俺と蛙さんの異世界放浪記~八百万ってたくさんって意味らしい~

くずもち

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8巻

8-3

 ハサミによってリンゴが真っ二つに切り裂かれ、魔法が発動。お姫様の顔を熟したリンゴのようにするはずだった風圧が床を吹き飛ばした。

「きゃっ!」
「……チッ」

 アップルちゃんは舌打ちして、完璧に終わるはずだった仕事に味噌をつけた相手をにらみつけた。
 視線の先にいたのは小人である。自分の背丈よりも大きなハサミを構えて、アップルちゃんに吠えかかる。

「誰だお前は! この娘に近づくんじゃない!」

 ターゲットとアップルちゃんとの間に入り込み、王子様気取りである。
 アップルちゃんは怒った。そして軽くため息を吐くと、目の前の小人を見た。
 暗殺者としての仕事はすでに失敗していると言えた。であるならば、ここからは彼女の趣味に走ることにする。
 バスケットから取り出したのは大きく刃のゆがんだ刃物。このククリ刀はアップルちゃん愛用の武器である。刃先にリンゴを突き刺して、彼女は言う。

「……仕方がない。遊びましょう。私のことはアップルちゃんって呼んでね?」

     ◇◆◇◆◇


 俺がその場に駆けつけた時、すでにことは起こっていた。

「……えー。何でこんなことになってんの」

 ハサミ君が何者かと激しい戦いを繰り広げ、家は完全に崩壊していた。

「……楽しい、アップルちゃんぞくぞくする」
「……なんだあのホラー映画に出てきそうなやつ」

 バスケットを持った黒い頭巾の女の子が、曲がった刀物を振り回し、何やら超人的な動きで飛び回っている。
 俺にそのまま聞こえるということは、「アップルちゃん」という名前はあだ名なのだろう。
 気の毒なのは、ここの家主の小人達である。彼らは家の惨状にショックを受けていた。

「ぎゃー! 家が!」
「何でこんなことに……」
「なんなのよこれ!」
「大変なことになった……」
「派手に壊してまー」
「修理大変だー」

 大きなハサミを振り回すハサミ君が、周囲の床に切り込みを入れ、そこから新たに植物を芽吹かせていく。植物を爆発的に成長させるというこの能力は、ハサミに込められた特殊な魔法らしい。
 ハサミ君は、周囲に棘々とげとげしい林を作り出すと、自ら退路を断った。

「来い……ここから先は行かせない!」

 相手は、もちろん黒い頭巾を被った幼い少女である。頭巾の下の白髪のおかっぱ頭から覗く表情は、笑顔だった。

「……生意気」

 アップルちゃんは襲いかかる枝のむちを華麗すぎるステップでかわす。そうしながら距離を詰めていく姿はどう見ても素人ではない。
 刹那せつな、ハサミの攻撃をかいくぐり、彼女の拳はハサミ君の小さな体を捉えてめり込んだ。

「かは!」

 さらにそこから流れるような罵倒。

「……遅い、弱い、チビ!」

 明らかに手加減された一撃だったが、それは彼女がそれで十分だと判断したため。
 しかし、その目算は外れる。
 ハサミ君は相手をしっかりと見つめたまま立ち上がった。

「……チビで何が悪い」

 声はかすれていたが、確かにそう言った。
 アップルちゃんの耳にもその言葉は届いていたが、まるで聞こえていなかったかのように首をかしげた。

「?」
「ボクはあの子を守るんだ……チビだからなんだって言うんだ。誰からだって守るんだ」

 ブツブツと呟くハサミ君の瞳から闘志は消えていない。それは相手に伝えるためというよりも自分自身に言い聞かせているようだった。
 彼の中にある決意。それが彼の口から漏れ出ているのだろう。

「ハサミ君……」

 なんだか俺も感動してしまう。そして心動かされたのは、俺だけではないようだ。

「あれ? 小人はどこに行った?」

 気がつくと、俺の周囲にいたはずの六人が消えていた。セーラー戦士があわてて崩れた家の方を指さす。
 そこには農具を振りかざして、少女に襲いかかろうとする小人達の姿があった。
 ジョウロから撒かれた水が、植物を青々しく茂らせ、彼らの道を作っていく。

