ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第180話よかった彼は桃山君だ

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「ボスの気配を強く感じる。……奴は拙者を待っているようでござるな」

 何か桃山君が強敵の気配を感じ取った猛者のようなことを言い出した。

 僕にはまだ魔力系統の危機感知は反応しないのだが、そこのところ攻略君に聞いてみた。

 ほんとかね? どう思う? 攻略君?

『正確な判断だね。一定数の大猿を従えることで、奴は本気を出して来る』

 マジか……それを桃山君は感じ取っていると? 

 そしてこの桃山氏、今の時点ですでに相当数の大猿を従えているってことか。

 テイムなのかな? まぁテイムなのか。野生の理の強いワイルドな条件である。

 なんにせよ、どうやら過酷な戦闘は確定してしまった。

 僕はしかし何だか雰囲気に流されるまま来てしまったけれど、言ってしまえばえげつない修羅場に来てしまったような危機感が僕の背中をゾクゾクさせていた。

『来る!上だ!』

「!」

 そして縄張りに入った瞬間攻略君が警告を発し、そいつはジャングル上空から飛ぶように飛来してきた。

 ズドンと地震を起こしながら片腕を突いて着地する大猿は明らかにデカかった。

 普通の大猿よりも倍以上は巨大な体躯。丸太のような腕は、いかれた筋肉が標準搭載されている。

 大猿の中でも明らかに強そうな個体を皇帝大猿とでも名付けようか?

 そいつは一切の遊びの無い殺気に塗れた視線を桃山君に向けていた。

 対して桃山君は全く逃げるそぶりも、怯むそぶりもなく、にらみ合う間長い呼吸音だけが静かに聞こえてきていた。

「その意気や由―――この真・猿鬼の錆にしてやるでござる」

 スラリと鞘から抜き放ったのは、もちろん新調する予定の新ウエポンだった。

 やはり日本刀ってやつは見栄えのする武器だ。

 更に腰を落として身構え、その時に備える桃山君に一切の隙はない。

 このまま任せて見ていることも考えたが、それはさすがにマズイ。

 この危険階層で、僕がぼーっと突っ立っているのも冗談ではない話だった。

「桃山君! なんか手伝うよ!」

 だからこそ意思を込めて声を大きくすると、桃山君からは大層微妙な返事が返って来た。

「え! ああ……そうでござるな! サポートお願いするでござる!」

「なるほど! サポートね! わかった!」

 不本意だろうが受け入れてくれて助かる。あいつは冗談抜きに死にかねない。

 そしてタンクだから壁にしてもらうのが一番役立てるんだがと思いつつ……僕は気がついてしまった。

「……」

 どうしようと思ったが……気になる。

 迷った僕に決定打は己の内からGOサインを出していた。

『やってみては?』

「あ、やっぱり有効そう?」

『有効だ。とてもね』

「……よし来た」

 お墨付きがいただけたなら、やってみるとしよう。

 僕はリュックサックに手を突っ込んで、ラッキョ瓶を取り出しバッチリ狙いを定めた。

「ホラ! こいつをお食べ!」

「そ、それは! 待ってワタヌキ氏!」

 僕の取り出したものを見て、焦った桃山君だがもう遅い。

 今は戦闘中だ、集中して欲しい。

 ポポイと投げ放ったラッキョは次々に巨大化して、大猿にジャストサイズとなる。

 そして大猿の彼は飛んできたそれを掴み取って……剥いた。

 剥いてしまった。

「ウッキャー! ウッキャー!」

 後はもう一心不乱だった。

「……でかくても効果あるんだなぁ。さぁ、どうぞ?」

「……ありがとうでござる」

「桃山氏! その死ぬほど残念な顔じゃん」

「いやーこれでこそだなと……改めて実感したんでござるよ」

 改めてざっくりと皇帝大猿を一撃した真猿鬼は、思ったよりもサックリと無防備すぎる皇帝大猿を切り伏せることに成功していた。

「……! 何でござるこの手ごたえ!」

 ただ想像を絶する切れ味は、桃山君を驚愕させることにだけは成功したらしい。

 実際受け取った時試し斬りを見せてもらったが、刃に落とした紙がスパリと斬れるほどに切れ味を追求した一品とのことだった。

「……普通の大猿の毛皮は鉄の様なんでござるのに……こいつは豆腐のように……」

「すごいでしょ? 刃物としての切れ味はたぶんダンジョン産以上だ。……それにラッキョ戦法だって意味がある。だって未完成のまま曲がったりしたらもったいないだろう?」

「……そうでござったな」

 大猿の姿が分解されて、魂が引き込まれるような不気味な光を放つ刀に取り込まれていく。

 そしてしみこむ様にすっぽりと収まると、刀身が赤く染まって目に見えて雰囲気が変わった。

「おお!」

「おぉ……変わった」

 桃山君は真・猿鬼を眺めて何回か振ると目を輝かせていた。

「これが拙者の新しい武器……」

「そうだとも。感想は?」

「……今のところ最高でござるな!」

 ようやくラッキョの不満を忘れてくれたらしい桃山君は、完成した武器にご満悦だった。

「それは良かった。じゃあ最高を更に更新してくれよ。そいつを手に持って、取り込んだモンスターを強くイメージしてみて?」

 そうするだけでトリガーになる。

 桃山君は戸惑っていたみたいだが、すぐに実行する当たり馴れを感じた。

「強くイメージでござるね? うーん……猿鬼?」

 桃山君は刀を構えて呼びかける。

 すると霞の様なものが刀を中心に生まれ、気がつくと、桃山君の背後にゆらりと大きな猿の姿が現れていた。

 不定形のゴーストのように見えて、明らかに実体の迫力を有するそいつを見上げた桃山君は叫んだ。

「……これが拙者のス〇ンドでござるかぁ!?」

 驚く桃山君の反応は、ちょっと遠い存在になってしまったんじゃないかという僕の疑念を一撃で吹き飛ばしてくれた。
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