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4日目/三神優子【期待】
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今私達は病室の前の廊下で、待機している。
優輝君の着替えを待っているのだが、扉1枚の向こうであの素晴らしい腹筋が……上半身が無防備にあらわになっていると思うと……想像だけで興奮してしまう。
私でさえこんな状態なのだから、遠野に井川の興奮の度合いは想像出来るだろうか。
顔を赤らめて自分の呼吸の音さえ出さないようにして目を瞑り、部屋からの物音に耳を澄ませている。
遠野に至っては下半身を押さえている。
(そ、それ以上は駄目だからな。)
先程まで一緒にいた、男性看護夫は優輝君の予備の病院服を取りに行った。
入れ違いで、鈴鳴先生と婦長が来て
鈴鳴先生が「おっ!男性保護官揃って覗きか?」とニヤニヤしながら聞いてきた
「ち、違いますよ、優輝君の着替えを待っている所ですよ。」
と井川が慌てて答えていたが、その答え方はお決まりすぎだろう。
私と井川が振り返って鈴鳴先生と話していたが、隣ににいたはずの婦長がいなくなっていた。
いつの間にか遠野の隣で扉に聞き耳をたてていた。
噂には聞いていたが、病院の男性科に勤めるナースは性欲が強くなると……どう見ても真実だったか。
そんな事を考えていたら、病室の扉が開いた。
優輝君の着替えが終わったみたいで、わざわざ扉を開いて中に招いてくれた。
私達は先程まで盗み聞きをしていたり、妄想したりしていたので全員顔を赤らめていた。
優輝君も随分私達に慣れてくれたようで、表情も話し方も柔らかくなったと思う。
ましてや私と鈴鳴先生は[子作り申し込み書]に書かれているので、少なからず好意を持ってくれているのだろう。
思いだすだけで、顔が緩ゆるんでしまいそうだ。
「三神さん達の用件は何ですか?」
とちょっと期待してますみたいな表情で聞かれた。もしかして捜査が進んだと思っているんだろうか。
少し罪悪感で胸が痛く感じた。
「まずは謝罪させて欲しい。優輝君の公園に放置されていた件と身元確認の件は捜索及び調査は打ち切りとなった。何も結果が出せずすまない。」
私は深く頭を下げた、後ろでも井川と遠野が一緒に頭を下げたような気配を感じた。やはり思う所は一緒だったか。
「いえ、気にしないでください。ありがとうございました。」
私は驚いた。落胆するだろうし、「どうしてなんですか?」と強く責められる事も仕方ないと覚悟していたのだか……
「もっと落胆するかと思ったが、自分が何処の誰なのかわからないと不安じゃないか?」
「不安はありますが、これからどうやって生きて行けるかの方が不安で」
これからの事が不安か……
「過去より未来か……」
あまりにも前向きな考えに胸が熱くなった。
「では優輝君のこれからの未来ついての提案とお願いがあるんだがいいかな?」
私は優輝君に正直に国としての[提案]と、これからどのように対応して行くのかを説明した。
岡崎家の人間になる事、そして生まれた時から[岡崎優輝]だったとする事、鈴鳴家の保護区で生活する事、総理大臣が指揮している事、など全て説明した。
途中、鈴鳴先生も驚いていたが総理大臣の兄が動いていたとわかると納得していた。
優輝君は二十歳とは信じられないぐらい冷静に聞いて理解しているのには驚いた。
そして提案の条件を説明したのだが、
「あの~三神さん、条件って岡崎を名乗る事だけなんですか?」
やはり簡単な説明の条件では納得いかないようだった。
「条件は岡崎家を名乗る事と情報の改変に協力する事。あと、このことは他言無用で!詳しくは後で書類に纏めて持ってくる。」
「三神さん、本当に条件それだけなんですか?」
ん?まだ納得できないのか?
「ん?これだけだがどうした?」
「いや~身体求められたり、毎日精子求められたりって想像してたんで」
それを聞いた私は吹いてしまった。なんて過激な事を……そんな条件でもよかったのか?
