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第4話 はじめてのいってきます
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洗面所を出て、彼女の部屋に引き返す。幸い彼女の部屋には全身をうつし出せるほどの大きな姿見があった。
そこで彼女へと疑問をぶつける。
「学校に行こうって、本気?」
「もちろん本気だよ。だって私、皆勤賞ねらってるから」
「でも・・・・・・」
理由になっているのかもわからないような返答に、僕はとまどってしまった。今日はおそらく今日行われるのは始業式のみ。学業への被害が少ない今日のうちに学校を休み、情報を集めまとめておこうと思っていたのだ。
体を奪うような真似をしておきながら言えたことではないかもしれないけれど、彼女はことの重大さをわかっているのだろうかと少し疑問に思う。
「僕はキミがどこの学校に通っているのかも知らないし、人間関係もわからない。そんな状況で僕を送り出して、大丈夫なの?」
「私が大丈夫って言ってるんだから大丈夫」
「キミは、不安じゃないの?いきなり鏡の中に閉じ込められて、体も僕にとられちゃってるんだよ?」
「そりゃ不安だけど、君だって被害者みたいだしね」
あ、とつぶやいて彼女は思い出したようにつづけた。
「自分のこと、僕って呼んでたけど君ってもしかして男の子?」
「そうだけど。やっぱりいやだよね。ごめん」
あやまる僕に彼女は、気にするな、と親指を立てた。
さて、彼女が学校に行けというのならば僕には断わることできない。彼女は僕も被害者のようだと言ったけど、本当は僕が一方的な加害者で、被害者は彼女だけなのだ。 元の体に戻ったときに彼女の経歴に傷がついているようなことがあってはいけない。出欠も、彼女にとってはきっと進路にかかわる重要なことなのだろう。
さいわい、今日必要なものは昨日のうちにに彼女の手によって鞄に詰め込まれていた。クローゼットから夏服を取り出し、鏡の前へと持っていく。彼女の体なのだ、目の届くところで着替えたほうが彼女も少しは安心してくれるだろう。
彼女は、中身の僕が男だと知ってからずっと腕を組んでうんうんうなっていたが、やがて何かを決心したように目を開いた。
「下着なら、見てもセーフ」
僕にはわからないけど、彼女にとっては相当大切な問題だったのだろう。
結局彼女は僕が着替えている間も「あっ」とか「あぁ・・・」といった悲鳴やあきらめのような声をあげていた。
あとは制服のリボンを結ぶだけで着替えが終わる。変なところはないかと確認しようと鏡を見ると、僕がほぼ着替え終わっているのに対して、彼女はまだ寝間着のままだった。そうか、鏡に僕の姿は映されないのか。
「キミは着替えなくてもいいの?」
「いいのいいの、どうせ君以外には見えないしね」
そういう問題なのかな。僕だったら絶対に気になってしまうけど。
むむ、それにしてもリボンを綺麗に結ぶのはなかなかにむずかしい。さっきから何度も結んではほどいてを切り返しているけれど、いっこうにうまく結べる気がしない。こういうときに鏡を鏡として使えないのは不便だな、と少し思う。試しに窓ガラスに姿を映してみようとしたけど、案の定僕の姿は映らなかった。僕はリボンを結びながら彼女への質問を続ける。
「鏡の中はどうなってるの?」
「仕組みはよくわかんない。最初はとまどったけど、意外と快適だよ。お腹もすかないし」
「移動とかはどうやって?」
「うーん、うまく説明はできないけど、君の姿が映ってるものへなら自由に移動できるみたい」
そういって彼女は鏡から窓ガラスへ移動してみせてくれた。
じゃあ、スプーンにでも移動すれば巨人に飲み込まれる人間ごっことかができるかもしれないな。もっとも、それが楽しいかどうかは別として。
そんなことを考えているうちに、学校に行く準備がすべてととのった。不安がないと言えば嘘になるけれど、うじうじ言ってもいられない。
