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序章・タケル篇

冒険前のチュートリアル2と、それから

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 昼飯後の昼空は昨日よりも雲が少ないようで太陽が休憩を求めていた。
 タケルは昼飯を抵抗しながらたいらげると、リュゼに連れられ(引きずって)汗水垂らす訓練場に来たが…
「う、ヴェェェ」
 やはりタケルはまだ胃腸の調子が良くないらしい。
「タケル、午後からの戦闘の授業だが勿論、先生は私だ。厳しくビシバシやるぞ!」
 なぜ誰も彼もが先生役になると張り切るのか?
 そんなリュゼの声にタケルの決まった返事が
「─ヴェェ…」
 その声はゲテモノのボディーブローを食らった胃腸のせいか、リュゼが先生だったのが嫌なせいか、そのまた両方の意味か。
 真意のほどはタケルのみぞ知る。

 タケルの胃腸を整えるのに数分経ったのち、リュゼの青空教室が始まった。
 ただし、黒板は無いものだが。
「まず、タケル。お前の役割はなんだ?」
「役割?」
「自分の役割も知らないのか?ちょうどいい、ステータスを出してみろ」
 そう言われて、タケルは手を叩く。前の時と変わらないステータスが出現した。
「ええと、役割、ヤクワリ、……リュゼ」
「なんだ?」
「『一般人』って、役割か?」
「はぁ?」
 リュゼも乗り出してタケルのステータスを視る。
 体力や、筋力などの幼い基礎ステータスの下に役割の欄には、当然のように『一般人』が居座っていた。
「役割は職なんだろ、『一般人』って職か?」
「いや、ただの人でも一つの取り柄で『農民』や『商人』と付けられることがあるが、『一般人』なんて聞いたことがない」
 そんな首を捻る二人に役割欄から「押して!」の文字が出てきた。
 二つ目のおまけの出番だ。それは──
「ここ、押せるようだぞ」
「お、本当だ」
 ポチっと押した役割欄から別画面が飛び出でた。

『──戦士ソルジャー魔法使いマジシャン格闘家モンク聖職者クレリック槍使いスピアナイト剣士ソードマスター聖騎士パラディン狩人ハンター錬金術師アルケミスト吟遊詩人バード技師エンジニア商人マーチャント鍜治屋ブラックスミス……』
「おぉ、これって…?」
「…どれでも選べるという事ではないか?」
 そう、おまけの二つ目は役割選び放題機能だ。
 初心者のタケルだけの、まぁ特別扱いだが。
「さ~て、どれにしようかな!」
「一度決めたら変更が出来ないと思うから慎重にな」
 タケルが目をキラキラさせて指先を動かす。まるで子供のようだ。
「基本は戦士だろうけど、魔法も使いたいから魔法使いもいいな。他はなにが…」
 そこでタケルの手が止まる。良いのがあったか?

『神…全ての生物の頂点。敵を全知全能をもって鉄槌をを下す。信仰者からの祈りや恵みなどで鬱陶うっとうしい。身体より精神の疲労が多い(笑)。』

 …おまけの中に入れた覚えはないぞ。
「……」
 すぐさまタケルが指を伸ばすがその前に削除する。
「あ、消えた」
 もし、タケルを神なんぞにしたら世界が唯一神教になる。いや、ぼっち神になる。
「……チッ」
 舌打ちを一つすると、また役割探しに戻る。
 数分後。神に成り損なったタケルはようやく気に入った役割を見つけた。
「─やっぱりこれにしよう、これがいい」

上位魔術師ハイウィザード…通常の魔術師ウィザードより強力な魔法が使える。大魔法で全ての相手を灰塵とする。』

 ほぅ、上位魔術師を選んだか。その役割は魔術師より扱いは難しいが、そのぶん多くの魔法と剣が使えるのが美点だ。
 すると、何かの準備を済ませたリュゼが戻って来るのが見えた。
「おーい、もう決めたか?」
「おう、少し待ってな」
 タケルは上位魔術師を選択すると、『こちらでよろしいですか?』『はい』『いいえ』が出てきた。
「『はい』っと」
 タケルの役割欄に淡い光が輝くと、『一般人』が『上位魔術師』に変わっていた。
「役割が決まったところでさっそくだが、訓練をするぞ」
「お願いしますよ。リュゼ先生」
「じゃあ、腕立て伏せ百回な」
「え…」