「ゆ、優輝君、さらっと凄い事言うが、も、もしその条件だとしたら断っていただろ?」
「いや~初対面の人とはちょっと嫌かな~って、でも2~3ヵ月ぐらいなら身体持つかな~って思ってましたよ。」
私はまた変な音を出して吹いてしまった。
遠野も「え?」
井川も「嘘!」
鈴鳴先生も「おっ」
婦長も「身体……」
私は固まってしまった。そんな夢みたいな事でも応じたと?
私の後ろにいた鈴鳴先生が前に出て優輝君に迫っていった。
「優輝君、退院したら今度遊ぼうか?」
おっ!優輝君の過激な発言にすぐさま行動するとは……
「え?あっ、いいですよ。お任せになりますけど、お店とか知らないし」
「OK!OK!あ~優輝君もうちの保護区に住むなら、私も本家に戻ろうかな~」
「岡崎家って、本家から近いんですか?」
「あぁ 隣だ。本家の次に古いからな」
「へ~お隣さんなんですね、よろしくお願いします」
な、なんだと……玉砕するかもと思っていたが、そんなに簡単に約束しただと……遊ぶと布石を置いて家もお隣と安心させておいて狙う気か!
私は後ろを振り向いた。井川も遠野も頷うなずく。チャンスだ!
私は小声で「これは誘うべきだよな?」
井川も「こんなチャンスないですよね?」
遠野も「今しかないですよ!とりあえず抜け駆け無しで」
私が「理由はどうする?」
遠野が「退院祝いとすれば、問題ないですよね?」
さ、さすが遠野、この短い間に職務規定に違反しないように時期をずらすとは、どれだけ頭をフル回転させたのか……頼もしさを越して怖くも感じる。決まりだ!
私は振り返り緊張しながら、優輝君を誘ってみた。
「ゆ、優輝君、退院したら私達がお祝いしてあげよう。一緒にご飯でも行かないか?」
ど、どうだ?
「え?いいんですか?ありがとうございます。でも仕事忙しそうですけど、大丈夫ですか?」
何ーーー!簡単にOKだと……そのうえ休みの心配までとは……
「大丈夫心配無用だ。休みは溜まっているぐらいだから気にしなくていい。」
井川も「わ、私も休みますから」
遠野も「有給取ってでも休みますから大丈夫です。」
遠野、お前有給あるのか?
「あれ?そう言えばさっき用件とお願いって言ってましたけど、お願いって何ですか?」
ん?お願い?今したが?……用件とお願い……
あっ思い出した。
「あ~ すまん忘れていた。実はな第一発見者の山内彩芽さんが優輝君の事が心配で一度会いたいそうだ、どうだろう?」
「?……俺を見つけてくれた人ですか?」
「そうだ。あのまま公園にいたら、どんな事になっていたかわからん。命の恩人と言ってもいいかも知れないな」
間違いなく監禁か、襲われて一生身体を食い物にされただろう。
「そ そうですか……じゃあ一度会ってお礼が言いたいです。ちなみにどんな方ですか?」
「ん~普通の娘さんだな。歳は確か22だったな」
「わかりました。お願いします」
私は頷うなずいたが、今の会話で救急救命医師2人の事を思い出してしまった。あれも伝えなければいけないか……
「それでな、かなり言いにくいんだがもう一つお願いがあるんだが……無理にとは言わないが……」
「俺に出来る事ならいいですよ」
「先程少し話をしたが、情報の改変をしなければいけないと……公園で[男性]を保護したと言う事も公園で[女性]を保護したと直さないといけなくてな。……優輝君を病院まで搬送した救急救命医師の二人にお願いをしたんだが、二人の条件というか希望なんだが……その……あれだ、優輝君の子供(精子)が欲しいと言われてな、無茶なお願いだと思うが少し考えてみてはくれないだろうか?」
精子提供を個人にして欲しいなど、前代未聞のお願いだ。普通なら即断られるのは目に見えている。優輝君だから怒らず聞くだけはしてくれると思うが……
「え~と 会った事もない人にはちょっと無理かもです。一度会わせて貰えませんか?それから考えさせて欲しいです。」
やはり怒らず聞いてくれたか……優しいな優輝君は、それに即、断らないで考えてくれると言ってくれるとは……
