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第三話 センパイは料理上手
Chapter6
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―怜二―
ソファにもたれて眺めていた雑誌の最後のページをめくり、壁にかけた時計を見上げる。
「もうこんな時間か…」
足元のラックに雑誌を置き、スリッパに裸足の足を突っ込んでキッチンへ向かう。ゆるく羽織ったカーディガンのずれを直しながら冷蔵庫を開けた。
昨日の残りのハンバーグがある。安いからとつい多めの量のひき肉を買ってしまったせいで、たくさん出来てしまった。
少し考え、味付けを変えて食べることを思いついて冷蔵庫を閉めた。日曜の夕方だから混んでいるかもしれないが、材料を揃えにスーパーに行くことにする。ちょうどいくつか買い置きが切れている調味料もあったし、何せ今日は一度も外出していない。
さすがにスウェットのままじゃ格好悪いかと思い、クローゼットからベージュのコットンパンツを出して履き替える。玄関先に置いた車のキーを手に取り、マンションの部屋を出た。
いつものスーパーに着き、買い物かごを片手に売り場を歩く。
明日はお弁当作ろうか、おかずは何にしよう…と考えながら、夕方になって値引きのシールが貼られた豚肉を手にする。他には何か…と思いながら総菜売り場の方へ歩いてくると、長身の男がじっと出来合いの弁当を見ているのが目に入った。
どこかで見たなあ、と思って顔を見ると、ちょうど同じタイミングでこちらを見て来たのでもろに目が合った。
「あれ、佐伯さん。」
「うわっ、三浦。」
「何すかその反応。傷つくな。」
一瞬ムッとした後、もう俺に興味をなくしたのか別の弁当を手に取って眺め始めた。相変わらずのマイペースっぷりだ。
通り過ぎるふりをして、こっそりかごの中身を見る。
「…いつもそんなもん食べとるん?」
「え?」
「カップ麺とか、総菜ばっかやん。」
一体何日分の食料なのか、かご半分くらいを埋め尽くしているのはカップ麺や出来合いの総菜、他にはスポーツドリンクやジュースばかり。
「日曜くらいしか買い物来ないからですよ。毎日食べているわけじゃ。」
「なら、普段は何食べとるん?」
「デリバリーで色々。」
「一緒やん。で、カップ麺も食べとるんやろ?」
「カップ麺は非常食です。今日は、他にも要るものがあったから…」
足元に置かれていた五箱入りのティッシュボックスを指さす。
「それが無かったら、今日もデリバリーやったん?健康に悪いなあ。」
「佐伯さん、言ってること母親みたい。自分はどうなんですか?」
そう言って俺のかごを覗き込み、意外そうな表情になる。
「何か作るんですか?」
「作るよ、これは明日の弁当用やけど…」
「ああ、お弁当。あれ、自分で作ってたんですね。」
「他に誰が作んねん。おかんは一緒に住んでへんで。」
「いや、彼女とか。」
「彼女…」
少し言い淀み、そんなんおれへん、と小声で返す。
彼女はいない。けれど、いつぞやデートをすっぽかされたまま音信不通の”元恋人”のことが脳裏をよぎった。
「いいなあ、弁当。いつも美味しそうなの食べてますよね。」
置いてあったティッシュボックスを持った、三浦の左手に目が行く。
「どないしたん、それ。」
大きめの絆創膏が貼られた手の甲を指さすと、三浦は気まずそうに隠すそぶりを見せた。
「あー…何でもないです。ちょっとまだ、ひりひりしてるから。」
「何したん?」
「何って…」
困った様な反応をされ、ようやく思い当たった。
「もしかして、この間の時か?」
「まあ…、でも平気なんで。」
「怪我しとったんか、何で言わへんのや。悪かったな…」
申し訳なくなりながら三浦を見ると、何か思いついたようににんまりされてたじろいだ。
「な、何?」
「じゃあ、そのお詫びにと言っては何ですけど。」
「…?」
「佐伯さんのご飯、食べさせてくれませんか?」
ソファにもたれて眺めていた雑誌の最後のページをめくり、壁にかけた時計を見上げる。
「もうこんな時間か…」
足元のラックに雑誌を置き、スリッパに裸足の足を突っ込んでキッチンへ向かう。ゆるく羽織ったカーディガンのずれを直しながら冷蔵庫を開けた。
昨日の残りのハンバーグがある。安いからとつい多めの量のひき肉を買ってしまったせいで、たくさん出来てしまった。
少し考え、味付けを変えて食べることを思いついて冷蔵庫を閉めた。日曜の夕方だから混んでいるかもしれないが、材料を揃えにスーパーに行くことにする。ちょうどいくつか買い置きが切れている調味料もあったし、何せ今日は一度も外出していない。
さすがにスウェットのままじゃ格好悪いかと思い、クローゼットからベージュのコットンパンツを出して履き替える。玄関先に置いた車のキーを手に取り、マンションの部屋を出た。
いつものスーパーに着き、買い物かごを片手に売り場を歩く。
明日はお弁当作ろうか、おかずは何にしよう…と考えながら、夕方になって値引きのシールが貼られた豚肉を手にする。他には何か…と思いながら総菜売り場の方へ歩いてくると、長身の男がじっと出来合いの弁当を見ているのが目に入った。
どこかで見たなあ、と思って顔を見ると、ちょうど同じタイミングでこちらを見て来たのでもろに目が合った。
「あれ、佐伯さん。」
「うわっ、三浦。」
「何すかその反応。傷つくな。」
一瞬ムッとした後、もう俺に興味をなくしたのか別の弁当を手に取って眺め始めた。相変わらずのマイペースっぷりだ。
通り過ぎるふりをして、こっそりかごの中身を見る。
「…いつもそんなもん食べとるん?」
「え?」
「カップ麺とか、総菜ばっかやん。」
一体何日分の食料なのか、かご半分くらいを埋め尽くしているのはカップ麺や出来合いの総菜、他にはスポーツドリンクやジュースばかり。
「日曜くらいしか買い物来ないからですよ。毎日食べているわけじゃ。」
「なら、普段は何食べとるん?」
「デリバリーで色々。」
「一緒やん。で、カップ麺も食べとるんやろ?」
「カップ麺は非常食です。今日は、他にも要るものがあったから…」
足元に置かれていた五箱入りのティッシュボックスを指さす。
「それが無かったら、今日もデリバリーやったん?健康に悪いなあ。」
「佐伯さん、言ってること母親みたい。自分はどうなんですか?」
そう言って俺のかごを覗き込み、意外そうな表情になる。
「何か作るんですか?」
「作るよ、これは明日の弁当用やけど…」
「ああ、お弁当。あれ、自分で作ってたんですね。」
「他に誰が作んねん。おかんは一緒に住んでへんで。」
「いや、彼女とか。」
「彼女…」
少し言い淀み、そんなんおれへん、と小声で返す。
彼女はいない。けれど、いつぞやデートをすっぽかされたまま音信不通の”元恋人”のことが脳裏をよぎった。
「いいなあ、弁当。いつも美味しそうなの食べてますよね。」
置いてあったティッシュボックスを持った、三浦の左手に目が行く。
「どないしたん、それ。」
大きめの絆創膏が貼られた手の甲を指さすと、三浦は気まずそうに隠すそぶりを見せた。
「あー…何でもないです。ちょっとまだ、ひりひりしてるから。」
「何したん?」
「何って…」
困った様な反応をされ、ようやく思い当たった。
「もしかして、この間の時か?」
「まあ…、でも平気なんで。」
「怪我しとったんか、何で言わへんのや。悪かったな…」
申し訳なくなりながら三浦を見ると、何か思いついたようににんまりされてたじろいだ。
「な、何?」
「じゃあ、そのお詫びにと言っては何ですけど。」
「…?」
「佐伯さんのご飯、食べさせてくれませんか?」
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