ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第3話攻略君の秘密

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 話してみて分かったことは、攻略君は本当にダンジョンの秘密を良く知っているということだった。

 例えばどこにどんなアイテムが落ちているだとか、どこにどんなモンスターが出てくるだとか。

 場合によっては未来予知まがいのことまでやってくるのだから恐れ入る。

 ダンジョンの攻略に関しては特にその精度が良く、より正確な情報を提供できるっぽい。

 ただし僕からは、それが真実かどうかやってみなければわからないのが、いちいち心臓に悪いのは間違いなかった。

 攻略君が頭の中で囁いてくる謎のスキルで、その検証でなければ試そうとも思わない。

 なんならダンジョンより先に幻聴を疑って病院に行くべきだとさえ思える。

 それでも僕が攻略君の言葉に耳を傾けるのは、幻聴にしては妙に具体的で、好奇心が刺激される以上の理由は無かったりする。

「まぁ自分がおかしいとは思いたくないよね」

『その言い草はないんじゃないか?』

「いやこっちだって命掛かってるんだから素直に従っているだけでも褒めて欲しいよ」

『そりゃそうかもしれないが、私の言うことは当たっていただろう?』

「……それはそうなんだけどさ」

 まぁ実際それで的中する回数が多くなればなるだけ、信じない訳にもいかなくなった。

 ただまるっきり言いなりと言うわけでもなく、攻略君は僕の質問に答えると言うスタンスだから、僕の方のリクエストは最初に出していた。


「ダンジョンを危なげなく歩くために最も効率的なチャートは?」

 そんなリクエストに攻略君は答えた。


『攻略君の攻略情報! ダンジョンに入ることによって成長するレベルは人類の
パラメーターを拡張します。しかし確認できるものばかりではなく、鑑定スキルでも見えない隠しパラメーターが存在します』

 攻略君曰く、隠しパラメーターは倒すモンスターの種類で、もらえるものが決まるらしい。

 つまり出て来たモンスターを順に倒していけば、雑多な補正が入ってしまう。

『しかしそこを適当にやると、特色がなくなっていくんだね。だからきちんと計画を立てて自分を育成することですごい変化がある。隠しパラメーターの振り幅は1000ポイント。一つのパラメーターに入れられる上限は500だ』

 そして攻略君が俺にお勧めしてくれたビルドは、攻撃できるタンク型だった。

『物理攻撃と生命力に全振りした型だね。全部振り切ればそう簡単には死ななくなる』

「……それって痛そうだよね」

『即死するより全然いいだろう? この先ソロでもやっていけるし。パーティーを組んでも前衛で活かせる型だ』

「……なるほど、確かに死ぬよりは全然いいかも」

『だろう? 幸い、地下1階に攻撃力と生命力補正のモンスターはいる』

「つまり僕はえり好みしながらきちんと数えてモンスターを1000匹倒せばいいわけだ」

『そういうこと。本格的なレベル上げはそれが終わってからをお勧めするよ。具体的にはこうだ―――』



 というようなやり取りがあって、ある程度納得して僕はダンジョンに入っているのだが、やっていることはひたすら一階を徘徊しているだけだったりするわけだ。

 簡単な話だ。隠しパラメーターに対応するモンスターは1階ですべて出現する。

 じゃあ一番弱いところでコツコツモンスターを倒す方が、安全でかつ効率的なのである。

 しかしこの攻略情報には、致命的な欠陥もあった。

 それは雑魚であろうと1000匹も延々と倒し続けるのには時間がかかる。

 つまり……完全にスタートダッシュに失敗した変わり者の落ちこぼれの完成というわけだった。

『なんかゴメン……』

「いやいや、なんで謝るの。僕は納得してやってるんだって。自分のペースでやるの、僕は結構好きなんだよ」

 そもそもマイペースなのは大好きだ。

 それに攻略君の提案した方法に従うことで確かに得られているものがある。

 攻略君の情報はたぶん正しい。

 そんな実感が日々のモチベーションにもつながっていた。

 だがそれでも攻略君はなぜか、妙な責任を感じているらしい。

『そうだ! 実はここ……大きな事件の起点なんだよ。君が今いるクラスに強い運命を持ってる子が沢山いる』

「うんめいとは?」

 暇つぶしの雑談に、攻略君がまたわけのわからないことを言い出した。

 僕の露骨な表情には気がつかずに、攻略君は何やらさらに語り始めた。

『まぁ……いわゆる主人公? 主人公補正? そんなものだよ』

「…………マジで言ってる?」

『マジだとも。そしてそういう人物の周囲には大抵美女がつきものなのさ。攻略君はすべてを攻略します……運命に選ばれた美少女と恋愛なんてどうだろう? まずはプロフィールから見てみては?』

 それがお詫びになると本気で思ってそうな攻略君だが、僕はつい鼻で笑ってしまった。

「じゃあ……その人達とあんまりかかわらない方法を教えてくれない?」

『なんでー』

「何でも何もだよ。何でそれで汚名が返上出来ると思ったんだよ」

『えぇーだって。年頃の子はみんな恋愛に興味津々なんだろう?』

「そこは強く否定はしないけどさぁ……程度はまちまちだよ?」

 そして僕はそういうの今一盛り上がれない人である。

 愕然とする攻略君だが、これはボクの気質の問題だった。

「厄介そうだから。深入りしたくないんだよ。とりあえず鍛えておいた方がいいのは分かったけど」

『その心は?』

「巻き込まれて死なないように」

『まぁ、そうだよね……』

 攻略君はシュンとして黙った。なんかすまぬ。

 だが言われてみれば確かに……クラスメイトに妙に美形や美人が多い気がしてはいたが……いるのか。主人公が。

 世の中、漫画みたいな不思議なこともあるモノらしい。

 さて攻略君に元気がなくなってしまったので、僕のテンションが上がる情報も少し聞いてみることにしよう。

「あ、それじゃあ。この近所で来週発売のゲームが確実に手に入るお店を教えてよ」

『……いいけど。そんなんでいいの?』

「……え? できんの? 神じゃん」

『……神だよ? 全然反応が違うね君』

 僕は攻略君の有用性をまだまだなめていたようだ。素晴らしい。

 評価が爆上がりしたというのに攻略君としては釈然としない様子だった。
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