「そ、そうか、即答で断られると思っていたが、前向きに考えてるくれるようで助かる。ち、ちなみに優輝君は、その、そういう事に嫌悪感や抵抗はないのか?」
「え~と、男性が少ないのだから仕方ないんじゃないですか、欲しいのであれば協力したいです。無理矢理とか義務とか強請的にってよりお互いが同意して作るのが一番だと思いますから」
優輝君の着替えを待っているのだが、扉1枚の向こうであの素晴らしい腹筋が……上半身が無防備にあらわになっていると思うと……想像だけで興奮してしまう。
私でさえこんな状態なのだから、遠野に井川の興奮の度合いは想像出来るだろうか。
顔を赤らめて自分の呼吸の音さえ出さないようにして目を瞑り、部屋からの物音に耳を澄ませている。
遠野に至っては下半身を押さえている。
(そ、それ以上は駄目だからな。)
先程まで一緒にいた、男性看護夫は優輝君の予備の病院服を取りに行った。
入れ違いで、鈴鳴先生と婦長が来て
鈴鳴先生が「おっ!男性保護官揃って覗きか?」とニヤニヤしながら聞いてきた
「ち、違いますよ、優輝君の着替えを待っている所ですよ。」
と井川が慌てて答えていたが、その答え方はお決まりすぎだろう。
私と井川が振り返って鈴鳴先生と話していたが、隣ににいたはずの婦長がいなくなっていた。
いつの間にか遠野の隣で扉に聞き耳をたてていた。
噂には聞いていたが、病院の男性科に勤めるナースは性欲が強くなると……どう見ても真実だったか。
そんな事を考えていたら、病室の扉が開いた。
優輝君の着替えが終わったみたいで、わざわざ扉を開いて中に招いてくれた。
私達は先程まで盗み聞きをしていたり、妄想したりしていたので全員顔を赤らめていた。
優輝君も随分私達に慣れてくれたようで、表情も話し方も柔らかくなったと思う。
ましてや私と鈴鳴先生は[子作り申し込み書]に書かれているので、少なからず好意を持ってくれているのだろう。
思いだすだけで、顔が緩ゆるんでしまいそうだ。
「三神さん達の用件は何ですか?」
とちょっと期待してますみたいな表情で聞かれた。もしかして捜査が進んだと思っているんだろうか。
少し罪悪感で胸が痛く感じた。
「まずは謝罪させて欲しい。優輝君の公園に放置されていた件と身元確認の件は捜索及び調査は打ち切りとなった。何も結果が出せずすまない。」
私は深く頭を下げた、後ろでも井川と遠野が一緒に頭を下げたような気配を感じた。やはり思う所は一緒だったか。
「いえ、気にしないでください。ありがとうございました。」
私は驚いた。落胆するだろうし、「どうしてなんですか?」と強く責められる事も仕方ないと覚悟していたのだか……
「もっと落胆するかと思ったが、自分が何処の誰なのかわからないと不安じゃないか?」
「不安はありますが、これからどうやって生きて行けるかの方が不安で」
これからの事が不安か……
「過去より未来か……」
あまりにも前向きな考えに胸が熱くなった。
「では優輝君のこれからの未来ついての提案とお願いがあるんだがいいかな?」
私は優輝君に正直に国としての[提案]と、これからどのように対応して行くのかを説明した。
岡崎家の人間になる事、そして生まれた時から[岡崎優輝]だったとする事、鈴鳴家の保護区で生活する事、総理大臣が指揮している事、など全て説明した。
途中、鈴鳴先生も驚いていたが総理大臣の兄が動いていたとわかると納得していた。
優輝君は二十歳とは信じられないぐらい冷静に聞いて理解しているのには驚いた。
そして提案の条件を説明したのだが、
「あの~三神さん、条件って岡崎を名乗る事だけなんですか?」
やはり簡単な説明の条件では納得いかないようだった。
「条件は岡崎家を名乗る事と情報の改変に協力する事。あと、このことは他言無用で!詳しくは後で書類に纏めて持ってくる。」
「三神さん、本当に条件それだけなんですか?」
ん?まだ納得できないのか?
「ん?これだけだがどうした?」
「いや~身体求められたり、毎日精子求められたりって想像してたんで」
それを聞いた私は吹いてしまった。なんて過激な事を……そんな条件でもよかったのか?
