宇宙の果てで謎の種を拾いました

くずもち

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第60話冥界エレベーター

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「ちょっと待ってね……準備はしてたんだ……」

「その準備今からいる?」

 疑わし気な白熊さんだったが、ここにきてその認識は甘すぎると言わざるを得ない。

 もちろんいる。

 コロニーの中枢に僕らはアウターで向かう。

 わずかでも嫌な予感がする時はやりすぎくらいがちょうどいい。

 まぁだいたい何をどう準備したって手も足も出ないんだから、気休め程度の話である。

 白熊さんが持っている大型の槍は、狩り用に作った新装備だった。

 重量をアップし、槍の柄の部分に更なるブースターをくっつけたそれは槍の形をした外付けの推進装置となることだろう。

 手渡した槍を見て、白熊さんはボソリと呟いた。

「ねぇこれ……使ったらボク星にならない?」

「そうなりそうなら、手を放してね」

「無茶言うなぁ君も」

 僕もそれはそう思うけど剣の方も大概な武装だったから、それ以上となるとどうやったって変態的な武装になる。そう言う話である。

 ひとまずこれで準備は出来たということにしておこう。

 僕と白熊さんは大きめに作られた資材搬入路から、オペ子さん宅、通称『植木鉢の底』に乗り込んだわけだが、いざ行ってみると侵入は簡単だった。

「……なんかすごく改造されてない?」

「この間までこんな大きな扉はなかったと思うんだけど?」

 もっとこじんまりしていたはずのオペ子ハウスがなくなっている。

 代わりにあったのは、目新しい巨大な自動扉だった。

 気になるのは扉の横に上下を示すボタンがあることだろう。

「これってひょっとして……エレベーター? 家を潰してエレベーターにしたってこと?」

 僕が扉を感心して眺めていると、シュウマツさんはあきれ声だった。

 前に見た時は螺旋階段だったはずだが、オペ子さん的には納得できなかったということか。

「……階段の方がかっこいいとは思わないかね? いや、今はいいか。しかしなるほど。さっそく権限を存分に使っているようだね」

 シュウマツさんが唸っているところを見ると、全ては完全にオペ子さんの仕事であるようだった。

「改装に時間がかかんないのは毎度のことだけど反則が過ぎるよ。これ本当にシュウマツさん知らないの?」

 白熊さんにも問い詰められていたが、シュウマツさんは何かしていたことだけは気が付いていたようだった。

「足下でやっているんだからまったく知らないということはないが……何をやっていたのかまでは本当に知らないね。まぁオペ子がやった」

「なら……そんなに無茶には作っていないのかな?」

 僕はAIでもあるオペ子さんに一定の信頼を置いているわけだが、シュウマツさんはなぜか妙に光量を落として冷静に言った。

「失礼な。私だって別に無茶なものは作らないだろう? それに……今回のオペ子が無茶じゃないと今から決めつけるのは早計だね」

「……ホントに?」

 シュウマツさんが不安になるようなことを言うけれど、気持ちが揺れる理由はそれだけではなさそうである。

 さっきまでワクワクした様子だった白熊さんは、エレベーターを前にして感じる得体の知れない雰囲気に、戸惑っているようだ。

 かく言う僕だって、一度体験していなかったらもっと戸惑っていたと思う。

 それくらい、ただのエレベーターの扉は異様な雰囲気を漂わせている。

 口では説明しにくいが、前に立つと鳥肌が立つ感覚は、他にはない物だった。

「なんかこう……よくない空気ってやつを生まれて初めて感じるかもしれない」

「生き物には酷な空間だから、君達はあまりいい気分にはならないかもしれないね。オペ子は上にいるようだから、さっそく行ってみようか?」

「ああうん。……そうしよう」

 比較的平気なシュウマツさんに導かれ、僕らは扉からエレベーターに乗り込む。

 エレベーターにはアウターが余裕で乗れる広さがあったわけだが、何のためにこれが必要だったのかとても気になった。

 ゴゴンと一揺れして、僕らを運ぶエレベーターはすぐ真上のはずなのにずいぶん長く動いていた気がした。

 チーンと音がして再び扉が開くと、僕は不安を拭い去る様に出来る限りにこやかに呼びかけた。

「オペ子さーん。いるー?」

 のだが……返事を聞く前に思わず言ってしまった。

「うわ……これはまた無茶苦茶したなぁ」

「だろう? ちょっと見ぬ間にずいぶん様変わりしたものだ」

「これ本当にコロニーの中? いくら何でも広すぎない?」

 エレベーターの扉が再び開いたら、そこは何もないなんてことはなく、それどころか広大な金属の床が一面に広がる無機質な高層ビルがいくつも立ち並ぶ整然とした都市だった。

 そして都市には動くものがいる。

 僕は偶然目の前にいた、人間よりはるかに小さい人型二足歩行のロボットと目があった。

「あ、こんにちは」

 ロボット相手にいきなり挨拶もなかったかもしれない。

 しかし僕の挨拶を聞いたロボットは、ペコリと頭を下げて一声鳴いた。

「ムナー」
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