最弱Sランク冒険者は引退したい~仲間が強すぎるせいでなぜか僕が陰の実力者だと勘違いされているんだが?

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

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第42話 勇者(2)

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【ラインハルト視点】


 僕はノエルを連れて、城へとやってきた。
 
「王様、こちらが魔族を倒したノエルです。彼はすごく優秀な人材だと思います」

 王様の話によると、どうやら彼は閃光のノエルといって、それなりに名の知れた人物のようだ。
 まあ、魔族を一人で倒してしまうのだから、それはそうだろう。
 けど、僕は自分の手柄以外には興味がないからな。
 あいにく、僕は世間の中途半端な冒険者の名前なんか、知らなかった。
 
 だって、自分より弱いやつの名前なんて覚えても仕方ないからな。
 女の子なら別だが、男なんてマジで意味がない。
 立場が上の人間であれば、媚びたりすればいくらか利益を得られるだろうから、まだ覚える価値があるけど。
 まあ、しょせんは野良の冒険者だ。

 すると話の流れで、王様はこんなことを言いだした。

「そこにいる勇者ラインハルトと模擬戦を行ってもらう。それでおぬしの実力を確かめたい」
「は、はいぃ……!?」

 ふふ、ノエルのやつ、僕の実力を想像して、怯えているようだ。
 さっきは魔族討伐の手柄をとられてしまったからな。
 ここでノエルをぼこぼこにすれば、真に必要なのは僕だと、王様も気づくはず。
 ノエルとの模擬戦は、僕にとっても願ったりだ。

「いいじゃないか。僕も君と戦ってみたいよ……!」

 僕は木刀を構える。
 ノエルがごたごたいうまえに、さっさとはじめよう。

「よし、それでは模擬戦はじめ……!」

 大臣の一声で、戦いが始まった。
 僕は先手必勝で、ノエルに斬りかかる。

 しかし、ノエルはすばやい動きでそれを避けた。
 ふん、なかなかはやいな……。
 だが、すぐにとらえてみせる!

 僕は何度もノエルに斬りかかる。
 しかし、そのたびにノエルはそれを避けた。
 くそ……なんで当たらないんだ……?
 この僕の攻撃が……。

 どうせまぐれに決まっている。
 しかし、まったく反撃をしてこない。
 逃げ足ははやいようだが、とんだ臆病者だ。

「逃げてばかりでははじまらないよ……!」

 ――シュン。
 ――シュン。

 くそ……冗談じゃない。
 こいつ、いつまで避けるつもりだ……。
 しばらくノエルに剣を斬りつけつづけるも、やつは一向にばてるようすがない。
 それどころか、ノエルの動きはだんだん、さっきよりも速くなっていた。
 いったいどうなっているんだ!?

 僕だって、手を抜いているわけではない。
 こっちもだんだんムキになって、攻撃の速度を速めた。
 そして、渾身の一撃で、ノエルを殺すつもりで攻撃を加える。
 しかし、ノエルはそれらすべてを軽々とよけるのだ。

 くそ……こっちの体力がもたないぞ……。
 僕はもうずいぶんと攻撃を連続で加えていて、そのせいで体力が削られて、汗をかいてきている。
 こっちは息があがってきているというのに、ノエルときたら汗ひとつかいていない。
 こいつもしかしたら……いや、そんなはず。

 すると急に、ノエルは僕の剣を避けずに、自分の剣で受け止めてきた。
 なに……!?

 ――キン。

 ノエルの剣に当たった僕の剣は、そのまま弾かれてしまい、まっぷたつに折れ、宙を舞う。
 すさまじい防御力だった。
 さっきまでのは遊びだったのか……!?
 ノエルの剣に当てたとたん、僕の腕にすさまじい衝撃が加わった。

 まるでオリハルコンを殴りつけたかのような反動だ。
 僕の指も腕も、いたるところにダメージが入り、完全に骨が折れてしまっていた。
 っく……さっきのスタミナ、すばやさといい、防御力まであり得ないほどだ……!
 閃光のノエル……その名は伊達じゃないということか……!?
 悔しいが、その名前、心に刻むしかなさそうだ。

「っく……すさまじい防御力だ……! 僕では全然かなわない……!」
「えぇ……!?」

 大臣が勝敗を宣言する。

「勝者……ノエル……!」
 
 これまで人間相手に苦戦したことすらなかった。
 それなのに、まだこんな強敵がいただなんてな……。
 これが木刀でよかった。
 もし真剣同士の対決だったら、僕はさっきの一撃の反動で死んでいたかもしれない……。

 まだまだ僕も精進が必要だということだな……。
 認めよう、閃光のノエル……君は今までで一番の強敵だ。

 こうして、王様もノエルの実力を認め、彼は魔王討伐に参加することになった。
 まあ、魔王討伐くらい僕だけで充分だと思ってはいたが……彼ほどの実力者が仲間なら頼もしい。
 まあ、敵になるよりはましだろう。
 僕は彼のよこで上手くたちまわって、手柄をたてるとしようじゃないか。
 どうやら彼は乗り気じゃないみたいだし、野心や物欲も少なそうだからな。
 せいぜいうまく利用させてもらうさ。
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