「ゆ、優輝君、さらっと凄い事言うが、も、もしその条件だとしたら断っていただろ?」
「いや~初対面の人とはちょっと嫌かな~って、でも2~3ヵ月ぐらいなら身体持つかな~って思ってましたよ。」
私はまた変な音を出して吹いてしまった。
遠野も「え?」
井川も「嘘!」
鈴鳴先生も「おっ」
婦長も「身体……」
私は固まってしまった。そんな夢みたいな事でも応じたと?
私の後ろにいた鈴鳴先生が前に出て優輝君に迫っていった。
「優輝君、退院したら今度遊ぼうか?」
おっ!優輝君の過激な発言にすぐさま行動するとは……
「え?あっ、いいですよ。お任せになりますけど、お店とか知らないし」
「OK!OK!あ~優輝君もうちの保護区に住むなら、私も本家に戻ろうかな~」
「岡崎家って、本家から近いんですか?」
「あぁ 隣だ。本家の次に古いからな」
「へ~お隣さんなんですね、よろしくお願いします」
な、なんだと……玉砕するかもと思っていたが、そんなに簡単に約束しただと……遊ぶと布石を置いて家もお隣と安心させておいて狙う気か!
私は後ろを振り向いた。井川も遠野も頷うなずく。チャンスだ!
私は小声で「これは誘うべきだよな?」
井川も「こんなチャンスないですよね?」
遠野も「今しかないですよ!とりあえず抜け駆け無しで」
私が「理由はどうする?」
遠野が「退院祝いとすれば、問題ないですよね?」
さ、さすが遠野、この短い間に職務規定に違反しないように時期をずらすとは、どれだけ頭をフル回転させたのか……頼もしさを越して怖くも感じる。決まりだ!
私は振り返り緊張しながら、優輝君を誘ってみた。
「ゆ、優輝君、退院したら私達がお祝いしてあげよう。一緒にご飯でも行かないか?」
ど、どうだ?
「え?いいんですか?ありがとうございます。でも仕事忙しそうですけど、大丈夫ですか?」
何ーーー!簡単にOKだと……そのうえ休みの心配までとは……
「大丈夫心配無用だ。休みは溜まっているぐらいだから気にしなくていい。」
井川も「わ、私も休みますから」
遠野も「有給取ってでも休みますから大丈夫です。」
遠野、お前有給あるのか?
「あれ?そう言えばさっき用件とお願いって言ってましたけど、お願いって何ですか?」
ん?お願い?今したが?……用件とお願い……
あっ思い出した。
「あ~ すまん忘れていた。実はな第一発見者の山内彩芽さんが優輝君の事が心配で一度会いたいそうだ、どうだろう?」
「?……俺を見つけてくれた人ですか?」
「そうだ。あのまま公園にいたら、どんな事になっていたかわからん。命の恩人と言ってもいいかも知れないな」
間違いなく監禁か、襲われて一生身体を食い物にされただろう。
「そ そうですか……じゃあ一度会ってお礼が言いたいです。ちなみにどんな方ですか?」
「ん~普通の娘さんだな。歳は確か22だったな」
「わかりました。お願いします」
私は頷うなずいたが、今の会話で救急救命医師2人の事を思い出してしまった。あれも伝えなければいけないか……
「それでな、かなり言いにくいんだがもう一つお願いがあるんだが……無理にとは言わないが……」
「俺に出来る事ならいいですよ」
「先程少し話をしたが、情報の改変をしなければいけないと……公園で[男性]を保護したと言う事も公園で[女性]を保護したと直さないといけなくてな。……優輝君を病院まで搬送した救急救命医師の二人にお願いをしたんだが、二人の条件というか希望なんだが……その……あれだ、優輝君の子供(精子)が欲しいと言われてな、無茶なお願いだと思うが少し考えてみてはくれないだろうか?」
精子提供を個人にして欲しいなど、前代未聞のお願いだ。普通なら即断られるのは目に見えている。優輝君だから怒らず聞くだけはしてくれると思うが……
「え~と 会った事もない人にはちょっと無理かもです。一度会わせて貰えませんか?それから考えさせて欲しいです。」
やはり怒らず聞いてくれたか……優しいな優輝君は、それに即、断らないで考えてくれると言ってくれるとは……
「そ、そうか、即答で断られると思っていたが、前向きに考えてるくれるようで助かる。ち、ちなみに優輝君は、その、そういう事に嫌悪感や抵抗はないのか?」
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