ペールブルーアイズ

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ペールブルーアイズパートⅠ

ペールブルーアイズ

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「ペールブルーアイズ」

主な登場人物
飛鳥共生文化女子大探偵団団員又は付属校の生徒
柚木マユ、二十歳、二年生
横田祐子、二十一歳、副団長の三年生
本山彩子、二十歳、二年生 
渋沢仲子、十九歳、一年生
小山田律子、二十歳、二年生
森崎ゆりあ、十九歳、一年生
萌木ひかり、十八歳、高校三年生
北山涼子、十八歳、高校三年生
西野桜子、十七歳、高校二年生

島本春香、十八歳
よね、七十歳、島本家の使用人
 
JPBイレブンのメンバー
瑠璃華、十八歳
絵夢、十八歳
加奈、十七歳
竹内、十八歳

柚木美紀、二十五歳、荒波署の鑑識員
新山大成、二十八歳、荒波署の刑事
山田三郎、五十一歳、荒波署の主任刑事 
木佐貫、三十五歳、ブックメーカーIDの社員  


埠頭に当たる弱い波が静かな音を立てているだけのその穏やかな海は何も起きずに、只時だけが過ぎて行く様に見える。その穏やかな海に女子大生の島原と井江田が埠頭にに座って釣り糸を垂れている。二人は先輩と後輩の間柄だが、女子大の中に事務所を構える女子大生の探偵団の団員でもある。大漁にはなっていない様で島原は退屈そうであるが、井江田はと言うと一心不乱は言い過ぎだとしてもじっと黙って浮きを見つめている。
「釣れないな、場所変えようか」と言う島原に
「はいー」と素直に答える井江田。
「井江、今日は素直だな」
「普通は素直ですよ」
「そうか―思い込みが激しいだけか」と言ってリールを巻き上げ出す島原。
井江田も続いて巻き上げ出すがその手は直ぐに止まって仕舞う。そして
「引いてます。凄いです」と静かな埠頭にそぐわない、奇妙なくらいに響く大きな声を上げる井江田。その声に
「地球釣ったんじゃねえか―」と少し顰めた顔を井江田に向けて言う島原。
「でも、動いてます」
その声に必死に巻き上げる井江田から、その釣り糸が垂れる海に目を向ける島原。
大きな物が上がって来る。
最初は人形に見えたそれは引き寄せれば寄せる程、人形ではなく人間になっていった。
正直、人形でいて欲しかった。だが、もおそれが叶わない事と知った島原は声も無く死体を凝視するだけである。井江田としても勿論その方が良かったのだが、井江田は奇妙なくらい必死で死体を引き寄せていた。
それが若い女性である事を確かめないといけないかの様に―。
もっと詰めて言えば、それに拠って事件と物語を誕生させないといけないかの様にー。


大きなスタジアムは大観衆で満たされているが、今日は野球ではなくて人気断トツのナンバーワンアイドルグループ、JPBイレブン、略してJPBのライブで盛り上がっている。そのステ-ジは丁度最高潮に達している様で、メンバーが花道に繰り出すとメンバーのタオルを振ったり名前を書いた団扇を掲げたりして盛り上がっている大観衆から大声援が湧き上がる。それの異様な程の大きさが現在のJPBの人気の絶頂度を示しているが、その中で際立つ、瑠璃華、と言う声援はこのグループの現在の在り様を示していた。


ブックメーカーID、有り体に言えば賭け屋さんIDと言う事だが、IDの方は主力事業である「アイドルダービー」を略したものである。そのブックメーカーIDは新興企業の一つで、都内のそれなりのビルのワンフロアを占有している。その内装も如何にも新興企業のそれらしい砕けた物でなかなかいい感じであるが、デスクに向かっている社員からは業績低迷の影響か何か覇気が感じられない。それでもそのフロアの一角に大きなモニターが置かれているそこそこ洒落た休憩スペースは、モニターがJPBの生配信のライブ映像を映している所為なのかも知れないし集まって来る人間の所為なのかも知れないが、確かに他とは何か違った空間を作っている。今は社員の木佐貫と田島がお茶を飲みながら、モニターとその横のアイドルのランキングとそれによって変動する払い戻しの倍率が表示されているボードの方に目をやっているのだが、モニターの方に視線を置いたままの田島が口を開く。
「オリンピックが盛り上がって一息つけましたけど、本業のアイドルダービーがこの有り様じゃあお先真っ暗ですね」。すると、センターの瑠璃華から視線を外さずに木佐貫が返して来る。
「経済対策の一環で五輪の全ての競技を賭けの対象に出来たのはラッキーだったけど、終って仕舞えば終りだから如何し様もねえよな」 
「JPBに瑠璃華、絵夢、加奈の三人が現れて不動のスリートップを形成してからは、賭けとして殆ど終ってますからね、アイドルダービーは―」
モニターに大きく映っている三人は、三人がスリートップと言われているのを納得させてくれる物ではある。  
「ずっとこのワントウスリーで、しょぼい払い戻しだもんな」とモニターを見続けている木佐貫が呟くと
「この方がトップなのは絶対不変と言うか、山の様に不動なんでしょうね」と皮肉っぽく応える田島。
モニターはアップになっている瑠璃華を映している。すると、木佐貫が再び
「完全無欠のスーパーアイドルか、―確かに可愛いわ」とその映像と田島に応える様に皮肉っぽく呟く。
少し引いたショットになり全員が映る中で瑠璃華がセンターで唄う姿をモニターは映しているが、モニターの音声は音よりも映像が大事と言う事なのか低く抑えられている。その所為もあって、山川の
「化けの皮一枚剥げばとんでもない女だって言う噂、最近ネットで拡散しましたよね」
と言う声が、明瞭に響いて来る。
いつの間にかコーヒーカップを持って傍らに立っている山川の方を見る木佐貫と田島だが
「どうせガセネタでしょ」と田島が反応する。
「嫌、妙なくらいリアルなんでJPBのメンバーの誰かが書き込んだんじゃないかって言う噂が拡がってるんですよ」と返す山川。
「本当にですか、信じれないですけど―」と言う田島の言葉は先輩である山川に一応の気を遣っただけの物である。田島もそう言う噂は耳にした事はあったが、この国の大多数と同様にその山川の言葉より目の前のモニターで唄っている完全無欠のスーパーアイドル、穢れを知らない様に見える美少女、瑠璃華の方を信じきっていた。
木佐貫も田島同様モニターに視線を戻しているが、瑠璃華の方を冷たく見つめて
「でもそれが本当で瑠璃華の人気が急落したら月間の方は兎も角、スーパーファイナルが大変な事になるかも知れねえな」と言う言葉を吐く木佐貫。
今日の場の雰囲気と自分が振った話題とが何となく合っていないと感じた様な山川が話題を変えて来る。
「それにしても盛り上がってませんな、もう直ぐ今月のリザルトの発表でしょ」
その山川に気を遣ってか田島が対応する。
「此処に人が集まって来て鈴なりになっていたのが、大昔の事のようですね」
その田島の言葉にシニカルな笑いを木佐貫と山川が、其々浮かべていると、若手女性社員の堀が鯛焼きを載せた皿を持って来る。テーブルの上にそれが置かれると、先輩二人の皮肉っぽい笑いに対して、自嘲的な笑いを浮かべる田島が
「差し入れ」と言うより早くそれを取って食べ始める。続いて木佐貫と山川もそれを取るが堀の 
「ブルースターズの副社長の立川さんからです」と言う言葉に、山川の手が止まり
「来てたの―。JPBか、食う気しねえな」と呟く。
「此処の鯛焼きホント美味しいですよ」と言う堀の言葉に山川は反応しないが、田島はムシャクシャ食いながら
「戴いてまーす」とモニターにと言うより、それの中央の瑠璃華に言う。
JPBのライブはアンコールに入っている様で、瑠璃華が中央でバラード曲のソロパートを唄っている。
山川は言葉とは違ってパクパクと鯛焼きを食っていて、木佐貫だけがまだ鯛焼きを手にに持っている。持っていても仕方がないので木佐貫もそれを食べ始めるが、その様子は何故食べているのかが判らないくらい美味しそうに見えない物で、まるで義務か何かのである。


ライブを終えて早く楽屋に引けて来たJPBのメンバーが水を飲んで何やら雑談を始めた様だが、その表情は真剣で唯の雑談ではない様である。

そのメンバーの一人である後藤の
「竹内さん今日も現れなかったね」と言う言葉がそれを示していた。
「如何しちゃったんだろうね―」と少し心配そうに家木が言うと、二人の間に湯本が割って入って来て
「瑠璃華さん達とトラぶったって言う噂よ」と言う。
「仲が好い川本さんに、何かあったんですかって聞いても、知らない、だけだったですけどねー」
と後藤が言うと、家木が被って来る。
「此処で瑠璃華さん達とトラぶったら生きていける訳ないじゃん」
「ホントだったら大変な事ですよね」と言って既に戻って来ている川本を見る後藤。川本も後藤達の方に何となく沈んだ顔を向けている。その両方の視界に本村に続いて瑠璃華のシンパである駒田と山内の姿が入って来る。次に鼻歌交じりの加奈と冷たい表情の絵夢が現れる。そして瑠璃華の姿が見えると場が静かになる。実際楽屋はJPBのメンバーが十人居るだけで、小さく観客の歓声がまだ聞こえてるにせよ五月蠅い訳でも何でもなくて静かと言っていい位なのだが、瑠璃華のグループにおける存在感がそう感じさせた。駒田が紙コップに注いだミネラルウォーターを飲む瑠璃華と加奈と絵夢。加奈と絵夢は直ぐに座るが瑠璃華はそれを一口飲むとテーブルに置いて既に目を逸らしている後藤達に冷たい視線を送ってから川本の方を見る。変わらず沈んだ顔の川本は目を合わせる訳でもなく逸らせる訳でもない。


ブックメーカーIDのモニターの前には変わらず木佐貫達三人が陣取っていてその前のテーブルには空になった皿がある。モニターはかなり大きな会場でアイドルの月間人気ランキングの結果発表を、MCの男女が行っている様子を映している。十五位からの順位が発表されるが既に十一位の家木まで発表されていて、それが表示ボートにグループ名と共に示されている。十二位から十五位まではJPB以外のアイドルグループのメンバーがランキングされているが、家木とは表示されているポイント数にかなりの開きがある。十位に後藤の名前が呼ばれると会場を埋め尽くしている殆どがJPBのファンと思われる観客からそれなりの歓声が上がる。そして湯本、本村、川本の名前が順に呼ばれていくと、それがそれなりに大きくなる。
「川本ちゃんが順位を上げただけか」と木佐貫が呟くと、山川か
「JPB、メンバーを十五人に増やすそうですね」と木佐貫に確認する様に言って来る。   
次に駒田と山内の名前が呼ばれ、四位に竹内の名前が呼ばれると発表会場のモニターが竹内の顔のアップになるが、モニターでもそれを大きく映して殆ど竹内の顔になっている。

一方、埠頭ては船舶に死体が引き上げられている。
遠目であるがその死体の顔と、モニターの竹内の顔がだぶって来る。

続いて三位に加奈、二位に絵夢、トップに瑠璃華とお決まりの順位が発表され賭けの対象になる一位から七位までの順位を当てるスーパーセブンの結果が出て考えれないほど低い払い戻しの倍率が表示される。すると山川を一瞥しただけの木佐貫に代わって田島がスーパーセブンの結果をスルーして喋り出す。
「結局ブルースターズってスーパーセブンファイナルのファイナリストの十五のポジション、JPBが全部独占しないと気が済まないんでしょうね」
「今月も殆ど利益出てないだろ、ひょとしたら赤字かも知れない。そんな中で山川の言ってる事がホントだったらスーパーファイナルが恐ろしくなるよ。もう内の只一つの収益源だからな」と木佐貫が田島を無視して来たるべきスーパーファイナルに危機感を持って喋り出すと、田島も気を使ってか擦り寄って来る。
「スーパーファイナルはノックアウトステージがありますからね―」
「今年は面白くなるかも知れないですよね、たまには波乱に富んだノックアウトステージを見たいもんです」
と最近のつまらないスーパーファイナルに皮肉を込めて冗談半分に山川が発言すると、木佐貫が
「馬鹿言うな、スーパーファイナルで大きな波乱が起きればもう内は終わりかもしれねえぞ」
と少し山川を睨んで苦言を呈する。山川が少し顔は顰めるが何も答えずにモニターの方に目を移すと、木佐貫と田島もそれに倣った訳ではないが、改めてモニターの方に視線を戻す。
そして、更に木佐貫が言葉を続ける。
「無事に波乱なくスーパーファイナルを終える事が今の内の絶対条件だよ、兎に角この方に予定通りトップに立って貰うしかないね」
モニターを見つめいる様に見える木佐貫だが、頭の中でもたげて来た何かの考えに気を取られた様で、ピントがずれていて何も見ていない様にも見える。
兎に角、視線を向けられているモニターでは瑠璃華がアップになっていて、完璧 過ぎる笑顔を作っている。


静かな波の音が立つ埠頭には警察車両と救急車がやって来ていて、それなりの野次馬も集まって来ている。そこに引き上げられた死体を鑑識がチェクしているが、其れはまだ其れが竹内であるとはっきり判る状態である。その様子を県警の刑事である明石と鳥谷が上から眺めていて、その後ろには島原と井江田の姿もある。
「事故か自殺ですかね」と鳥谷が明石に問うと
「如何ですかね」と鑑識に聞く明石。
「外傷が無いですし溺死の様に見えますけどね―」と鑑識が答えていると、勝手にと言うよりは自然に前に出て来た島原と井江田が死体を見つめている。
「この女の子、JPBのメンバーの子にそっくりと言うか―」と言う島原の言葉に
「本人としか言い様が無いですよ」と駄目を押す井江田。
「JPBって―今断トツ人気のアイドルグループだよね」と言う明石に、ゆっくりと当たり前ですと言う風に頷く島原と井江田。


深夜にJPBが所属する事務所、ブルースターズが入るビルの前にバスが停まりJPBのメンバーが降りて来ると、待ちかねた記者達が寄って来る。そして、手当たり次第メンバーに質問を飛ばして来る。
「今のお気持ちは」とか「自殺だと思われますか」等と言う質問に何も答えずビルの中に消えて行くメンバー達。しかし、加奈が捕まって仕舞い記者に
「何か悩んでたみたい、と書き込まれてましたが―」と言う質問を浴びせられる。
嫌な顔をするだけで何も答えない加奈に
「悩んでたって事ですけど、何か具体的な事はないですか」
と記者が続けると、マネージャーの黒石が割って入って来て
「今は何もお答えできません」
と甲高い声で言う。そして、加奈を先に行かして自分は後を手で記者を抑えながら急ぎ足でビルの中に入って行く黒石である。


この国を象徴するアイドルグループに悲劇が起こった翌日の飛鳥共生文化女子大探偵団の事務所では 本山と小山田と渋沢がテーブルを囲んでのんびりとした様子で雑誌を見たりスマホを弄ったりしながらお茶を飲んでいる。
その和み切った三人の様子が与えるのは、依頼など金輪際来ないと思っている様にしか見えないと言う物である。
それは、先輩団員に当たる小嶋が入って来ても、何ら変わる事はない様である。
小嶋は本山と渋沢の向かいに席を着くと、持っていたスポーツ新聞を拡げて裏一面の競馬予想を見始める。
その結果、本山と渋沢には一面が目に入って来る様になる。その一面は
「スーパーアイドルグループ、JPBイレブンの中心メンバー、竹内美侑さん溺死体で発見される」
と言う大見出しと、その下に続いているかなり小さい
「発見した美人女子大生二人に独占インタビュー」と言う見出しと竹内の大きな写真、それに二人の女子大生、島原と井江田のそこそこの大きさの写真と記事とで成っている。
「小嶋さんもお茶飲みますよね」と本山が声を掛けると
「ああ悪いわね」と答える小嶋。
本山がそれを渋沢に促すと、少し口を膨らまして恍けた顔を作る渋沢に
「詰まらんわ」と本山が先輩風を吹かして言って、渋々渋沢を立ち上らせる。
予想表に目をやっている小嶋に並んで座る感じになった小山田が、新聞の方を見て
「小嶋さんは気晴らしする事があって好いですね」と言う言葉を投げる。
小嶋は、競馬は気晴らしではないのか小山田を一瞥するだけで何も語らず新聞を見続ける。
「あっ、載ってますよ」と一歩、歩き出した渋沢が新聞を指差して言う。その言葉に
「載ってるって」と言って身を乗り出して新聞の一面の方を見る小山田。
「あー、島原と井江田」と声を上げる本山。
「美人女子大生やって」と結構笑って言う小山田。
「何処がやねん」と本山。
「何やねん」と言って新聞をひっくり返してその写真、沢山のマイクを向けられた島原と井江田がインタビューに答えている写真、何処が独占インタビューやと突っ込みたくなる様な写真を見る小嶋。
「知らないんですか、井江梨奈がとんでもないもの釣り上げたの」
と本山が言うと、小嶋が新聞を見ながら答える。
「あの子、色々やってくれはるわね」
「それがJPBのメンバーだったなんて吃驚ですよね」
と小田山が横目で小嶋を見て言うと、お茶を持って台所から戻って来た渋沢が
「何で死んだかもまだ判ってへんでしょ」と続ける。
「自殺なんやない、最近なんか悩んでみたいたとメンバーの人が言ってはるわ」
と新聞を如何したと言いたくなる程真剣に見続けて言う小嶋に、少し呆れ顔の本山が
「その変な関西弁みたいなの止めて下さいよ」
と言うと事務所のドアが開いて木佐貫が入って来る。
その木佐貫を小嶋達四人が見ると、何となく笑顔になる木佐貫。その木佐貫に
「ご依頼ですか」と尋ねる本山。
すると、ゆっくりと頷く木佐貫である。


かなり広い記者会見場で沢山の記者を前にブルースターズの副社長の立川とJPBの瑠璃華と絵夢と加奈が会見に臨んでいて、立川が所信表明とでも言える言葉を吐いている。
「私達は竹内の死を乗り越えて前に進んで行きます。それが竹内の望んでいる事だと思っていますので―」
立川の言葉を遮って、中堅の記者の中村が強い口調で発言する。
「まだ何も判ってないんですよ」
返す言葉が無いと言った様子の立川。その立川に若手の記者の鬼森が更に厳しい言葉を投げる。
「まだ御葬式も終わってないのに、新しいメンバーを募集するなんて非常識過ぎませんか」
「それはメンバーを十五人にする為に以前から決まっていた事で、それを予定通り実行すると言う事です」
と言う立川を、もお相手にしたくないと言う意思を表すかの様に
「メンバーの方にお聞きします。何人かの方がブログ等に竹内さんが何か悩んでたと書かれてましたけど、具体的にどのような事で悩まれていたのか教えて戴けないでしょうか」と瑠璃華達の方を見て発言する中村。
顔を見合わせる三人だが、まず瑠璃華が絵夢に促す。すると絵夢が促すと言うより命令すると言う様子で加奈に答えさせる。
「―そう言う様子だったのは間違いないですけど、悩みが何だかって事は―そこまで親しくなかったんで」
と加奈が言うと、中村が突っ込んでくる。
「何方が親しかったんですか」
「―真矢―川本ですかね」と言う加奈だが応対に自信が持てず、あたしで好いの、と言う様な顔で瑠璃華と絵夢の方を見る。しかし、二人は何の反応も無く冷たく座っているだけである。
「川本さんにインタビュー出来ませんか」と中村が続けて来る。
「それは、ちょっと―無理です。まだまだ子供でまだ不安定な状態なので―」
と立川が答えると、鬼森が再びメンバーに話を差し戻す。
「メンバーの方は、自殺だと考えられていますか」
「分かりません」と明らかに苛立った様子で加奈が答えると、女性記者の最上が
「あなた、ブログにはっきり自殺だと思うって書かれてましたわよね」と問い質して来る。すると
「あたしのブログ何を書こうがあたしの勝手でしょ」と切れて仕舞う加奈。
渋い顔になっている瑠璃華と絵夢だが、瑠璃華がマイクから離れて
「加奈」と加奈に向かって言って加奈を制する。そして
「私達が答えられるのは、私達は負けないと言う事だけです」
と記者達を真っ直ぐ見て言うと、会場に少し間静寂が訪れる。


探偵団の事務所では本山と小田山がテーブルを介して木佐貫と向き合っていて、お互いソファに座っている。
「あたし達にJPBのオーディションを受けて、何とか受かって潜入捜査して欲しいと言う事ですか」
と本山が言うと、木佐貫が頷いて
「メンバーを十五人に増やす為のオーディションなんだけどね」と言う。
「こんな事があってもやるんですかね」と軽く本山が疑問を投げると
「予定通りやるって事は確認してますから」と言う答えが木佐貫から返って来る。すると小山田が
「あそこのオーディションって、十八歳以下と言う年齢制限があったと思うんです―」と言って本山を見る。
「そうですね」と言う木佐貫に本山が
「高等部の子で受けてくれる子はいると思うんですけど、高等部の子は探偵団員には成れないんですよね―」
と一応申し訳なさそうな感じを出して言う。すると
「あたしならいけると思いません、一つだけサバ読めばいいだけですから」
と変わらず小嶋と共に奥のテーブルに着いている渋沢が、ちょっかいを出して来るが
「探偵団の絶対法令遵守の観点からすると、ちょっと不味いやろ」
と変わらずあまり乗り気でない様子の本山である。
「駄目ですかね―」と木佐貫が言うと
「別にいいんじゃない、危険は無いでしょ。白間ちゃんとか太田ちゃんに受けさせてみたら」
と小嶋も関わって来る。その軽い感じの言葉に、本山が小嶋の方を見て
「大丈夫ですかね」と言うが、小嶋は既に新聞の方に目をやっていて何も答えない。ちょっと無責任に思える小嶋に本山は
「発言には責任もってして貰わんと」とでも言ってやろかと思ったが、小嶋は勿論先輩だし探偵団の中で特別な存在でもある。それに本当はまだ傷も癒えていないかも知れないので、本山は何も言わない事にした。でも本山は何でもいいから言わないといけなかった。ちょっとじゃなくとんでもなく無責任な発言に成長するそれに対して少しでも責任を回避したいのなら何でもいいから言って置いた方が好かった―。しかし、言葉は発せられなかったし、依頼をを断ると言う選択肢も失くして仕舞った。結局少し顔を顰めただけの本山の耳に
「お願い出来ます」
と言う木佐貫の声が入って来た。仕方なく小田山の顔を見る本山だが、小田山は何の反応も無い。
「ええ―。高等部の子に頼んでみます、やってくれる子が見つかれば直ぐにご連絡しますから―」
と言って仕舞う本山。
「色好い返事を期待していますよ、会社の命運が掛かってるかも知れないので」
と立ち上がりながら木佐貫が言うと、本山と小山田も立ち上がる。そして
「努力してみます」と言う本山と、その本山に
「依頼書書いて貰わんと」と言う無難な言葉を掛ける小山田である。
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