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9日目/岡崎優輝【運命の面会①】
しおりを挟む面会の予定時間まで後10分………そろそろ行こうかな。
多分三神さん達と一緒に山内さんが来ていると思う。どんな娘こなんだろう。
今ならこの世界がどのくらい男性に危険なのか、何となくわかった。
元の世界で例えるなら、変質者の町の公園で有名アイドルが寝ていた。それも襲いやすく布団で………ん?例えになってないか。
とにかく、お婆さんまで襲ってくる程に危険だ。
そんな世界にも関わらず、すぐ警察を呼んで保護して貰えたのは幸運。第一発見者の理性に感謝………と武ちゃんが言っていた。
最悪一般の理性を保てない人に見つかればお持ち帰りされ、拘束されて死ぬまで自由は無かったと………一般の人でそうだとすれば、もし悪い人だとどうなるんだろう?武ちゃんに恐る恐る聞いてみたけど教えてくれなかった。
「知らない方が幸せよ」と真顔で言われて背筋が寒くなった。
だから今日会う山内さんには、感謝を最大限に伝えなければ………俺で出来る事であれば何か要望を叶えてあげたい。
しかし………こちらの女性の大半……いやほぼかもしれないが、男性に求めるのは[身体]。若い頃は体の欲求に素直に気持ちものせられたけど、精神年齢46歳には「気持ちいい事したい」より、「疲れるのが嫌だ」と思う事があるのが現実。
今は若い身体だからそんなに疲れないと思うが、どうも精神的にあまりしたいとは思わない。身体以外の要望だといいな………
そんな事を考えながら俺は面会室の扉を開けた。
やっぱりもう部屋には三神さん達がいた。
透明な仕切り板の前には三神さんに井川さんに遠野さんが並んで立っていて、その後ろに二人いるみたいだ。よく見えないけど……
「お久しぶりだな、優輝君。元気な様子で安心したよ。」
「お久しぶりです。三神さん、あれ?少し痩せたんじゃないんですか?」
「そ、そうか気のせいじゃないか………あははは。そ、それより以前話していた第一発見者の山内さん親子をお連れした。我々は外で待機しているので終わったら病室で待っていて欲しい。」
「わかりました。でもすぐに渡せますよ?持ってきたんで。」
俺は折り畳んだ申込書をポケットから取り出した………出した途端に
「いっ!…………いやいや今は受け取れない!後で!後でで頂きます。」
三神さんは最初に変な声を出してから慌てて止めてきた。
何故か隣にいた遠野さんから、ゾワっとした感じがして顔を見てみたけど笑顔だった。なんだろう今の感覚………気のせい?
「じゃ後で渡しますね。」
俺はまたポケットにしまうと、三神さんは落ち着きを取り戻して
「では紹介します。こちらが第一発見者の山内彩芽さんと彩芽さんのお母様だ。」
と後ろにいた二人の紹介を始めた。
井川さんと遠野さんが後ろに下がり、三神さんが横に移動すると後ろにいた二人が前に出てきた。
仕切り板を挟み俺の前にきたのは、肩が少し隠れるぐらいの長さの髪にまだ少し少女の面影が残る可愛らしい顔をした………あれ?
何か見覚えがある気がする………誰かに似ている感じだけど、若い女の子の知りあいなど前の世界でも少ない。誰だっけ?と悩みかけて隣のお母さんらしき人を見ると………あからさまに興奮していらっしゃるご様子。
顔は勿論少し赤い……目も………瞬きしてます?
それに臭いを嗅ごうとしてるのか鼻が見てわかるように膨らんだりしている。呼吸も早いようです。
俺は見ていられなくなり、隣の娘さんに視線を戻して気がついた。あれ?どうしてこの娘は普通にいられるの?少し顔が赤いようだけど、興奮してとかではなく緊張しているみたいな感じだし………
「初めまして私が山内彩芽です。それで隣にい「あ、彩芽の…は、母で……す。」…………す、すみません。付き添いとして一緒に」
呼吸が荒いからか、普通に言葉が出ないみたいだ。とりあえず深呼吸してください!
