妻の望みは………貞操逆転世界

クロハナ

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7日目/岡崎優輝【番号】

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俺は面会を終えて病室に戻っていた。

あれ程面会に行く前はビクビクしていたのだが、終わってみれば何やらスッキリした気分になっていた。

今まで孤立無縁だと諦めていたこちらの世界に、素直に隠し事なく話せて頼れる人がいる。

とても嬉しかった。

そして[彩]の事を誰も知らない世界で生きて行くのかと、寂しくも思っていたのだが本人とは言えないが結婚式にも出席してくれた朋子おばさんが傍にいてくれる様な安らぎも感じていた。


それに退院した後知らない人と一緒に暮らすとか正直嫌だったのだが、自分の置かれている状況では他に選択肢は保護と言う檻に一生縛られて種馬になる事しかなかったはずで、すぐに自分の体質の事も公になり研究施設送りになっていたかもしれない。


今までの仕事のせいかな?

すぐに最悪の事態を考えてから作業を行っていたからか、仕事以外でも最悪を考えて複数の対処方法を考えて行動するのが俺の生き方になっていた。

そんな不器用な俺を支えてくれた[彩]

そー言えば静子さんが「探してみましょう?」って言ってたけど可能性で考えればいるのかも知れないな。

[彩]の姿で記憶の有り無しか、全くの別人で記憶だけ有り、もしくは部分的な静子さんの様に記憶を経験しているとかかな?

だとしてもどうやって探す?

まさか鈴鳴家の保護区内にいるなんて簡単にはいかないだろうし、ここの鈴鳴市の保護区内にいるかもわからない。

ましてや保護区外ともなれば見つける事は極端に難しいだろうな。

何かいい方法ないかな?


俺は夕食の時間までそんな事を考えたり、端末の使い方を調べたりしていた。

箱の中には端末の他にメモが1枚入っていて、静子さんの端末の番号とメールアドレス後は家の電話番号が書いてあったので何とか端末に登録した。


夕食時間になりそろそろ取りに行こうかと思って、病室を出ると鈴鳴先生が夕食を持って歩いて来た。


「こんばんわ優輝君、君の分の夕食を持ってきたよ。」


「あっ!わざわざすいません」


「いや気にしないでいい、伝言のついでだ。とりあえず病室に戻ろうか」


伝言?三神さんかな?

俺は頷き病室まで戻って扉を開けた状態を維持して、鈴鳴先生を中に入れた。


鈴鳴先生がテーブルに夕食を置いてくれると、テーブルに置いてあった端末を見つけたらしく


「おっ!優輝君の端末か?もしかして静子さんが?」


「はい、欲しいと思っていたので本当にありがたいです。」


「流石、静子さんだな。……それで…も、勿論私には教えて貰えるのだろうか?」


少し恥ずかしそうに、鈴鳴先生が聞いてきた。

男性に連絡先を聞くという行為は、かなり勇気のいる事とネットに書いてあった。

断られるのが当たり前で、その上罵倒されたりストーカー扱いされたりと何かと大変らしい。


「勿論ちゃんと教えますよ。」


俺はそう言ってから鈴鳴先生に向けて手を出した。

この病室には、三神さんから書類を書く為に貰ったペンが一本しかなかったので鈴鳴先生の胸元のポケットに入っている付箋ふせんらしき物を貰わないと端末の番号などを教えれなかったのだ。

その事に鈴鳴先生ならすぐに気が付いてくれると思って手を向けたのだが……


「あっ!今、持って来てないんだ。今すぐに取りに行ってくるから……本当にすぐに持ってくるから待ってて」


そう言って凄いスピードで病室を出て行った。

え?なぜに?

特別な紙でも必要なのかな?

パパッと渡して夕食を食べたかったのに……食べようかな?

現時点で多分2割ほど冷めて来ていると思う。

あっ!それに伝言とか言ってたけど忘れてるんじゃないよな?

俺が食べようか悩んでいると、鈴鳴先生が息を切らせて病室に戻ってきた。

手には財布?はい?


「ハァハァ……そ、ハァハァ…それで、ハァハァ…い、いくらだ?ハァハァ」


はい?なんでお札出してるの?

俺は指を一本出して


「紙を一枚欲しいだけなんですけど?」


「ハァハァ…こ、小切手を、ハァハァ…一枚だな、ハァハァ」


なぜにそうなる?

鈴鳴先生は息を切らしながら財布から小切手を出して渡して来た。

ってなんで財布に小切手普通に入ってるの?

それに金額書いてないよね?それに好きに書けと?


「鈴鳴先生!ちょっと落ち着いて!俺が欲しいのはメモ用紙一枚ですから!」


「ハァハァ…メモ?」


「メモ用紙!端末の番号書く紙です。大丈夫ですか?」


もう~夕食がドンドン冷めていってますから!

俺は夕食を気にしながら、鈴鳴先生を見ると少し落ち着いてきたのか呼吸が戻ってきていた。


「だ、大丈夫だ。初めての事で少し混乱した……メモ用紙ならこれでいいかな?」


胸元のポケットから付箋ふせんを取り出し渡してくれた。

俺はすぐに端末の箱に書いてある番号を書いて、鈴鳴先生に渡した。


「これが優輝君の番号か……一生大事にする。」


いやいや、一生って番号変わる可能性もありますから!

でも、かなり嬉しそうにしているのを見ていると俺も嬉しくなった。

鈴鳴先生の番号は以前貰った名刺に記載されていたので、あとで登録しようと思う。


「優輝君、何かあればすぐに電話するから……ちゃんと毎日電話するから……一日何回までいい?」


いやいや、何回までとか聞かれた事ないですから!


「ほどほどで!基本用事がある時でお願いしますね。」


「了解した。こ、声の検査をこれでする「ダメですから!」」


「くっ、ちょ、聴力の「ダメですから!」」


「うっ、反応「ダメですから!」」


「あっ!伝言を「今、言ってください!」」


泣きそうになってませんか?

あ~もう仕方ないな~


「鈴鳴先生は会いに来るより電話の方がいいんですか?」


激しく顔を横に振る鈴鳴先生、こうゆう所可愛いよね。

何とか理解してくれたらしく、伝言を教えて貰い鈴鳴先生には帰ってもらった。

伝言の内容は明後日に面会の予定を入れたいと、三神さんからの問い合わせでした。

面会の相手は第一発見者の山内彩芽さんとそのお母さん?なぜに?

よくわからないけど、「大丈夫です」と伝えてもらうように鈴鳴先生にお願いした。


そして……また冷めた夕食をと……はならなかった。

病室に電子レンジがあったのだ。

気がつけよ俺!!

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