始龍の賢者〜生まれた直後に森に捨てられたけど、最強種のドラゴンに拾われ溺愛されて最強になった~

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

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第61話 龍の精霊

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 断崖に飛び込んでから、数分が経過した。
 俺たちはあっというまに地の底に吸い込まれていく。
 魔力をクッションにして、断崖の一番下に降り立つ。

「ふぅ……やっぱり底はあったか」

 どれくらい下っただろうか。
 とにかく、今度はここから反対側の壁まで歩いて、それを上ればいい。
 魔力を腕にこめ、崖を上る。
 登りは約20分くらいで、地上に到達した。
 サテナは俺がおぶって上った。

「ここが……本当の暗黒大陸……」

 断崖絶壁をよじ登ると、そこにはさっきまでとはまた違った植生が存在した。
 大魔境に確かに似ているが、かなり違う。
 断崖の向こう側とこっち側で、いろいろと生態系が違うようだ。

「こっからどうしようか……」
「とりあえず歩いて散策しかないね」

 ここから先は、正真正銘前人未到の領域。
 地図や案内人などもない。
 俺たちはあてもなく暗黒大陸をさまよった。
 しばらく歩いていると、俺の龍の紋章に変化があった。

 急に、紋章が鈍く光だしたのだ。
 なにかに、呼ばれているような気がする。

「アイリ……!?」

 俺は、感覚に連れていかれるままに、その方向を目指した。
 すると、木の陰に一体の精霊をみつけた。
 なんの精霊だろうか。こいつに呼ばれたのか……?
 とりあえず俺はその精霊に話しかけてみることにした。

「おい、俺を呼んだのはお前か……?」
「うん、ぼくだよ」

 俺が精霊と話を始めると、サテナが興味津々の顔で食いついてきた。

「君は精霊の言葉もしゃべれるのか……!?」
「まあな。アイリに教わったんだ。大魔境にも精霊はけっこうな数いたしな」

 精霊というのは、いろんなものに宿る生き物だ。
 たとえば木の精霊や水の精。他にも、スライムの精霊なんかもいる。
 牛の精霊とかもな。
 で、こいつはなんの精霊なんだろうか。

「お前はなにものなんだ……?」
「ぼくは龍の精だよ」
「龍の精……!?」

 それで俺の紋章に反応したのか。

「それで、俺になんのようなんだ……?」
「困ってるようだったから。ちょうど君からは龍のいぶきを感じたしね。なにか力になれればと思って」
「おお、そうなのか。それはありがたい」

 そういえば、暗黒大陸にきてから始めて誰かと話をしたな。
 第一村人発見ってところだ。
 ていうか、暗黒大陸にもちゃんと精霊はいるんだな。
 精霊の大きさは俺たちの大陸とかわらなかった。
 というか、龍の精霊か……。龍にもちゃんと精霊がいるんだな。
 でも、案内してくれるのならありがたい。

「実は、俺たちはこの大陸とは違うところから来たんだ」
「ふーん、それで困ってたんだね」
「そうなんだ。行く当てもなく、やみくもに歩いていて、正直困ってはいたんだよ」
「なにか探しているのかい?」

 龍の精霊というくらいだから、こいつならなにかアイリについて知っているかもしれない。
 たずねる相手としてはぴったりだ。

「俺はアイリというドラゴンを探しているんだ。始龍なんだけど、知ってるか?」
「ううん、知らない」
「そうか……」
「でも、ドラゴンを探してるなら、いいことを教えられるかもよ」
「なんだ?」
「この先に、竜人族の里があるんだ。そこにいけば、なにかわかるかもね。案内しようか?」
「ぜひ頼む……!」

 竜人族の里……!
 たしかにそこにいけば、なにかがわかりそうだ。
 ていうか、暗黒大陸にもやっぱり住んでる奴らはいるんだな。
 どこかに人間の街なんかもあったりするのだろうか。
 まだまだ暗黒大陸についてはわからないことだらけだな。
 とにかく、その竜人族の里とやらを目指してみることにする。

「龍の精霊に竜人族の里……! 苦労してここまできたかいがあったよぉ……!」

 サテナはずっと目を輝かせていた。
 はは……俺もサテナが喜んでいてうれしい。
 カンナはというと、これまでこれといった戦闘がないのでうずうずしていた。

「危険がいっぱいだというから暗黒大陸にきたというのに……ぷんすか」

 まったくこの戦闘狂め……。



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