「一人でやるなよ! ……ハサミだけじゃ大したことできないだろ!」

 クワが地面をえぐると、盛り上がった土が一斉に少女に襲いかかった。

「そうだ! 何やってんだ!」

 スコップが地面に突き刺されば、大地が陥没し崩壊しかけていた家をまるごと呑み込む。

「怪我したら悲しい……」

 それを避けて襲いかかるアップルちゃんをカマが迎え撃つ。一ぎしたらアップルちゃんの服の一部が崩れ落ちた。

「もう水臭いんだから!」

 そこに待ち受けていたのはなたである。鉈が周囲の育った木の枝を払い落とすと、木製の人形になってアップルちゃんに襲いかかっていく。

「まったくもう知らないよ……」

 つるはしが地面を撃った瞬間、地面が爆発してつぶてが少女に降り注ぐ。

「だいじょうぶ! みんなでやればこわくない!」
「おお、お前ら……」

 ハサミ君の前に勢揃いした六人の小人達。ハサミ君は腕で涙をぬぐって、再び立ち上がった。そんな光景を俺は感心しながら見ていた。

「……すごいな森の小人さん。侮れない」

 森にかけられていた結界の規模からしても、相当な実力者だとは思っていたが、彼らの道具はかなりの力を秘めているようだ。七つのアイテムがそれぞれの能力を引き立て合っていた。
 しかし問題なのは彼らの力をもってしても敵わないほど、アップルちゃんが強敵だということだろう。

「……また増えたの? アップルちゃん悲しい」

 そう言いながらも、アップルちゃんは今の小人達の猛攻をほとんど無傷でかわしきっていた。
 俺が遠くで彼らの戦いを観察しているうちに、セーラー戦士は白雪姫を抱きかかえて保護していた。
 白雪姫がセーラー戦士に礼を言う。

「あ、ありがとうございます……」
「いや、気にしないで」

 抱え上げた白雪姫をやんわりと地面に降ろすセーラー戦士。その姿は正直憎いくらい絵になっていた。
 ともかくこの白雪姫、近くで見るとなおべっぴんさんである。顔がすごく小さい。
 それはさておき、俺には最初にどうしても言っておかなければいけないことがあった。

「ではまず……君のこと『白雪姫』って呼んでいい?」
「え? えっとそれはどういう意味ですか?」

 突然、意味のわからない話をされて白雪姫は戸惑っていたが、多少強引にでも押し切らせてもらうとしよう。

「愛称だよ。ちょっと人の名前が聞こえなくなる呪いにかかっていてね。付き合ってくれると助かる」
「はぁ……そういうことでしたら」

 これで了承を得た。
 すでに戦う支度を整えていたセーラー戦士は、呆れ顔を俺に向けた。

「直接呼ばなきゃいけないってことはないでしょうに。太郎、その子に怪我させないでよ?」
「させるわけないだろ?」

 むしろ怪我をさせる方が難しいと認識してもらいたいものだ。
 セーラー戦士は、改めて白雪姫に挨拶した。

「はじめまして。私達は旅の者なんだ。君が小人達の言っていた人間だよね?」

 白雪姫は緊張しているらしく声を上ずらせながら答えた。

「ええ、そうだと思います。ごめんなさい、私最近目が見えなくなったばかりで、それに殿とお話しするのに慣れていなくって」

 悪気のない白雪姫の「殿方」という言葉で、びしりとひびが入る音が聞こえたような気がした。どこにと言えば、セーラー戦士の乙女心、である。

「ぶふっ……」

 俺が思わず吹き出してしまうと、セーラー戦士が睨んできた。

「何笑ってるのさ……ええっと、いちおう訂正しておくと、こっちの太郎って魔法使いは男なんだけど、私は。大したことではないけどね」

 きっと大事なことなのだろう。「女だから」が気のせいか強調されていた。十分意図は伝わり、白雪姫は大いにうろたえていた。

「ごごご、ごめんなさい! 私ったら、勘違いしてしまって! よく聞いたらとても綺麗な声なのに……」
「気にしないで。男の子っぽいって昔からよく言われてたから。少しは落ち着いてきたかな?」

 今のやりとりを生かして白雪姫を落ち着かせると、セーラー戦士は依然として激闘を続ける七人の小人と暗殺者の方に目を向けた。

「さて、じゃあ私も加勢に行ってくるよ。彼女のことは任せたから」

 だが、セーラー戦士に戦わせるのはよくない。俺はとっさに彼女のポニーテールを捕まえた。こくんと後ろ髪を引かれ、セーラー戦士は俺の手を荒々しく振り払う。

「うわ! なに!?」
「行っちゃダメだよ」
「なんで!」

 俺だって助けたいとは思っている。しかし困ったことにハサミ君の決意が、俺が手を出すことをためらわせていた。

「何でって、ハサミ君達はこの子を自分で助けたくって、ああやって体を張ってるんだぜ? 俺達が出張ったら全部茶番に終わるだろう?」

 白雪姫を守りたいという言葉が、俺には彼の願いのように聞こえたからだ。他の仲間達から力を借りるのはよくても、俺達完全な部外者が手を出すのはよくないだろう。
 そして相手の少女にしても、謎の魔法使いに負けて帰るのと、本来の守護者である七人の小人に負けて帰るのとでは、また意味がまるで違うのである。
 七人の小人達の方が優勢かと思われたが、しかし相手もさるもので、魔法の園芸用品を操る小人達の猛攻を完全にしのいでいた。

「本気でやるなぁ。子供にしか見えないのに」
「ただの子供じゃないよ。動きが違う。そうじゃなかったら私も手伝おうなんて言わない」
「……そうなんだ」

 小人達の猛攻を防いでいるだけでもすさまじいのに、セーラー戦士にそこまで言わせるほどだったか。
 物騒な音が続く中、白雪姫はおろおろとうろたえて混乱しているようだった。

「あ、あの……いったい何が起こっているんですか? 小人さん達は?」
「小人達は戦ってるよ。君を狙っている奴と」

 彼女の質問に答えたのは俺である。ここまで大事になってしまったのだから、狙われていることを隠しておく必要はない。
 それに自覚がないわけがない。俺の推測は当たっていたようで、白雪姫は顔を強張らせた。

「狙っているって……あの物売りの女の子がですか?」
「そうだよ。あの子は君を狙ってきた刺客だったんだ」
「そんな……じゃあ小人さん達は」

 白雪姫は、小人達のことを気遣い顔色を蒼白にした。しかし、目も見えず満足に動けもしない彼女にできることはなかった。
 だから俺は、あえてこのタイミングで尋ねた。

「そうだ。実は俺、魔法使いでね。君の意思を確認したいと思っていたんだ」
「え?」

 青い顔のまま声に反応した白雪姫に、俺はハサミ君達との約束を告げた。

「俺は君の目にかけられた呪いを解きたいと思っている。小人達からのお願いでね。それで最後に君の意思を聞けたら、すぐにでも呪いを解いてあげようと思ってる」
「え? ……それは……できることなら治してもらいたいとは……思いますけど」

 それだけ聞ければ十分である。

「わかった。じゃあ治そう」

 そう言って、俺は彼女の手を取った。

「魔法はすでに準備している。さてそれじゃあ……いってみようか」
「……ま」

 白雪姫の手が震え出したと思ったら、なぜか俺は突き飛ばされていた。

「待って!」

 突き飛ばしたのは他の誰でもない、白雪姫である。
 俺は目を丸くしていた。

「ど、どうした? 手を握ったのがまずかった?」

 年頃の女の子に派手に拒絶され、俺は軽く傷ついた。
 だが、突き飛ばした当人である白雪姫も、自分の行動が信じられないらしく両手を見つめている。

「違います……ごめんなさい。でもなんだか怖くって」
「俺がかな? 俺がなのかな?」

 白雪姫は小声だが、はっきりと拒絶の意思を示した。そりゃあ、よくわからない自称魔法使いが突然やってきて、君の目を治してあげるぜ? なんて言ってきても怖いとは思う。
 白雪姫は、精神的ダメージが心に響いている俺に慌てて両手を振った。

