宇宙の果てで謎の種を拾いました

くずもち

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第76話迎えに来たよ

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 光がこちらにやって来る。

 宇宙の暗闇の中で向かってくるそれを見た時、フーさんは最初コロニーの攻撃かと思った。

 もちろん、攻撃だと思ったのはフーさんだけではない。

 コロニーの機体は回避行動をとり、F2に至っては死を覚悟して硬直しているのが伝わって来る。

 しかし真っすぐフーさんめがけて飛んでくる光からは不思議と敵意は感じなかった。

「―――」

 届いた光は体を焼くかと思っていたが、とても暖かい。

 痛みどころか癒しすら感じることにフーさんは驚いて閉じていた瞼を開くと、まったくと言っていいほど理解不能なことが起きた。

 フーさんのアウター“アーネラ”はその装甲のダメージが一切消え失せていたのだ。

 いや、それどころかまるで生まれ変わったように全く新しい機体へと変化していた。

「なにこれ??」

 透き通るような青い装甲に、大きく広げた鳥の様な翼が目を引く。

 そして何よりフーさん自身が、今までと何か違うことを感覚として強く感じていた。

「ひょっとして……ルリ?」

『クエ!』

「そっか……迎えに来てくれたんだ。ゴメンね?」

『クエエ!』

「そこはありがとうだろうって? そう……そうだね。ありがとうルリ」

『クエ!』

 フーさんの心は、温かいものに満たされる。

 それはたぶん、迎えに来てくれたルリの安堵の気持ちをしっかりと感じたからだろう。

 脳の機能として思考を読むのとはまた違う、心が通う感覚にフーさんは一筋涙を流した。

「ああ、うん……すごいね。頭の中を覗くだけじゃわからない感覚って本当にあったんだ。心なんて、昔の人が考えた迷信だと思ってたよ」

 ただし今の自分が掴んでいる奇妙な感覚は、抽象的な感情だけではないという妙な核心もあった。

 ルリが来てくれたことで、多少の混乱はあったが状況に大きな変化はない。

 相変わらずフーさん達は囲まれていたし、戦力は完全に不利だろう。

 なのに―――負ける気がしない。

 体と一体化したようなアウターから溢れ出るのは、とても大きな力そのものだとルリが教えてくれているから。

 AI達は銃口を構える。

 並ぶ銃口に視線を向けて、フーさんはクスリと笑った。

 チカチカと光る閃光は、本来であればこんな角度で目にすれば死体になるのがセットなのだろうけど、今は銃弾の方が自分を避ける。

 手を伸ばして、弾に行ってほしい方向を指し示すだけでいい。

 抵抗なんてないはずの空間に抵抗が生まれ、まっすぐ飛ぶことしか出来ない弾はグインと弧を描いて、撃った本人に返る。

 撃った数と同じだけの銃弾の雨に敵の機体は対応できずにのけぞった。

 咄嗟に出来る気がして自分でやったはずなのにあまり実感がなく、フーさんは自分の手のひらをマジマジと眺めていた。

「うわ……今私なにしたんだろ? ―――でも、これならどうにかなりそうだよね?」

 フーさんは、敵の機体群に視線を走らせる。

 そして指揮官機と思われる一機に目星をつけ、距離を詰めようとして―――一瞬で目の前に移動した。

 いきなり視界が切り替わったように間近に敵が現れ、さすがにフーさんもヒヤッと心臓が凍ったような感覚を味わった。

「……ウソ!」

 敵の指揮官機はこのイレギュラーに対応して、すぐさま反撃に移ろうとしたのはさすがである。

 しかしフーさんに頭にそっと手のひらを当てられた時点で、勝負はついていた。

「戦いはおしまいにしよう。お家に帰りなさい。私も帰るから」

「―――」

 フーさんの命令は、驚くほどスムーズに上書きされる。

 AI達はさっきまでの容赦のなさが嘘のように動きを止めて、反撃を中止した指揮官機は、すぐさま他の機体と共に撤退を始めた。

 驚くより、戸惑うより先にフーさんは喜び、その場から動けないでいるF2に大きく手を振る。

「じゃあね! もう捕まっちゃダメだよ! 私帰るから!」

「!」

 返事は待たない。

 妙な縁だったが、助けたんだから後は無事家に帰ることを心配するのは二人共に同じだった。

「行こうルリ! ニライカナイコロニーへ!」

 翼を広げ、フーさんは跳躍する。

 揺らいだ空間を突き抜けて、走馬灯にまで見たスペースコロニーは目の前に現れた。

「ついた! よかった……!」

 なんだか、自分の目で見るとじんわりと実感が湧いてきて、涙が滲んだ。

 けれどフーさんは自分を見上げる旧式のアウターに気が付いて、最高の笑顔に上書きされた。

「おかえり! よかった!」

「ただいま! ダメかと思ったけど帰ってきちゃった!」

 きっと向こうに無事たどり着けたのは、運の要素が強かっただろう。

 ひょっとすると、せっかくの帰還のチャンスを棒に振ったと言う人だっているかもしれない。

 だけどこの瞬間をフーさんは単純に喜んでいたし、今はそれで十分だった。
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