Please,Call My Name

叶けい

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第六話 君には笑顔が似合う

scene23 きっかけ

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―眞白―
『休憩入ります』と書いた付箋をデスクに貼り、制服代わりのエプロンを脱いで畳む。眼鏡も外し、ケースに片づけた。
カウンターから出て広い階段を降り、出入り口そばにあるカフェスペースで待っているはずのハルの姿を探す。利用客はそこそこ多かったけれど、金髪の長身はすぐ目についた。
カウンター席で窓の方を向いて座っているハルの肩を後ろから叩く。気づいて顔を上げたハルが、自分の前に置いていたマグカップを俺の前に置いた。
「(ちゃんとミルク入れたで)」
「(ありがと)」
隣に座り、ハルが買ってくれたコーヒーをすする。
二口ほど飲んでカップを置くと、横から指が伸びてきて、とんとん、とテーブルを叩いてきた。ハルの方を向く。
「(大知くんと何があったん?)」
だいち、とハルの指が動くのを見て体が硬くなる。
「(何で……何か言ってた?)」
「(練習に全然集中してへんくて、奏多に怒られとったわ。どうしたんかなと思って声かけたら、眞白のこと怒らせたって。もう連絡してくるなって言われて理由も聞かれへんて)」
ハルの顔つきが若干、険しくなる。
「(何でそんなこと言ったん?)」
何でもないと誤魔化して逃げたかったけれど、練習に集中できていない、と聞いて激しく胸が痛んだ。
「(大知くんは、何も悪くないねん……)」
ハルに、あの日の出来事を順を追って伝える。
「(大知くんと一緒におるとしんどい、気持ちがめちゃくちゃになる。大知くんのこと知れば知るほど、距離を感じて……)」
うまく言い表せずに手を下ろす。温くなったコーヒーカップに手を添え、意味もなく取っ手を摘む。
「(……でも、やっぱり俺があかんかった。本も返せてないし。ハル、代わりに返して来てくれへん?)」
聞くと、はあ?と言うようにハルの口が開いた。
「(あかんやろそれは。謝って、ちゃんと自分で返してこな)」
「(だって……)」
感情的になって大知くんに送ってしまった一文が頭に浮かぶ。
「(あんな事送って、自分から連絡なんかできひん)」
「(俺が返したらほんまに二度と大知くんの顔見れへんで。それでええの?)」
聞かれ、首を横に振る。何か思いついた様にハルが手を合わせた。
「(よし、なら大知くんに会いに行こ)」
「(何言うん、仕事場とか練習室なんか行かれへんで)」
ハルは、違うって、と顔の前で手を振った。
「(ちゃんと大知くんに会わせたるから)」
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