最初の事件

MS

文字の大きさ
1 / 6

最初の事件

しおりを挟む
最初の事件

主な登場人物
飛鳥文化共生女子大探偵団団員
高山朝子、二十二歳ー団長、四年生
横田祐子、二十一歳―副団長、三年生
峯山皆子、二十二歳―四年生
柚木マユ、二十歳―二年生
島原雅代、二十一歳―三年生
井江田比奈、二十歳―二年生
中里智世子、二十歳―二年生

潤、七歳
柚木美紀、二十五歳―荒波署の鑑識員、マユの姉
新山大成、二十八歳―荒波署の刑事
山田三郎、五十一歳―荒波署の主任刑事
有三、四十一歳―潤の父
美沙子、三十三歳―有三の妻
里美、三十八歳―有三の前妻
河西、二十五歳―パティシエ


飛鳥文化共生女子大の門を沢山の女子大生が通って校舎の方に歩いている。
その門は新しく建て替えられているが門の名称が書かれた年季の入ったボードは創立の時の物の様で女子大がそれなりの歴史を持っている事を表わしている。
キャンパスの中の建物は全てと言っていい程新しくなっているが、片隅に今にも朽ち果て様かと言う校舎が一つ残っている。
その中の一つの部屋のドアから横田が出て来て手に持っている「飛鳥文化共生女子大探偵団」と書かれた看板をドアに掛ける。
そして確り掛かっているのを確認して部屋の中に戻って行く横田。
その中では小嶋と峯山がお茶をしながら其々好みの雑誌とコミックを見ている。
コミックを見たまま峯山が
「こうやって事務所構えるのはいいけどお客来るんですかね――」
と呟くと小嶋が雑誌から目を離さず
「来ないでしょ―」
とあっさり言い放つと峯山が続ける。
「まあその方が好いですね。お茶の邪魔されてもあれですしね」
「どっちみち副団長がいらっしゃるからあたし達の出る幕ないでしょ」
と言う小嶋の言葉に横田が答える。
「―お客が来れば勿論対応しますけど、小嶋さんと峯山さんがいてくれてはって心強いです」
一度横田を見た小嶋が
「いいお茶のみ場では在るわ―」と言うと峯山が
「高山は来ないの―」と続ける。
「もお来てる筈なんですけど――」
と少し申し訳そうに横田が答えるとドアの開く音がする。
その方を見る三人。
まだ幼い潤が入って来る。
「頼みたい事があるんです」と潤。
無言の三人。
その三人に探偵団が配っているチラシを見せる潤。
立ち上がって潤の前に行きしゃがみ込んで優しく言う横田。
「頼みたい事があるんだ、お名前は」
「潤と言います」と頷いてから答える潤。
「ご依頼は、何かな」と尋ねる横田。
手を差し出してそれを開く潤。
開かれた手の上には五百円玉が乗っている。
「犬を探して欲しいんです」
とやけにはっきり言う潤。
「犬を―それで――」
と五百円玉を見ながら言う横田。
頷く潤。
「五百円はちょっとキツイな」と横田が言うと峯山が
「ふざけたガキだな、五百円じゃ新宿行って戻って来たら終わりだろうが」
と少し厳しい口調で続いて来る。
改めてチラシを見せる潤。
その時ドアが開き「お待ちー」と言って高山が部屋に入って来る。
「丁度いい所に来た、そのガキ摘み出してよ」
と変わらない口調で峯山が言うと高山の
「如何した―」と言う間の抜けた様な声が少しの間空間に漂う。
「そこのガキ、依頼にきたみたい何だけど―」
と峯山の言葉が途切れると
「記念すべき最初の依頼人なんだ」
と言いいながら潤の正面に廻り込んで横田に並ぶ様にしゃがみ込む高山。
すると横田が立ち上がり
「子供には配らん方がええな」
と言ってチラシを取り上げて閉じた手を開かせる。
手の平の上の五百円玉を見て高山が
「これが、あれなの―」と言う。
「お金これだけしか無いんです」
「それだけじゃあ、一寸足りんやろな」
と言う高山の言葉に取り上げられたチラシを指差す潤。
そのチラシの文面には
「お金が無い人でも大丈夫、依頼料相談に応じます」
と言う文言が確り載っている。
峯山が立ち上がって潤の前に行き打って変った優しい口調で
「坊や、こう言う物はこう言う風に書くのに決ってんの、いいから帰んな」
と言って潤の肩に手を掛ける。
その手を払い除ける潤。
一変して怒りの表情に変わった峯山が
「何、このガキ―」と言うのを制して潤に
「そこ座んな」と促す高山。
促された来客用のソファに座る潤。
その向かいに笑顔を作った高山が座ると
「直ぐに犬を探して欲しいんです。必死に探したんですけど見つからなくてプロの人に頼めば見つけてくれると思ったんです」と早口で言い切る潤。
「今から直ぐに―どんな犬だったの―」と聞く高山に
「柴犬で小さくて可愛かったんです」と答える潤。
「午後から空いてるのいる―」
と横田に向かって高山が聞くと少し呆れた様な顔で
「島原と伊江田が開いてる筈ですけど」と返って来る。
他の者はそれぞれ呆れ顔を浮かべているが、一応団長に敬意を表してか何も言葉を発しない。
  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...