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第51話 ライゼVSジルコ

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「それじゃあ、レルギア様、いってきますね」
「ああ、俺はライゼを信じてる。大丈夫だ、きっと勝てる」
「はい!」

 ライゼと軽くキスを交わし、見送る。
 相手は三年生の中でもひときわ強い、いわばエースと言われるような人物だった。
 ジルコ・ニアス――銀髪長髪の長身の男だ。

「ふん、相手はローゼンベルクの姫さまか。騎士である私が、よもや姫君などには負けまいよ」

 ジルコは剣を素振りしながら、そんな驕った態度を示す。
 まったく、ライゼをそこらのただの姫様と侮ってもらっては困るな。
 龍に育てられた最強のこの俺が、育てたのがライゼだというのに。

「試合開始!」

 試合開始とほぼ同時、ライゼの剣がジルコの剣を弾く。
 ――キン!

「なに……!?」

 ここですぐさまライゼの勝ちで決着かと思われたが、あいてもさすがのエリートだ。
 ジルコはすぐにバックステップで距離をとり、魔法で防御の態勢になった。
 判断がはやい。戦い慣れている証拠だ。

「く……やるではないか。ただのなにもできない、男に守られるだけの姫だと思っていたが……訂正しよう。君は強い。だが……私ももう油断はしない……! ここから先は、一歩も攻撃は通らないと思え!」

 すると、剣を失ったジルコは、格闘の構えにでた。
 あいつ……剣士だと思っていたが、違うのか?

「剣を失って、まだ私に勝てる気ですか?」

 ライゼがジルコにそう言う。

「私を剣がなければ戦えないそこらのやわな剣士と侮ってもらっては困るな。私の本質は、このすぐれた体術格闘にある! 質の高い完璧な体術があってこその、剣術も生きるというもの!」

 ジルコはそう言って、ライゼに素手でかかっていった。
 剣を持つ相手に素手でなど敵うはずもない。
 しかし、たしかにジルコは自分でいうだけのことはある。
 剣をもっているライゼと、ほぼ互角の戦闘を繰り広げる。
 剣の先端をうまく避け、剣の持ち手の部分を拳でやりすごす。
 しかもうまくライゼにダメージがいくような形ではじき返している。
 あれはたしかに、体術だけなら右にでるものはいないだろう。
 俺でなきゃ見逃しているような高速パンチが炸裂する。
 ライゼもライゼで、鍛えた剣術をいかんなく発揮している。
 ジルコの攻撃もまた、ライゼにそれほど効いてはいなかった。
 が、膠着状態がついに壊れる。
 ジルコの拳が、ライゼの剣を弾いたのだ。

「っく……!」

 ほう、素手でライゼの剣術に勝つか……。
 しかし、ライゼもまた、ジルコと同じだった。
 ライゼの得意分野は、剣だけではない。

「剣を失って、それでもかかってくるきか? 姫剣士殿よ。あきらめたまえ。私の体術の前では、どんな攻撃も無力!」
「剣だけが私のとりえだとお思いですか? こっちは本戦までとっておきにしておきたかったんですが……しかたないですね……。私の本領は……魔法です……!」

 ――豪!!!!

 ライゼの右手から、火炎魔法が炸裂する!!!!

「ふん! 魔法が使えたところで無駄なこと! 魔法をつかえるのはあなただけではない! それに、私の体術の前ではすべてが無力だああああああああ!!!!」

 ジルコはシールド魔法でライゼの攻撃を受け止める。
 さらに、加速魔法でこっちにちかづいてくる!
 だが、ライゼが反撃する!

「誰が今ので終わりっていいました?」
「なに……!?」

 ライゼの身体から、7色の光がジルコを襲う。
 炎、風、雷、水、氷、土、光――それらの属性すべての魔法を、いっぺんに解き放ったのだ。

「なに……!? 複数属性……しかも、7属性もだとおおおおおおおおおお!!!?」

 ジルコはそれを、加速魔法でなんとか避ける。

「だが、当たらなければ同じこと! こんな大技、もう2度も使えないだろう! もらったぁ!」
「ならもう一度です!」
「なんだとおおおおおおおおおお!?」

 ライゼはいとも簡単に、再び七色の衝撃波を作り出した。
 そしてそれを、さらに多重詠唱。
 ジルコが避けることも、防御することもできないスピードと物量で、一気に攻撃を仕掛ける!

「うわああああああああああああああああ!!!!」

 みごと、ライゼの攻撃によってジルコの衣服がボロボロになる。
 さすがにライゼも本気で攻撃はしていないので、肉体に影響はないだろう。

「やった! 勝ちました!」
「よし、さすがはライゼだな!」

 ライゼの勝利で、俺たちのチーム勝利が確定した。
 その瞬間、観客たちが一斉に湧いた。

「うおおおおおおおおおおお!!!! あいつらすげえ、三年に勝っちまいやがった!」
「優勝候補を圧倒ってことは、あいつらで間違いないな!」

 その期待の声のとおりに、俺たちはその後も快勝をつづけた。
 そして、校内選抜を余裕で突破し、みごと剣武祭への参加券を手に入れたのだった。
 ちなみに、俺の出番はまだ一度もなかった。
 校内なら負けなしだ。
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