心の中で突っ込みをいれていると
「では私達は外で待機していますので」
と三神さん達が出ていった。
残された俺と山内さん親子………立ったまま1時間はどうかと思い
「とりあえず立ったままもどうかと思うんで、座りましょうか。」
頷いて素直に座ってくれた二人だが………今だに興奮したままのお母さん………見てる俺まで呼吸が苦しくなりそうなので、もう見ない事にして彩芽さんに視線を定めた。
「初めまして岡崎優輝です。覚えてなくて申し訳ないのですが、公園に危険な状態の所を警察に連絡して助けて頂きありがとうございました。」
「いえいえ私そんな大した事してませんから。それに最初変質者だと思って通報しただけですから。」
「え?」変質者?そんな話聞いてないんですけど?
「あっ知らなかったんですね。公園で布団を敷いて寝ているのが男性だったなんて思わなくて………」
うっ 公園で布団の話は恥かしいから!
「そりゃ~そうですよね~どうしてそこにいたのかも記憶に無くて………まっ他にも覚えてる事ないんですけどね。」
「あの、やっぱり記憶少しも思い出せないんですか?」
ん~思い出すって言うか違う世界から来ましたとは言えないし………それに今は岡崎家の人間だったって事になってるからあまり詳しくは話すとボロが出そうだな。
「思い出せないんですが、幸い俺の事を知っている人がいましたから家に帰ってゆっくり思い出せればいいかなと………」
これで記憶喪失の話は終わりかな。
「そうですか………あ、あの突然ですがいくつかお聞きしたい事があるのですがいいですか?」
「はい?なんでしょう?」
記憶が無いって言ってるのに俺に何を聞きたいんだろ?
「から揚げすきですか?」
え?………………………食べ物の好み?から揚げは好きだけ………[彩]が作ってくれたアノ味付けにマヨネーズを付けて食べるのが好きだったんだよな~何か懐かしいな。
「好きですよ。昔何処かで食べた味が忘れられないですね。」
「そ、そうですか………マヨネーズ付けて食べるの好きですか?」
え?…………随分具体的に聞いてくるけど………
「えぇ、マヨネーズ付けて食べるの好きですよ。」
「そ、そうですか………猫好きですよね?」
「はい?」 今度はいきなり猫ですか?そりゃ~犬派か猫派かって聞かれたら猫派って答えるけど、犬も好きで飼ってた事あるけど………いったいこの娘は何を聞きたいんだろ?
「猫、ペットのですけど」
「えぇ猫好きですよ。」
「そうですか………では拾ってきた子猫を人から預かってくれと頼まれたと手紙まで書いて嘘をついて1ヶ月飼ったあげくばれて泣く泣く里親を探した人を知っていますか?」
「ウッ……………シ、シリマセン。」
俺昔同じ事して[彩]にメチャクチャ怒られた………まさか彼女がネコアレルギーだったなんて………しかし何で………も、もしかして[彩]の記憶を?
「そ、そうですか…………では彼女にプロポーズする為にわざわざレンタカーを借りて、海に行こうとしたのに途中から天気が悪くなり雨が降ってきたので急遽、水族館に行ったけど人が多くてプロポーズ出来なくて帰りの車の中で指輪の箱を見つかって高速のサービスエリアでプロポーズした人を知っていませんか?」
「……………………シ、シッテマス。」
間違いなく前の世界の俺の事ですよね?
「そうですか………残念です♪まだ10個程恥ずかしい話あったのに………」
「え~~~まだあるの?」
「ん~そうですね、泥酔して廊下で漏らした事とか、あと「すいません!もう十分わかりましたから!」
「良かった。やっぱり夢の人だったんですね。」
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