来る日も来る日もxをして

希花 紀歩

文字の大きさ
101 / 162
クローバーとパンツ

*5*

しおりを挟む
退社する為に給湯室でマグカップを洗う。昨日お土産として買ったものだ。条件反射的に明日先輩の顔が浮かんできてしまう。なお今日のキスはエレベーターで偶然ふたりになった時に済ませていた。

「今日は帰り早いんだね。」

頭の中に浮かんだ先輩が急に言葉を発したので驚いて手を滑らせマグカップを落としてしまう。すんでのところで後ろから伸びてきた長い腕がキャッチしてくれて事なきを得た。

「・・・あ、ありがとうございます。」

振り返らないのも失礼だと思い振り返ったら明日先輩の顔が目の前にあった。目が合った途端先輩の瞳が色気を帯びる。それを見た瞬間意思に反して目を閉じるが閉じる前に唇が触れた。

「・・・今日は高部さんと飲みに行くので。」

明日先輩の体温が残ったままの唇が冷静を装って質問に答えるがかなり動揺している。そしてそのことは先輩にも伝わってしまっているだろう。

「更科、酒飲めないよね。無理するなよ・・・って更科はしないか。まだ月曜日だし。」

「・・・もしかして先輩も本当は弱かったりしますか?」

「当たり。よくわかったね。いつも飲む前後に万全の対策してるつもりだけど、皆と別れてからトイレ駆け込んでるし、毎回二日酔いしちゃうんだ。」

先輩は拳を額に当てて苦笑いしている。

「体に合わないんだから無理しちゃ駄目ですよ。」

「・・・更科が言うなら辞める。」

その言葉にドキンとしてしまう。

「あ、明日先輩、菘先輩見ませんでした?」

唐突に聞こえた美彩ちゃんの声に体が硬直する。彼女からは長身の明日先輩の体に隠れて私が見えないようだ。先輩は自分の体で私を包むようにした。先輩の体温と圧が私の鼓動を加速させる。カチコチの石像のようになっているのに、こんなに熱を持ち激しく心臓を動かしているなんて変な感じだ、などと思った。

「い・・・いや、見てない・・・けど。」と明日先輩も明らかに動揺しているが、美彩ちゃんは気にならなかったようで『そうですか。トイレにもいなかったし先に下に降りちゃったのかな。じゃ、お先に失礼します。』と去ろうとしている。

明日先輩が『お疲れ。』と返し美彩ちゃんのヒールの音が遠ざかっていっても私は先輩に包まれたままだった。

「せ・・・んぱい?」

「あ、ああ、ごめん。更科もお疲れ。飲み会、気をつけて楽しんできて。」

明日先輩はそう言いながら私から離れ去っていった。

───そう言えばなんだか最近の美彩ちゃん、明日先輩にベッタリじゃなくなったな・・・・。

その理由はすぐにわかるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...