「ああ! 違うの! 貴方が怖いとかそういうのじゃなくって。ごめんなさい、急に、その……また目が見えるようになることが怖くなって……」

 彼女はそれから先を口にするのをためらっていたが、しばらくしてうつむき加減に話し出した。

「目が見えない状態は怖いわ。でもそれ以上に……見えてしまう方が怖い」
「あー……」

 白雪姫の言っていることは、理解できなくもなかった。
 彼女は殺されかけたのである。彼女が生き延びたのは運が良かったからとしか言いようがない。目が治れば、そうした怖い現実と向き合わなければならなくなる。
 小人達が彼女を保護してどれくらいの時間が経ったのかは知らないが、まだ事情すら聞き終えていなかったくらいだ。ショックから立ち直れるほど時間は経っていないだろう。

「願いを叶えてくれるというなら……私をこのまま眠らせてほしい。そうすれば小人さん達も傷つかずに済むかもしれない」

 ネガティブな白雪姫は、そんなことまで言い出す。
 その時、セーラー戦士が、白雪姫の顔を覗き込んで語りかけた。

「――本当にそれでいいの?」
「え?」
「殺されそうになったり。居場所を奪われたり。そんなふうにして君以外の誰かに、君の人生を決められて、それで満足なのかな?」
「それは……」

 セーラー戦士の言葉は問いかけているようだったが、少しだけ怒っているようにも聞こえた。また、セーラー戦士自身に向けた言葉のようでもあった。

「私なら世界中から批判されても、大切なことは自分で決めたいよ。じゃなかったら、私は何のためにここにいるのかわからない。君はどう? 誰かの言う通り、このまま死にたいと思っている?」
「……そんなことない、けど、もう私には何も残っていないわ」

 白雪姫は自分の手を胸に当てた。その手は小さく震えている。
 セーラー戦士にも、白雪姫の状況はわかっているだろう。しかし彼女は言葉を止めなかった。

「確かめたの?」
「確かめたわけじゃないけど……」
「じゃあ。確かめに行きなよ。本当に君の居場所がなくなっているのか? なんで君の居場所が奪われなければならなかったのか? すべてを諦める前にあなたがすべきことはいくらでもある」
「でもそのせいで、また私の周りの人が不幸になるかもしれない」
「かもね。でもそれでもいいんじゃないかな?」

 あっさりとそう言うセーラー戦士に、白雪姫は声をあららげた。

「よくないわ! ちっともよくない!」
「でも君の友達は、何より君が不幸であることが許せなくて今戦っているんじゃないかな? それに、小人達は君の代わりに傷ついているんじゃない。彼らが守りたいから戦ってるんだよ。君は何もかもなくしたかもしれないけれど、新しい友達はいるじゃないか。そして目を取り戻すチャンスもある。だからさ……だから彼らから目をそらさないであげて。今、何が起こっているのかしっかり見極めてから、君自身でやるべきことを決めてほしい。これから君が何がしたくてどうするのか、それを決められるのは君だけなんだから」
「……」