 タケルの小説より奇なりのファンタジーがここから始まった。
 ──そして、半月後。

 その日は良く晴れていて、青々とする草木に露が落ちた。
 エルフの村の門にエルフらしからぬ長剣を携えた黒髪の青年が立っていた。
「もうそろそろ行くよ」
 青年がマントをはためかせて振り替えるとそこには沢山のエルフが見送りに来ていた。
 その中の背が低い一人のエルフがしょぼんとしている。
 うつむく顔はちょっぴり泣きそうだ。
「やはり、行ってしまうのか…」
「ノイエル、大丈夫だって、たまに来るからさ。知ってるか、人は別れても縁は切れないんだぞ」
「…そうなのか?」
「あぁ、同志の絆は永遠だ」
 タケルはノイエルの頭をわしわしと撫でた。それに比例してノイエルの頬が膨らむ。
「子供扱いするな…」
「ゴメンゴメン」
 村長とリュゼがタケルに羊皮紙と袋を渡す。
「こっちは地図で袋には少量だがお金を入ってる」
「色々して貰ってありがとうな。村長もありがとうございます」
「いいや、こちらこそありがとう」
「…?」
 村長は隣で縮こまるノイエルをを見た。
「この子は家に閉じ込もってリュゼ以外関わりが少なかったのが、タケル殿のお陰でこうして外に出てきた事が何より嬉しい」
「ありがとう」と微笑んで頭を撫でる村長にノイエルが真っ赤になる。
「言う必要ない!タケルのお陰じゃないのだ!」
「…そろそろ行くよ」
「タケル」
 矛先がこちらに向かない間に退散する様に行こうとした瞬間、リュゼに呼び止められた。
「いつ帰って来る?」 
「……そうだな」
 一瞬悩んだ後、走り出す体勢に入る。皆その姿を不思議そうに眺める。
 そして、タケルが駆け出し、叫んだ。

「ノイエルの足が長くなるまで‼」
 置いていかれたエルフ達は一様にポカーンとしていたが、一人を除いて爆笑する。
「………な、タケル!待て貴様‼待たんか!その足削ってやる!待てー‼」
「ハハハハハ…」
 珍しいエルフ達の笑いと怒号に見送られ、タケルは未知の地を走った。
「貴様はやはり同志ではない!敵だ!敵ー‼」








「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁああ!」
 ─ん?
ベリッ!バリバリバリ‼ベキッ!
「うおっ!?ゴフッ!」
「痛ったー、…きゃぁぁ!不審者!変態!」
バシバシ!
「ぶ!ぶべ!」
「マスター~‼どうした~!」

 ─なんてことだ!
 が落ちて来た!?
 取り敢えず、おまけを用意しておこう。
 …どうか、どうか、げーむ初心者でありませんように。
 
 


     ※    ※    ※

 どーも、久々更新のリングでーす!
 いやー、もうゴールデンウィークですね、もう一度言いましょう。ゴールデン、ウィィィーク‼
 と言って、投稿が延びたことを無かったことにする自分です。
 延びた理由は、社会人の誘惑ランキングトップ、ニートさんと自宅警備員さん達の永遠の友、主人公タケルにとっての宝。そうです。ゲームです。
 え?
 ポ○モン?いえいえ、もうボールを投げるのもライバルをボコボコにするのは飽きました。今の時代、シャド○バー○ですよ。
 話に戻りますが、前回の宣言?通り、タケルをマラルカ村の追い出しに成功しました。
 あー、長かったー。今回合わせて8話ですよ。まぁ、タケルがゲーム初心者という設定と、僕の文章力が悪いせいですけど。
 さて、タケルが旅に出たとは別の場所、二人目の女の子が落ちて来ましたね。その子の名前はたちばな リンにしました。理由は無いです。
 あと、これは自分のなかで決定事項にしましたが、一ヶ月更新にします!
 何だかですね、毎回、毎回、読者の皆様を待たせるのが申し訳ないので、そうゆうことに致します。いつも待たせてしまってごめんなさい。
 次回は二人目、リンが中心となっていきますのでお楽しみ下さい。
 それでは!一ヶ月後に!

        連休は山や海よりゲームでしょ!リングより。
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