想いの名残は淡雪に溶けて

叶けい

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第四話 気づいてしまった

Chapter11

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―怜二―
「佐伯さあ、随分と三浦に懐かれたよな。」
唐突にナベさんがそう言うもんだから、危うく書きかけのメールの送信ボタンを押しそうになってしまった。
「何ですか、急に…」
「いや、最近一段と仲良くなったなと思って。よくお前んとこに仕事の相談にも来るし。」
にやにやしながらナベさんがこちらを見る。
「結局、映画デートも行ってきたんだもんなー?」
「行けって言ったの自分やないですか…。それに、仕事の相談くらいするでしょ。教えてるの俺なんですから。」
「それはそうだけど。すっかり壁が無くなったなと思って。」
「え、三浦の?」
ナベさんは呆れた様に、俺の額を軽く指で突いた。
「お、ま、え、の。」
「へ?俺?」
つつかれた額をさする。
「俺、三浦に壁作ってたかな…?」
「別に三浦相手だけじゃないけど、深入りしないように距離置く癖あるだろ。あれ無意識なの?」
どき、と心臓が気まずい音を立てる。
「…ナベさん、意外と人の事見てますね。」
PC画面に目線を戻す。さっさと文章をまとめ、誤字が無いか必死で目を凝らす。
「いや、俺もさー…最初は、佐伯って意外と人見知りなんだなってくらいに見てたんだけどさ。」
「そうですね、確かに人見知りはします。」
メールの送信先を入力する。何となく、早く話を切り上げなければまずい気がして焦る。―だって。
「あのさ。」
ナベさんは。
「違ったら、悪いんだけど。」
―勘が、良い。
「佐伯、ひょっとして三浦のこと好きだったりする?」
ガタン、と椅子が大きな音を立てた。右隣りの席に座っていた名木ちゃんが、びっくりして俺を見る。
「…っ、ちょっと俺、出てくるんで!」
「え、どこに?」
「得意先にアポイント取ってあるから!そのまま直帰します。お疲れ様です!」
「お、お疲れ…」
脱いで椅子に掛けていたジャケットを掴み、鞄を手に逃げるように営業フロアを出た。

―匠海―
「戻りましたー。」
定時ぎりぎりに外回りから戻り、先輩たちに声をかける。
「…あれ、佐伯さんは?」
会議資料作りに四苦八苦している名木ちゃんに声をかけると、何故か困った様な顔をされた。
「ええと…さっき、営業先に出て行ったよ。直帰するって。」
「え、まじか。」
俺が右手に持っていた紙袋に、名木ちゃんの視線が向く。
「どうしたのそれ、可愛い袋だね。」
「これ?」
白地にパステルカラーで雪の結晶モチーフの模様が入ったショッピングバッグを、自分の机に置く。
「えーと…。」
「何だよ三浦、また女の子からプレゼント?」
渡辺さんが絡んでくるので、肩をすくめて応じる。
「そんなしょっちゅう貰いませんよ。芸能人じゃあるまいし。」
「こないだ映画の券貰ってたじゃん。」
「あれは…」
うっかりくれた物だと思って勘違いした事を思い出して気まずくなる。
「映画、楽しかった?」
「え、はい。」
「ふうん。」
「…?」
口元を緩めた渡辺さんが何を考えているのかよく分からず、とりあえず自分の席に戻ってPCを起動させた。
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