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第28話 ホンモノのドラゴンブレスをみせてやるよ【ざまぁ!】
しおりを挟む俺たちは演習場に移動し、決闘を行うことになった。
ドマスは余裕の表情で、俺を煽ってくる。
「はっはっは! よくぞ逃げずに僕の決闘を受けてくれたねぇレルギアくん!」
「うるせえ黙れ」
「っく……だが、このリングに立った時点で、君の負けはもう決定しているんだな!」
「はぁ……?」
いったいどこからその自信がくるのやら……。
明らかにこいつはいいとこCクラスって感じの実力だ。
Aクラスの連中でさえ、俺にとっては雑魚なのだが……。
魔力の量からしても、それはわかりそうなものだがな。
いくら俺が魔力を抑えているといっても、常人の数倍はあるわけだし。
だがこの異常なまでの自信は、たしかに引っ掛かる。
なにか禁術の類にでも手を染めているのだろうか。
だとしたら、少し厄介かもな……。
だがなにがこようと、結局は俺が負けることはありえないんだがな。
「よし、どこからでもかかってこい」
「いいのかい……? ならいくよ!」
とりあえず俺は様子見だな。
ドマスがなにをするつもりだったのかも、見てみたいしな。
俺はその場に仁王立ちで立ち尽くした。
「僕の勝ちだな! ドラゴンを召喚してやるぜええええええ!!!!」
「なに……!? ドラゴンだと……!?」
「僕は召喚魔法だけは大の得意なんだ! はっはっはぁ!」
ドマスの周辺に、巨大な魔法陣が現れる。
まさか、ドマスは本当にドラゴンを召喚しようというのか?
ドラゴンといえば、アイリに匹敵する強さなんじゃないのか……?
もしそれが本当だとしたら、俺もヤバいかもな……。
そう思ったのもつかの間――。
実際に魔法陣から現れたのは、ドラゴンなどではない。
そう、いつものトカゲだった。
だというのに、ドマスはなにがおかしいのか、高笑いを上げる。
「ふぅわああああああはっはっはっはっはっはああ!!!! 見たか! これぞ高貴なる古のドラゴン!!!! 僕にしか召喚できない、最強の相棒だぁああああああああああ!!!!」
「……………………」
「なんだ!? なぜ何も言わない! 怖気づいたのか……!?」
「いやぁ……だって……これ、ドラゴンじゃなくてトカゲだもの……」
ドマスは頑なにドラゴンだと言い張るが、これはどっからどう見てもトカゲだった。
たしかに図体はデカいが、魔力がてんでだめだ。
いつも俺が乗り物にしているトカゲでさえ、かなりの雑魚だが、こいつが召喚したのはもっと雑魚だった。
「おいトカゲ! お前ドラゴンじゃねえよなぁ?」
俺はトカゲに向かってきいてみた。
すると、トカゲはなにも言葉を発さずに、ぶるぶる震えて鳴き声を出すだけだった。
「きゅぅううん……」
「なんだお前、言葉すら話せないのか……」
こりゃあ、トカゲの中でもかなり下位のトカゲだな……。
「ど、ドラゴンだぞ!? 言葉を話せるわけないだろう!」
「はぁ……? ドラゴンは普通に話すけどな……? ていうか、普通トカゲでも話せるぞ?」
「と、トカゲが話せるわけないだろ!? なにを言っているんださっきから……!?」
まったく、ドマスはドラゴンやトカゲについて、とことん無知なようだ。
それでよくドラゴンを召喚だのとのたまったものだ。
まあ、思った以上にこりゃあ楽勝だな。
なんだか決闘っていうのも申し訳なくなってきたくらいだ。
これじゃあ決闘どころか、一方的すぎるからな。
しょうがない、一発くらい攻撃させてやるか。
俺はそのまま、傍観をつづけた。
「さあ僕のドラゴンよ! あの頭のおかしな野郎をぶっ殺せ!!!!」
ドマスはトカゲに攻撃を命じる。
しかし――トカゲはその場から一歩も動こうとはしない。
どうしたんだ……?
召喚獣に言うことをきかせることもできないのか?
よく見てみると、トカゲが怯えてぶるぶる震えていることがわかった。
そうか……俺がホンモノのドラゴンの眷属で、竜王だから怯えているのか。
「そ、そんな……僕のドラゴンが……怯えているだとぉおおおおおお……!?!??!?!」
そりゃあまあ、無理もないか。
トカゲからしたら、ドラゴンなんて上位種のさらに上位種みたいなものだからな。
それに俺は竜王、いわばドラゴンの王だ。
だからただのトカゲからしたら、そりゃあ恐ろしいだろうな。
いくら主に命令されたからといって、竜王に牙をむくようなトカゲはいないか。
「くそぅ……もういい! なら僕がやってやる!」
「お、そうか」
「僕は召喚獣の能力を使用することができるんだ! いくぞ! ドラゴンブレス――!!!!」
――ブォ!!!!
そう言って、ドマスは俺にドラゴンブレスなるものを放った。
だが、その威力はお世辞にも大したものとは言えず……。
俺に届きはしたものの、傷一つ、煤一つつけられずに終わった。
「なんだこれ? ドラゴンブレスっていうか、トカゲのため息じゃねえの?」
「そんな……!? 僕のドラゴンブレスが効かない……!?!??!」
本物のドラゴンブレスならアイリのを見たことが何度もあるが、こんなもんじゃないぞ。
ていうか、アイリが酔ったときとか、寝起きのときに何度も浴びせられたっけ……。
まあそもそも本物のドラゴンブレスでさえも、竜王である俺にはあまり効かないんだけどな。
「じゃあそろそろこっちも反撃するぜ?」
「ひ、ひぃ……!?」
俺は地味にむかついていた。
こいつがドラゴンを騙ったこと、ドラゴンブレスなどとうそぶいたこと。
俺の知ってるドラゴンは、決してこんなもんじゃない。
「そんなにドラゴンが見たきゃなぁ……ホンモノのドラゴンブレスをみせてやるよ」
「ひぃいいいい……!?!?!?!」
俺は自分の中に、ドラゴンブレスをたくわえた。
アイリにつけられた噛み痕、竜の紋章から、魔力が伝わる。
俺はアイリの眷属になったおかげで、アイリのドラゴンブレスを撃てるようになった。
「よぉく覚えておけ! これがホンモノのドラゴンブレスだぁああああああああ!!!!」
「ちょ、ま……待ってえええええええええ!!!!!」
――ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
――ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
――ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
――ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
――ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
――キュィイイイイイイイイイイイイイイン!!!!
――ズギャアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
「ぎやああああああああああああああああああ!!!!」
俺は空中に向かって、ドラゴンブレスを放った。
演習場は天井がなく、上が開いているので大丈夫だ。
もちろんこんなもの、人間に向けて放てるわけがない。
もし人に直撃していたら、死ぬどころじゃ済まない。
たぶんそもそもの存在、概念自体を殺しかねないからな。
だがドマスは自分に向けられたと思ったのか、失神して失禁している。
「ま、他愛もなかったな……」
これで俺が決闘に勝ったってことで、Aクラスへの昇進と、奴隷の開放が決まった。
もしかしたらズルいこいつのことだから、決闘の約束をたがえるかもと思ったが、そこは大丈夫みたいだ。
王族にとって決闘とは絶対を意味するらしい。
だから王家の名にかけても、約束は守られるそうだ。
これにて一件落着……なのかな……?
ま、久しぶりに思い切りドラゴンブレス撃ててスッキリした。
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