宇宙の果てで謎の種を拾いました

くずもち

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第39話こんなすごい奴作れる俺スゲー理論(諸説あり)

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「うわ……これは」

 白熊さんが格納庫に収容したアウターを見て僕は声を上げる。

 激しい損傷のアウターは、今まで以上にひどいありさまだった。

 救難信号こそ出ているが、中に人間がいたとして生きているとも思えない。

「ハッチ歪んでる……無理やり開けるよ」

 僕のアウターに搭載されたプラズマカッターで強引にロックを解除したが、空気も冷気も出てこなかった。

 ああ、これはダメかと考えていると、中から出て来た人型を見て、僕は声を上げた。

「……こう来たか」

 鮮やかな黄色い髪に、黄色いスーツからは機械の回路が見えている。

 僕はこういう人型を日常的に見ていて、よく知っていた。

 蘇生の準備を整えていたフーさんと、白熊さんがヒョイと中を覗きこんでくると、おおっと声を上げていた。

「え? 女の人……ではあるけど。これってアンドロイド?」

「噂をすればだよ……AI人種のオペレータータイプだね」

「めちゃくちゃ精巧じゃないか。アンドロイドは見たことあるけど、ここまで人間に近いのは初めて見る」

「うん。まぁ新しい人類を生み出したってコンセプトだから人間型の素体もいるんだ。オペレータータイプは特に女性型が多い。女性の声と見た目は男女問わずに安心感があるんだってさ」

「えー? ホントにー?」

 そんな感じでコミュニケーションが多い場所では女性の人型が良く使われている。と聞いていた。

「オッパイ大きいのも?」

「それは関係ない」

「このメガネはどうなの?」

「……外付けのデバイスでは?」

 いやまぁ。ちゃんと男性型もいるんですよ? 何なら無性もいるからね?

 ピカピカ光りながら動かないオペレータータイプの周囲をグルグル飛んでいたシュウマツさんはずいぶん感心していた。

「これはすごい。人形……みたいなものに見えるが動くのだね」

「もちろん。それにしてもピンポイントでオペレータータイプとは」

 僕は特別人間に近い上に、性能がかなりいい機体に可能性を感じた。

 しかし彼女の様なAI人種が、敵対することもある月人や地球人からあまりいい印象を抱かれていないのなら、ちょっとまずいかもしれない。

 そんなことを知らないシュウマツさんは色々な視点の情報が欲しかったのか今度はフーさんに尋ねていた。

「彼女の様なモノは、月では普通なのかね?」

 するとフーさんは視線をさ迷わせて、いやいやと首を横に振った。

「普通じゃないね。コロニーだけだと思う。えっと……怒んないで聞いてよ?」

「もちろん」

「月では“悪あがき”って言われてるよ。自分達が劣った人類だって認められないから、私達より優れた者を生み出したって言う実績が欲しかったんだって。基本、新しい人類とは思われてない」

「月はいつだって剛速球だなぁ。いや、そう言う側面もなくはないのかもしれないけど」

「どういうことだろう?」

 ぐいぐい好奇心に突き動かされるシュウマツさんに、僕はため息混じりに説明した。

「宇宙に進出して環境が変わったら、人類は進化するのかって論争はずっとあったんだよ。でも実際月人や、地球人みたいな人が出てきて新人類って認められるとだね、じゃあどっちが優秀なのか、自分達は劣ってるのか? って話も盛り上がっちゃって」

「それは極端な話じゃないか?」

「そうそう。進化って適応だからさ、優劣じゃなくて、向き不向きの話だと思うんだけどね。でもとある一派がすごく高度なAIを開発して。実際それはすごく優秀だった」

「それは進化とは関係あるのかい?」

「直接はないよ。でもこれがすごく便利で一瞬でスペースコロニー中に広まったんだよ」

 人間と完ぺきにコミュニケーションが取れ、ネットワークを使った優秀なサポートができるAIはすぐに生活になくてはならないものになった。

 今では一家に一台レベルで出回っているのだから、その優秀さはうかがい知れる。

「すごいじゃないか」

「うん、実際かなりすごい。でもその後『ここまで高度に成長したAIはもはや新しい人類と呼べるのではないか?』って言いだした人達がいて、これまた妙に盛り上がっちゃって、あれよあれよという間に出来上がったのが『AI人種』って言葉なわけ」

 そして今となっては、コロニーの防衛戦力に彼らが使われているんだから、戦ったことがある方からすればいいイメージがないのも無理からぬことだった。

「ああ、でも。地球じゃイメージ戦略成功してるよ。実際こいつら強いって評判だし」

 白熊さんはすでに不要になった医療キットの片づけを始めながら、付け足す。

「月でも悪く言われてるのは、AI兵器が強いからだしね」

 フーさんは戦った経験でもあるのか、強さを認めていてプルリと震えていた。

 AI人種という、超AIとでもいうべき高度なデータは、現実に応用してもとにかくミスをしない。

 人間の感情の機微にすら対応して見せたAIは、戦わせても強かった。そう言う話である。

「僕が乗ってた実験船にも乗ってたくらいだからね」

「え? ということは完全にミスをしない訳でもないのだね。君の宇宙船は吹っ飛んだわけだし」

「いやーまぁね。……うん、とりあえず本体に外傷はなさそうだ。電源切れてるだけみたい。起ち上げるよ」

 僕はひとまずスリープモードを解除してみる。

 すると瞳を開けて、ゆっくりと立ち上がった女性型のアンドロイドはキュインと音を立てて瞳を光らせると、僕に向かって頭を下げた。

「おはようございます。初めましてオーナー。ようこそAI人種の世界へ」

「あ、初期化されてる」

「「……」」

 なんというか、新人類の方々からの視線が痛い。

 いや、本当に優秀なんだよAI人種。
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