王女と二人きりの冒険者パーティで無双し、なぜか国まで救ってしまうことになる。
本作品は三人称一元視点です。
「なろうRawi」でタイトルとあらすじを磨いてみました。
タイトル:S スコア9156
あらすじ:S スコア9175
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる