11 / 26
第四話 気づいてしまった
Chapter11
しおりを挟む
―怜二―
「佐伯さあ、随分と三浦に懐かれたよな。」
唐突にナベさんがそう言うもんだから、危うく書きかけのメールの送信ボタンを押しそうになってしまった。
「何ですか、急に…」
「いや、最近一段と仲良くなったなと思って。よくお前んとこに仕事の相談にも来るし。」
にやにやしながらナベさんがこちらを見る。
「結局、映画デートも行ってきたんだもんなー?」
「行けって言ったの自分やないですか…。それに、仕事の相談くらいするでしょ。教えてるの俺なんですから。」
「それはそうだけど。すっかり壁が無くなったなと思って。」
「え、三浦の?」
ナベさんは呆れた様に、俺の額を軽く指で突いた。
「お、ま、え、の。」
「へ?俺?」
つつかれた額をさする。
「俺、三浦に壁作ってたかな…?」
「別に三浦相手だけじゃないけど、深入りしないように距離置く癖あるだろ。あれ無意識なの?」
どき、と心臓が気まずい音を立てる。
「…ナベさん、意外と人の事見てますね。」
PC画面に目線を戻す。さっさと文章をまとめ、誤字が無いか必死で目を凝らす。
「いや、俺もさー…最初は、佐伯って意外と人見知りなんだなってくらいに見てたんだけどさ。」
「そうですね、確かに人見知りはします。」
メールの送信先を入力する。何となく、早く話を切り上げなければまずい気がして焦る。―だって。
「あのさ。」
ナベさんは。
「違ったら、悪いんだけど。」
―勘が、良い。
「佐伯、ひょっとして三浦のこと好きだったりする?」
ガタン、と椅子が大きな音を立てた。右隣りの席に座っていた名木ちゃんが、びっくりして俺を見る。
「…っ、ちょっと俺、出てくるんで!」
「え、どこに?」
「得意先にアポイント取ってあるから!そのまま直帰します。お疲れ様です!」
「お、お疲れ…」
脱いで椅子に掛けていたジャケットを掴み、鞄を手に逃げるように営業フロアを出た。
―匠海―
「戻りましたー。」
定時ぎりぎりに外回りから戻り、先輩たちに声をかける。
「…あれ、佐伯さんは?」
会議資料作りに四苦八苦している名木ちゃんに声をかけると、何故か困った様な顔をされた。
「ええと…さっき、営業先に出て行ったよ。直帰するって。」
「え、まじか。」
俺が右手に持っていた紙袋に、名木ちゃんの視線が向く。
「どうしたのそれ、可愛い袋だね。」
「これ?」
白地にパステルカラーで雪の結晶モチーフの模様が入ったショッピングバッグを、自分の机に置く。
「えーと…。」
「何だよ三浦、また女の子からプレゼント?」
渡辺さんが絡んでくるので、肩をすくめて応じる。
「そんなしょっちゅう貰いませんよ。芸能人じゃあるまいし。」
「こないだ映画の券貰ってたじゃん。」
「あれは…」
うっかりくれた物だと思って勘違いした事を思い出して気まずくなる。
「映画、楽しかった?」
「え、はい。」
「ふうん。」
「…?」
口元を緩めた渡辺さんが何を考えているのかよく分からず、とりあえず自分の席に戻ってPCを起動させた。
「佐伯さあ、随分と三浦に懐かれたよな。」
唐突にナベさんがそう言うもんだから、危うく書きかけのメールの送信ボタンを押しそうになってしまった。
「何ですか、急に…」
「いや、最近一段と仲良くなったなと思って。よくお前んとこに仕事の相談にも来るし。」
にやにやしながらナベさんがこちらを見る。
「結局、映画デートも行ってきたんだもんなー?」
「行けって言ったの自分やないですか…。それに、仕事の相談くらいするでしょ。教えてるの俺なんですから。」
「それはそうだけど。すっかり壁が無くなったなと思って。」
「え、三浦の?」
ナベさんは呆れた様に、俺の額を軽く指で突いた。
「お、ま、え、の。」
「へ?俺?」
つつかれた額をさする。
「俺、三浦に壁作ってたかな…?」
「別に三浦相手だけじゃないけど、深入りしないように距離置く癖あるだろ。あれ無意識なの?」
どき、と心臓が気まずい音を立てる。
「…ナベさん、意外と人の事見てますね。」
PC画面に目線を戻す。さっさと文章をまとめ、誤字が無いか必死で目を凝らす。
「いや、俺もさー…最初は、佐伯って意外と人見知りなんだなってくらいに見てたんだけどさ。」
「そうですね、確かに人見知りはします。」
メールの送信先を入力する。何となく、早く話を切り上げなければまずい気がして焦る。―だって。
「あのさ。」
ナベさんは。
「違ったら、悪いんだけど。」
―勘が、良い。
「佐伯、ひょっとして三浦のこと好きだったりする?」
ガタン、と椅子が大きな音を立てた。右隣りの席に座っていた名木ちゃんが、びっくりして俺を見る。
「…っ、ちょっと俺、出てくるんで!」
「え、どこに?」
「得意先にアポイント取ってあるから!そのまま直帰します。お疲れ様です!」
「お、お疲れ…」
脱いで椅子に掛けていたジャケットを掴み、鞄を手に逃げるように営業フロアを出た。
―匠海―
「戻りましたー。」
定時ぎりぎりに外回りから戻り、先輩たちに声をかける。
「…あれ、佐伯さんは?」
会議資料作りに四苦八苦している名木ちゃんに声をかけると、何故か困った様な顔をされた。
「ええと…さっき、営業先に出て行ったよ。直帰するって。」
「え、まじか。」
俺が右手に持っていた紙袋に、名木ちゃんの視線が向く。
「どうしたのそれ、可愛い袋だね。」
「これ?」
白地にパステルカラーで雪の結晶モチーフの模様が入ったショッピングバッグを、自分の机に置く。
「えーと…。」
「何だよ三浦、また女の子からプレゼント?」
渡辺さんが絡んでくるので、肩をすくめて応じる。
「そんなしょっちゅう貰いませんよ。芸能人じゃあるまいし。」
「こないだ映画の券貰ってたじゃん。」
「あれは…」
うっかりくれた物だと思って勘違いした事を思い出して気まずくなる。
「映画、楽しかった?」
「え、はい。」
「ふうん。」
「…?」
口元を緩めた渡辺さんが何を考えているのかよく分からず、とりあえず自分の席に戻ってPCを起動させた。
21
あなたにおすすめの小説
オメガはオメガらしく生きろなんて耐えられない
子犬一 はぁて
BL
「オメガはオメガらしく生きろ」
家を追われオメガ寮で育ったΩは、見合いの席で名家の年上αに身請けされる。
無骨だが優しく、Ωとしてではなく一人の人間として扱ってくれる彼に初めて恋をした。
しかし幸せな日々は突然終わり、二人は別れることになる。
5年後、雪の夜。彼と再会する。
「もう離さない」
再び抱きしめられたら、僕はもうこの人の傍にいることが自分の幸せなんだと気づいた。
彼は温かい手のひらを持つ人だった。
身分差×年上アルファ×溺愛再会BL短編。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる