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関ヶ原合戦の忖度
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関ヶ原に到着後、二人は古戦場とされるあたりをうろついていた。
波子「なんだ、山と田んぼで普通じゃん」
堂田「そりゃそうでしょう、ずっと戦争してたまんまじゃないんですから」
波子「君が関ヶ原だ、合戦だとかはしゃぐから何か違うのかと」
堂田「あれが松尾山かあ」
波子「その山で何かあったわけ?」
堂田「何いってるんすか!小早川秀秋が布陣した山じゃないですか!知らないんですか?小早川秀秋」
波子「知ってるよ、それくらい。確か秀吉の甥っ子だろう?家康に鉄砲かまされて寝返ったやつだろう?」
堂田「おおっそれくらいは知ってましたか!その事件の事を問鉄砲というんですよ。」
波子「で寝返ったんだよな。裏切ったことで寝覚めが悪くて、酒に溺れて早死したとか聞いたことがある」
堂田「まあそうなんですが、この山で鉄砲うったって寝返りのススメだなんて思うかな?」
波子「戦争中だしなあ。昔の鉄砲だそんなに飛ばないだろうし」
堂田「そう!そうなんすよ。で問鉄砲はなかったっていう話もあるんすよ」
波子「あったか、なかったか?また歴史オタクの聖徳太子はいなかったみたいな実在、非実在論争みたいなやつかい?」
堂田「いえ、関ヶ原合戦の時代に近い、古い資料を集めて、江戸時代に作られた軍記モノを改めて見直すと、問鉄砲とか小早川と吉川、毛利の動きが後付け要素が判明したって事です。」
波子「歴史解釈なんてのは常に後付けだと前に言わなかったっけ?」
堂田「解釈っていうか、確定事実を浮かび上がらせて、後から挿入されたり付け足されであろう部分を指摘していくって事です。古い解釈に対して新しい解釈をつけるわけじゃないです」
波子「つまり、根本のテキストが違う?」
堂田「そうです。古代の話みたいに古事記と日本書紀の読み方や解釈を変えるわけじゃなくって、新たに発見された同時代資料をもとに組み立てるっていうか」
波子「新たにか。」
堂田「通説っていうのは、政権がまとめた歴史か、講談とかで人口に膾炙されたものなんです。」
波子「講談だから嘘だってわけ?」
堂田「いや嘘って言うんじゃなく、どこかで誰かが面白くなるように付け足したり、逆に立派に見えるように削除したりされてるんですよ」
波子「面白くっていうのは、まあいいとして立派に見えるってのは?」
堂田「徳川史観ですから」
波子「徳川の悪口は削除ってこと?大老とか老中が検閲するのか?」
堂田「検閲かどうかはわからないですけど、講談とか軍記モノを作る作家たちも幕府に文句を言われないようにはするんじゃ?」
波子「今流行りの忖度だな」
堂田「まあ、そういうこともあったりするでしょうし、関ヶ原に参加した人達の子孫が自分の祖先の手柄を大きくしたいとか」
波子「直後には言われてないけど何十年か語られるうちに大きな手柄に変化したりするっての?」
堂田「あるんじゃないですかね?」
波子「まあ、直後ってのは当事者以外には何もわからないもんだからなあ。この前の本能寺の話にしたって、兵のレベルじゃ徳川家康を殺しに行くつもりだったとかいう記録もあったみたいだしなあ」
堂田「そうでしょ!」
波子「でもね、総括された文書は、勝者の都合である反面、嫌でも総括をしなくちゃいけないのが勝者の、っていうか生き残った者の責務でもあるわけだ」
堂田「だから勝者からの歴史ってなるわけですよね」
波子「まあそうだろうけど大筋は変更なんてできないだろう?それに最初の段階で嘘や知られたくない事実を挟んだって当事者もたくさんいるんだから難しいだろう?」
堂田「事件や戦争を無かったことにするのは難しいけど、理由を隠したり美化することはできるでしょう?」
波子「理由なんてのは、人それぞれだからね。同じ戦争に参加したからってみんな同じ理想を見てたり同じ未来を予測してるわけじゃない。関ヶ原に何万人参加したかしらないが参加者の数だけ理由があるわけだろ?」
堂田「また屁理屈を。でも当時の人がどういうつもりでいたのか、どう理解してたのかは新資料からでないとわからないでしょう?」
波子「家康殺すつもりが信長殺しちゃったとか?」
堂田「まあそうです」
波子「総括するのは、今で言うと官僚さんだろ?官僚ってのは何時の時代もばれる嘘はつかない。常識だよ。」
堂田「家康とか徳川家、幕府重鎮に遠慮はあるでしょう?」
波子「わからない奴だなあ。嘘はつかないけどほんとのことも書かないんだよ、官僚って奴らは。突っ込まれて回避できる嘘しかつかない。皆が司馬遷じゃないよ。でもね、歴史に関わる以上、司馬遷の故事は知ってたはずだ」
堂田「官僚や御用学者の書くことは信用できると?」
波子「と、いうかさあ、それが基本だろう?その前提なしじゃ歴史そのものが成り立たない。何度もいうけど、タイムマシーンでもない限り、我々は文字を通してしか過去を知ることはできない」
堂田「それを言ったら、、、」
波子「君のいう後世付け足された講談物や軍記物と、幕府の総括を一緒にしては駄目だってことだよ」
堂田「勝者だろうが敗者だろうが出来事の基本は同じはずじゃないか?」
波子「殺人事件を例にとると、何故殺したのかは色々あるだろうけど、どうやって殺したのかは一つしかないってことだよ」
波子「なんだ、山と田んぼで普通じゃん」
堂田「そりゃそうでしょう、ずっと戦争してたまんまじゃないんですから」
波子「君が関ヶ原だ、合戦だとかはしゃぐから何か違うのかと」
堂田「あれが松尾山かあ」
波子「その山で何かあったわけ?」
堂田「何いってるんすか!小早川秀秋が布陣した山じゃないですか!知らないんですか?小早川秀秋」
波子「知ってるよ、それくらい。確か秀吉の甥っ子だろう?家康に鉄砲かまされて寝返ったやつだろう?」
堂田「おおっそれくらいは知ってましたか!その事件の事を問鉄砲というんですよ。」
波子「で寝返ったんだよな。裏切ったことで寝覚めが悪くて、酒に溺れて早死したとか聞いたことがある」
堂田「まあそうなんですが、この山で鉄砲うったって寝返りのススメだなんて思うかな?」
波子「戦争中だしなあ。昔の鉄砲だそんなに飛ばないだろうし」
堂田「そう!そうなんすよ。で問鉄砲はなかったっていう話もあるんすよ」
波子「あったか、なかったか?また歴史オタクの聖徳太子はいなかったみたいな実在、非実在論争みたいなやつかい?」
堂田「いえ、関ヶ原合戦の時代に近い、古い資料を集めて、江戸時代に作られた軍記モノを改めて見直すと、問鉄砲とか小早川と吉川、毛利の動きが後付け要素が判明したって事です。」
波子「歴史解釈なんてのは常に後付けだと前に言わなかったっけ?」
堂田「解釈っていうか、確定事実を浮かび上がらせて、後から挿入されたり付け足されであろう部分を指摘していくって事です。古い解釈に対して新しい解釈をつけるわけじゃないです」
波子「つまり、根本のテキストが違う?」
堂田「そうです。古代の話みたいに古事記と日本書紀の読み方や解釈を変えるわけじゃなくって、新たに発見された同時代資料をもとに組み立てるっていうか」
波子「新たにか。」
堂田「通説っていうのは、政権がまとめた歴史か、講談とかで人口に膾炙されたものなんです。」
波子「講談だから嘘だってわけ?」
堂田「いや嘘って言うんじゃなく、どこかで誰かが面白くなるように付け足したり、逆に立派に見えるように削除したりされてるんですよ」
波子「面白くっていうのは、まあいいとして立派に見えるってのは?」
堂田「徳川史観ですから」
波子「徳川の悪口は削除ってこと?大老とか老中が検閲するのか?」
堂田「検閲かどうかはわからないですけど、講談とか軍記モノを作る作家たちも幕府に文句を言われないようにはするんじゃ?」
波子「今流行りの忖度だな」
堂田「まあ、そういうこともあったりするでしょうし、関ヶ原に参加した人達の子孫が自分の祖先の手柄を大きくしたいとか」
波子「直後には言われてないけど何十年か語られるうちに大きな手柄に変化したりするっての?」
堂田「あるんじゃないですかね?」
波子「まあ、直後ってのは当事者以外には何もわからないもんだからなあ。この前の本能寺の話にしたって、兵のレベルじゃ徳川家康を殺しに行くつもりだったとかいう記録もあったみたいだしなあ」
堂田「そうでしょ!」
波子「でもね、総括された文書は、勝者の都合である反面、嫌でも総括をしなくちゃいけないのが勝者の、っていうか生き残った者の責務でもあるわけだ」
堂田「だから勝者からの歴史ってなるわけですよね」
波子「まあそうだろうけど大筋は変更なんてできないだろう?それに最初の段階で嘘や知られたくない事実を挟んだって当事者もたくさんいるんだから難しいだろう?」
堂田「事件や戦争を無かったことにするのは難しいけど、理由を隠したり美化することはできるでしょう?」
波子「理由なんてのは、人それぞれだからね。同じ戦争に参加したからってみんな同じ理想を見てたり同じ未来を予測してるわけじゃない。関ヶ原に何万人参加したかしらないが参加者の数だけ理由があるわけだろ?」
堂田「また屁理屈を。でも当時の人がどういうつもりでいたのか、どう理解してたのかは新資料からでないとわからないでしょう?」
波子「家康殺すつもりが信長殺しちゃったとか?」
堂田「まあそうです」
波子「総括するのは、今で言うと官僚さんだろ?官僚ってのは何時の時代もばれる嘘はつかない。常識だよ。」
堂田「家康とか徳川家、幕府重鎮に遠慮はあるでしょう?」
波子「わからない奴だなあ。嘘はつかないけどほんとのことも書かないんだよ、官僚って奴らは。突っ込まれて回避できる嘘しかつかない。皆が司馬遷じゃないよ。でもね、歴史に関わる以上、司馬遷の故事は知ってたはずだ」
堂田「官僚や御用学者の書くことは信用できると?」
波子「と、いうかさあ、それが基本だろう?その前提なしじゃ歴史そのものが成り立たない。何度もいうけど、タイムマシーンでもない限り、我々は文字を通してしか過去を知ることはできない」
堂田「それを言ったら、、、」
波子「君のいう後世付け足された講談物や軍記物と、幕府の総括を一緒にしては駄目だってことだよ」
堂田「勝者だろうが敗者だろうが出来事の基本は同じはずじゃないか?」
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