「それじゃあ、行ってきます」
父と母と妹と、そして彼女の、四人分の「いってらっしゃい」が僕の背中を押した。
そこで彼女へと疑問をぶつける。
「学校に行こうって、本気?」
「もちろん本気だよ。だって私、皆勤賞ねらってるから」
「でも・・・・・・」
理由になっているのかもわからないような返答に、僕はとまどってしまった。今日はおそらく今日行われるのは始業式のみ。学業への被害が少ない今日のうちに学校を休み、情報を集めまとめておこうと思っていたのだ。
体を奪うような真似をしておきながら言えたことではないかもしれないけれど、彼女はことの重大さをわかっているのだろうかと少し疑問に思う。
「僕はキミがどこの学校に通っているのかも知らないし、人間関係もわからない。そんな状況で僕を送り出して、大丈夫なの?」
「私が大丈夫って言ってるんだから大丈夫」
「キミは、不安じゃないの?いきなり鏡の中に閉じ込められて、体も僕にとられちゃってるんだよ?」
「そりゃ不安だけど、君だって被害者みたいだしね」
あ、とつぶやいて彼女は思い出したようにつづけた。
「自分のこと、僕って呼んでたけど君ってもしかして男の子?」
「そうだけど。やっぱりいやだよね。ごめん」
あやまる僕に彼女は、気にするな、と親指を立てた。
さて、彼女が学校に行けというのならば僕には断わることできない。彼女は僕も被害者のようだと言ったけど、本当は僕が一方的な加害者で、被害者は彼女だけなのだ。 元の体に戻ったときに彼女の経歴に傷がついているようなことがあってはいけない。出欠も、彼女にとってはきっと進路にかかわる重要なことなのだろう。
さいわい、今日必要なものは昨日のうちにに彼女の手によって鞄に詰め込まれていた。クローゼットから夏服を取り出し、鏡の前へと持っていく。彼女の体なのだ、目の届くところで着替えたほうが彼女も少しは安心してくれるだろう。
彼女は、中身の僕が男だと知ってからずっと腕を組んでうんうんうなっていたが、やがて何かを決心したように目を開いた。
「下着なら、見てもセーフ」
僕にはわからないけど、彼女にとっては相当大切な問題だったのだろう。
結局彼女は僕が着替えている間も「あっ」とか「あぁ・・・」といった悲鳴やあきらめのような声をあげていた。
あとは制服のリボンを結ぶだけで着替えが終わる。変なところはないかと確認しようと鏡を見ると、僕がほぼ着替え終わっているのに対して、彼女はまだ寝間着のままだった。そうか、鏡に僕の姿は映されないのか。
「キミは着替えなくてもいいの?」
「いいのいいの、どうせ君以外には見えないしね」
そういう問題なのかな。僕だったら絶対に気になってしまうけど。
むむ、それにしてもリボンを綺麗に結ぶのはなかなかにむずかしい。さっきから何度も結んではほどいてを切り返しているけれど、いっこうにうまく結べる気がしない。こういうときに鏡を鏡として使えないのは不便だな、と少し思う。試しに窓ガラスに姿を映してみようとしたけど、案の定僕の姿は映らなかった。僕はリボンを結びながら彼女への質問を続ける。
「鏡の中はどうなってるの?」
「仕組みはよくわかんない。最初はとまどったけど、意外と快適だよ。お腹もすかないし」
「移動とかはどうやって?」
「うーん、うまく説明はできないけど、君の姿が映ってるものへなら自由に移動できるみたい」
そういって彼女は鏡から窓ガラスへ移動してみせてくれた。
じゃあ、スプーンにでも移動すれば巨人に飲み込まれる人間ごっことかができるかもしれないな。もっとも、それが楽しいかどうかは別として。
そんなことを考えているうちに、学校に行く準備がすべてととのった。不安がないと言えば嘘になるけれど、うじうじ言ってもいられない。
「それじゃあ、行ってきます」
父と母と妹と、そして彼女の、四人分の「いってらっしゃい」が僕の背中を押した。
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