宇宙の果てで謎の種を拾いました

くずもち

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第46話白熊さんのレストラン

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「ハーブかー。なんに使おうかな?」

 僕は今度は白熊さんのところに向かうことにした。

 そろそろ場所は決まっているはずだが、シュウマツさんの仕事の早さなら、もう終わっていることは十分考えられる。

「大丈夫かな? オペ子さん? ナビをお願い」

『了解しましたカノー様。作業はでに終了しています』

「早いなぁ。なら新築祝いでも持って行かなきゃかな?」

 オペ子さんからの返事はすぐに帰ってきて、位置情報が送られてきた。

 みんなうまい具合にやれているようで何より。僕はさっそく白熊さんの家を尋ねてみることにした。



「よく来てくれたね! まさにベストなタイミングだったよ! どう! この見晴らし! 最高だろ?」

 白熊さんが家を建てるのに選んだ場所はとても見晴らしの良い丘の上だった。

 自慢するだけあって、僕はその見晴らしに感嘆する。

「こんな場所があったんだ……コロニーなのに豪快だ」

「本当に。シュウマツさんの御業って感じだね」

 どうやら大分気合を入れて場所を探したらしい白熊さんだったが、建物にもかなりこだわりが見えた。

 まずしっかりとしたテラスが目を引いた。

 陸からの眺めが良い場所は全面ガラス張りで、風景を堪能出来るのは僕的にもポイントが高い。

 室内には沢山のテーブルまで並べられていて、まるでそれはレストランのようだった。

「オシャレな建物だ……」

「それはもう。図面なんて何回もオペ子さんと直したしね」

「それは大変だったんだろうなぁ……」

「大変だったねぇ……」

 実際出来たのが、きちんとした良い建物なのだから、これはオペ子さんの手柄だと思う。

 僕じゃあとてもイラストからここにたどりつくことは難しいと思うので。

 顔を見れば満足だと言うことはよくわかるから、完成は素直に喜ばしい。

「おめでとう。レストランみたいにしたんだね」

「作った料理をここで振るまうのが目標さ。料理は好きなんだ。本格的な器具も揃える予定だから、今度はサバイバル料理じゃなくて、もう少し凝った料理だって披露できるはずだよ」

 白熊さんは料理が趣味らしい。

 そう言うことなら僕は今ちょうど良い物を持っていたので、白熊さんに差し出した。

「それなら、これあげるよ。フーさんからもらった異世界ハーブ」

「へぇ! それはいい! 見せてもらってもいいかな?」

「もちろんどうぞ?」

 白熊さんはにこやかにハーブの瓶を受け取って、その匂いを嗅ぐ。

 喜んでもらえてそのうち料理を食べさせてくれれば満足だったんだけれど、白熊さんは見てわかるほどに顔色を変えた。

「……これって、バジルじゃない?」

「え? 異世界ハーブって言ってたけど。……ああ、この匂いバジルっぽいかも?」

「そうだよね! やったー! これイタリアンいけるな!」

「そんなに嬉しい?」

「もちろん! いやー夢が実現できそうだよ!」

 はしゃぐ白熊さんは、ずいぶんイタリア料理に思い入れがあるようだった。

「イタリア料理好きなの?」

「ああ好きだ。フレイバーの中では断トツだね……」

 あえてフレイバーとか言っちゃう辺り、若干の闇を感じる。

 ここから先は地雷原か? とは思いつつ、踏み込んでしまった以上、迂闊に出られないのも厄介だ。

 迷っている間に、白熊さんは語りだした。

「地球じゃ、生野菜は高級で中々でね。育ててない訳じゃないんだろうけど、残念ながらボクの口に回ってきたことはない……」

 拳を震わせる白熊さんは、絞り出すように溜まっていたものを吐き出し始めた。

「ボクは言いたい……日持ちするからってなんでもかんでもペースト状にするんじゃないと! これなら凍ってても食えるだろ? じゃないんだよ! こっちは温かいものが食べたいんだ!」

「そ、そうだよね」

「知ってる? 地球にはね? 味だけ残ってる食べ物ってあるんだよ……。イタリアン味、コンポタ味……。いや、うまいけど! せめて現物一回くらい食わせてくれよと! データじゃ腹は膨れないんだぞ!」

「そ、そうだね……その通りだ」

「なのに昔から人間ってやつは料理のレシピだけは沢山残していてさ。そのほとんどが再現不能だった……。しかしこのコロニーには、生の野菜が存在する! そしてボクは見つけてしまった! 小麦にトマト、そしてオリーブを! 念願のイタリアンを再現する日も近いだろうね! ちなみにピザ窯はもう作った!」

「早くない?」

「君の家にもあったじゃないか。ちょっと見ていってよ!」

 一転して上機嫌になった白熊さんは、僕を自作のピザ窯まで案内した。

 丸いドーム型のピザ窯は本格的な物で、どれだけ大きなピザを焼くつもりなんだと僕は不安になった。

「ほげー」

 そしてもう一つ、聞いたことのある声が窯の奥から聞こえてくる。

 なんだろうと僕は窯の中を覗き込んでみると、大きなトカゲがこちらに手を振っていた。

「……気に入ったのならよかった。温度管理よろしくね」

「ほげー」

「いい窯だろう? これならおいしいピザが焼けると思うんだよ」

「確かに……これからやってみる?」

「いや! いきなり上手に使えるわけないから、パンとか焼いて練習する予定だね。ボクは必ずこの家のテラスでピザとワインでディナーを食べるんだ」

 なるほど、練習は大事である。

 そして夢のために、これからどうにかしてワインにも挑戦する気配がする白熊さんは中々チャレンジャーだ。

 理想の食卓までには、まだまだ時間がかかりそうだなとは思ったが、そんなことは白熊さんが楽しそうならどうでもいい話だった。

「いいね、その時はぜひ一度ご招待いただきたいな」

「もちろん! 一度と言わず何度でも……というかたぶんしばらくは食べるものは死ぬほどあるから、消費に協力してほしい。お土産に作ったベーコンも持って行ってね?」

「了解。うんでも、みんな順調そうで何よりだ。フーさんも森の植物調査を頑張っているみたいだし、あれならもっと面白いハーブもすぐに見つけてくれそうだったよ」

「ホントに? それはボクももっと張り切らなくちゃな。じゃあそろそろ行くね」

 白熊さんは理想を語り、テンションが上がって来たらしい。

 そう言い残すと外に歩いていった白熊さんは、アウターに乗り込んだ。

「さて、気合入れていこうか……」

「……」

 アウターに乗り込んだ白熊さんは巨大化して、ビコンと赤い輝きが目に宿る。

 目が光るのは、狂戦士化の魔法のせいだそうだ。

 豹変したでっかい剣と盾を担ぐ白熊さんは、ワイルドな笑みを浮かべて、僕に手を振る。

「ちょっと一狩り行ってくる。ベーコンもサラミもまだまだ作っておきたいからね。あ、お土産の自家製ベーコンは厨房から持って行ってね」」

「……いってらっしゃーい」

 僕は白熊さんの逞しい背中を見送った。
 
 これは近いうちに、本格的な、ペーストでもフリーズドライでもない保存食の山が出来上がるのは期待してよさそうだ。

 新築祝いは、コロニー式の最新調理器具なんかいいかもしれないなんて考えながら、僕も頑張ろうと席を立った。
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