 いつの間にかセーラー戦士は白雪姫の手を握っていた。白雪姫は黙り込んだままだったが、彼女の手はもう震えていない。
 俺は、白雪姫の言葉を待った。

「……魔法使いさん」

 今度は、俺が白雪姫の手を取った。
 彼女の手は少しだけ冷たかったが、その芯には熱がこもっていた。

「俺はここにいるよ。さぁ願い事は決まったのかな?」
「私の……私の目を治してください!」

 彼女の意思の力は十分すぎるほどに伝わってきた。魔法使いとして力を振るうのにためらう理由は何もない。

「いいとも。それじゃあ、いくよ?」

     ◇◆◇◆◇


 アップルちゃんは苛立っていた。
 妙な小人達が自分の前に立ちふさがり、厄介なアイテムで邪魔をしてくるのだ。また、その七人の連携が絶妙で、こちらとは相性が悪い。

「……本当にしつこい!」

 思わず顔をしかめると、ハサミを持った小人が調子に乗って挑発してくる。

「へっへ! あんた近づかないと攻撃できないんだろう!」
「……この! ビーンズ小僧。リンゴと混ぜて豚の餌にしてやる!」

 アップルちゃんはカゴのリンゴを無差別に放り投げる。リンゴは膨れ上がり、大きな音を立てて爆発した。

「そのリンゴが危ないってことはわかってるんだ!」

 リンゴを迎撃する小人達だったが――それが、狙いでもあった。
 アップルちゃんが悪い笑みを浮かべる。

「……残念。無念」

 アップルちゃんの魔法は、リンゴの内部に作り出さなければならないわけでもなく、ゼロ距離でなければならないわけでもない。威力は落ちるが、遠距離の攻撃も可能なのである。
 アップルちゃんは迎撃の隙間を見極めて、空気の爆弾を小人の中心に放り込んだ。解き放たれる圧力に小人達が弾き飛ばされる。
 一斉に炸裂する衝撃波に対応できず、宙を舞う小人達。

「なんで……リンゴは全部弾いたのに」

 吹っ飛んでコロコロと転がってゆく小人の一人が呟く。
 致命傷には至っていないだろうが、すぐに動けるようにはならないだろう。小人の王子様的活躍ももはやこれで終了である。
 アップルちゃんはニタリと笑い、トドメを刺そうと歩み寄るが。

「やめて!」

 突然かけられたその声に反応して、歩みを止めた。

「……なぜ出てきた? 間抜け?」

 当初、リンゴの餌食えじきとなるはずだったターゲットがそこにいた。
 小人達をかばい、わざわざアップルちゃんの射程圏内に出てきたその娘に、アップルちゃんはすぐさま目標を変更した。


     ◇◆◇◆◇


「だ、大丈夫かな、白雪姫? 行かせちゃったけど」
「いやー、どうなるかわからない……」

 俺達はことの成り行きを見守ることにした。いざとなったら俺だって動くつもりだ。死人が出るのはなんとしても阻止するのが俺の流儀であるからだ。
 それでもやはり、俺達はハラハラしていた。

「……何やってるんだ、逃げて」

 ハサミ君は自分の前に立つ白雪姫に一生懸命そう訴えるが、彼女は動かなかった。それどころか、ハサミ君を優しく抱きしめた。

「大丈夫、私はもう逃げないわ。貴方達に大切なことを教わったもの」

 しかし獲物を前にした暗殺者は待ってはくれない。目の前の光景に、アップルちゃんは不快そうに顔をしかめる。

「……馬鹿な奴」

 そう呟くと同時にリンゴが放たれ、目を閉ざす白雪姫へ飛んでゆく。
 白雪姫は小人達をかばって手を広げると、まぶたをゆっくりと開けた。そして閉ざされていたまぶたの奥から、透き通るような水色の瞳が現れる。
 彼女の目は、視界に映るものすべてを射抜いた。

「!!」

 その瞬間、アップルちゃんは咄嗟とっさに飛び退き、リンゴは空中に静止する。
 否、厚い氷の中にリンゴは閉じ込められていた。
 白雪姫が目を開けた途端、凍りついた世界。
 そんな光景を目の当たりにし、セーラー戦士は絶句していた。

「…………何あれ?」
「マジか……あれはやべぇな」

 俺も、ごくりとつばを呑み込んだ。
 彼女の目が封印されていた一番大きな理由。それが今の現象なのだ。
 呪いを解いた時に、何となくわかっていたが、実際に力が行使されるのを見ると、そのえげつなさは冷や汗ものだった。

「だからなんなのさ! 今の魔法陣も出ていなかったんだけど!」

 セーラー戦士が叫ぶ。
 あれは通常の魔法とは違う。魔法陣はあの瞳の中に刻み付いているのだから。

「ええっと、なんて言ったらいいかわからないけど……要するに魔眼まがんだよ」
「ま、魔眼?」

 聞き返すセーラー戦士。彼女が知らないのも無理はない。あれはなかなか見ることができないレア能力の一つだ。
感想 3

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