ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

文字の大きさ
72 / 257

第72話悪魔狩り

「さぁ行くよ!」

 浦島先輩の鞭がバチンと地面を叩き、サキュバスはパチンと指を鳴らしてピンク色の炎を飛ばした。

 サキュバスの魔法はムーディな一見ふざけた色合いだが、熱は相当なもので飛んできた炎の塊は周囲の温度を一気に上げた。

「よっと!」

 だが浦島先輩が左手を勢いよく上に向かって突き上げると、同時に地面が壁になって炎を弾いた。

 おお、浦島先輩の方がよほど錬金術っぽいことをする。

 今の浦島先輩の魔力なら、相当大規模に土の魔法を操れそうだった。

「炎がメインウエポン? なら相性抜群だ!」

 更に連続で土の塊がサキュバスに襲い掛かるが、サキュバスは空を飛んだままヒラリヒラリと器用に回避して見せた。

 完全にかわし切ったサキュバスは勝ち誇る様に笑うが、その時フロアにギターの音が響いていた。

 かなりの音量で、他のモンスターを引き寄せるかもしれないと一瞬僕はそんな心配をした。

 そして確かに演奏はモンスターを呼び出しはしたが、しかし今までとは確実にその性質が変わっていることに僕も気がついた。

「なんか寒いような。……ゴースト系のモンスター? だけど敵対する気配がない……」

 僕の疑問に答えたのはもちろん攻略君だった。

『ああ、彼女の音が彼らを引き付けている。そして魅入られた彼らは彼女に力を貸さずにはいられない』

「攻略君……それってネクロマンサーだから?」

『ああ。ネクロマンサーのスキルだ。だが彼女のスタイルがスキルに影響を与えて面白い形になっているね。彼女の出す音が周囲の力を吸収して、結界の役割を果たしているようだ」

「……なんだか物騒なこと言ってない?」

『まぁ物騒だ。だが効果は分かりやすい。生きているモノは歌に近づきたがらない。逆に生きていないモノは吸い寄せられる。ネクロマンサーのステージ完成だね』

「生きてても吸い取られるのか……僕ら死なない?」

『敵味方の識別もやっているよ。いきなりでコレは天才的なセンスだ』

 何だかよくわからないが、大丈夫らしい。

 ただ、ステージで何が起こっているかは僕にも分かった。

 ゴースト達から、そして周辺からレイナさんに力が集まって行く。

 ここは半分は霊体のようなモンスターばかりの階層で相性もいいのだろう。

 確実にレベル以上の魔力を扱うレイナさんにサキュバスはひるんだ。

 すかさずそれを察知した浦島先輩は自分の手元を操作して、ヘルメットの青いLEDを点灯させた。

 とたん、ピタリと動きを止めるサキュバスの身体には、透明な極細の糸が幾重にも絡まっていた。

「……水ワイヤーの魔法で拘束完了! いいよ!」

「わっかりました!」

 ここでフィニッシュである。

 今日一番の激しさでギターがかき鳴らされると、溜まりに溜まった雷はサキュバスを一瞬で消滅させた。

 そしてそれでも残ったわずかな霞はフヨフヨ漂っていたが、すぐに浦島先輩のノートに吸収されてボンヤリ光り輝いていた。

「よっしゃー! これでいいんだよね!」

「はいOKです。テイム出来てますよ! おめでとうございます!」

 確かにノートに悪魔は封印され、浦島先輩は歓喜の勝鬨を上げ、レイナさんは絶望の悲鳴を上げる。

 これが今回の一連の悪魔テイムの流れだった。

 だがまだ戦いは始まったばかりだ。

 彼女達は十分にこの階層でも戦えそうで、そうなると捕獲をためらう理由など
一つもない。

「よし! じゃあ次行こう次!」

「そうですね! 次お願いします!」

「心得ました……じゃあ次っすね」

 まぁどんな奴かはモザイクでわかんないんだけど、僕は次の獲物を探しに行った。



 結局浦島先輩とレイナさんはすさまじく頑張ったが、レイナさんが仲間に出来たのは1体。

 浦島先輩は3体と、ジョブの有利を完全にひっくり返した結果となった。

 他はノートに入った瞬間ノートが燃え上がって、灰である。

「ふぅ……まぁざっとこんなもんよ。情熱の勝利かしら?」

「ぐっ! ネクロマンサーの名折れです!」

 何かそこには負けられない戦いがあったようだ。

 むなしい戦いだが、しかしおそらくは世界で初めて悪魔のテイマーが誕生した瞬間でもある。

 新しい仲間も増え、状況が一段落したことを見計らって、僕はそう言えばと作っておいた冊子を二人にも渡すことにしたわけだ。

「テイムお疲れさまでした。じゃあ、晴れてデーモンテイマーになった二人に僕から贈り物があります」

「贈り物? 何だろう?」

「本当ですか! それは期待してしまいますね!」

 だが二人は取り出した雑な冊子でいったん身構え、そして手に取った冊子の内容を確認した二人は一気に表情が険しくなった。

「こ、これは……」

「まさか……モンスターの分布ですか?」

「そう。これから僕らはどんどんダンジョンの中を自由に歩けるようになってくるから、どの層にどんなモンスターがいるか、知ってた方がいいでしょう?」
 
 これから先、レベルが高くなってくれば自由にダンジョンを歩きたくなることは、予想出来た。

 実際に、その実力が付いて来ていると実感した今、なおさらだろう。

 僕だって、これは値千金の価値のある情報だとわかっている。

 だがこの先テイマーとしてダンジョンを廻る浦島先輩にこの情報は、きっと彼女の生存率をぐっと高めてくれるはずだった。

「ありがとう……大事にするよ」

「いえいえ。まぁ活用してください」

 修学旅行の旅のしおりみたいにホチキスでパチパチ止めたやつだから大事にするにも限度はあると思うから、メモくらいの感覚で気軽に活用してもらいたい。

 そして浦島先輩はしっかりとそれがおそらく真実だと認識した上でページをめくり、とあるページで手を止めていた。

「……ねえねぇ、ワタヌキ君? 君の用意した冊子のさ、ここなんだけど……」

「はい、なんです?」

「精霊のいる階層にさ、妖精のモンスター多い辺りあるじゃん?」

「はい。ありますね」

「ケットシーって書いてあるんだけど…………どういうこと?」

「え? ……あー、いますね」

 確認すると、確かに僕が打ち込んだ文字列の中にケットシーの文字があった。

「……えーと」

 浦島先輩の顔がめっちゃ近い。

 そして腹の底というか地獄の底から絞り出したような声で、浦島先輩は僕の耳元で囁いた。

「……言えよ」

「……すんません!」

 別に意地悪じゃないんですよ!? 本当に詳細は知らなかっただけなんです!

 浦島先輩は信じてくれたが、今度はケットシー狩りに連れていかれるのは確定になりそうだった。
感想 3

あなたにおすすめの小説

さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。 パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。 アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。

《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。