最初の事件

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最初の事件

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三十五
遊園地で高い所から落下するアトラクションに高山と潤が搭乗しているのだが楽しそうな潤に対して死にそうな高山の顔が際立っている。
急降下する高山と潤。
ヘロヘロな感じそれから出て来る高山だが、自分の周りをうろちょろしている潤をを少し恨めしそうな目で見ている。その潤と言えば変わらないと言えばそうだが楽しそうかと言えばより楽しそうで上目づかいで高山を見て笑ったりしている。

三十六
黄昏時の女子大のキャンバスを私服姿の柚木が一人で歩いているが、周りの女子大生と意外なくらい結構溶け込んでいる。女子大生の中からマユが現れて何か声を掛けた様で少し柚木が頷く。

三十七
事務所で横田と島原と井江田と中里 がテーブルを囲んでいて誰かを待っている様にも見えるが、只々暇なだけの様にも見える。そこにマユと柚木か入って来てマユの
「お待たせ―」と言う言葉が只々暇なだけの探偵団ではない事を少しだけ証明してくれる。
「姉の美紀です―」と柚木が言うと面識がある横田だけが
「お久し振りです」と言い、他の三人は軽く頭を下げる。その中の一人の井江田の方を促して
「井江ちゃん」と言うマユ。
「枕の事、聞きました」と言う柚木。
「わっ、やっぱり分かる人は判るんだって―」と嬉しそうに言う井江田。
「その枕が犯行に使われた可能性があると思ってて―」と言う柚木の言葉に
「これがその写真です」とスマホの写真を見せる井江田。
そのスマホの縦長の画面に写っている縦長の枕の写真は奇妙と言えば奇妙だがピッタリ嵌ってはいる。

三十八
遊園地で高山と潤が並んでソフトクリームを食べながら歩いている。ただ並んで歩いているだけだがその距離が縮まった事を不思議なくらい感じさせる空気が二人の周りに漂って来ていた。
「次は何処行きたい」と高山。
「またどっか連れってってくれるの」
頷く高山。
「マジ寂しい女だね」
と言う潤の頭を軽く叩いてからソフトクリームを舐める高山。
高山の持つソフトクリームを上に突く潤。
鼻に付くソフトクリーム。
「やったな」と高山が言って潤を捕まえ様とするが既に潤は逃げ出している。
潤を追い掛ける高山。
舌を出して逃げる潤。
ソフトクリームを口に突っ込んで真剣に追い掛ける高山。
何とか捕まえるが、潤のズボンを掴んでへたり込む高山。
潤のお尻の蚯蚓腫れの跡が露わになる。
シャツを捲り上げて背中を露わにする高山。
潤の背中からお尻に掛けての沢山の蚯蚓腫れの跡が露わになる。

三十九 
マユと柚木と横田達がお茶を飲んでいるが、会話が盛り上がらなくて途切れてしまった様で事務所が只の終りかけたお茶会の場となって仕舞っている。するとこのままお茶を飲んで帰っても仕方がない柚木が呟く様に喋り出す。「馬鹿な事言ってるだけなのかな、その日にみんなが潤君のママを見てるんだもんね」
「そうですねー」と横田か言うと逆らう様に喋り出す井江田。
「でも思い出すと、ママに呼ばれた時の潤君の反応なんか変じゃなかったですか」     
「如何しても事件にしたい」と島原。
「台所の方、なんか暗くなかった。絶対なんかある―」と挫けずに喋っている井江田に
「しつこえなあー」と言ってその口に茶菓子を突っ込んで強制的にストップさせる島原。
仕方なくそれを食べながら尚も喋り続ける井江田、実際は口をモグモグさせているだけと言っていいが―。
「そお言われれば不自然な感じあったかなー」と横田が言うと
「どんな風に―」と柚木が反応するが、井江田も口をモグモグさせる。
「黙ってろって」と井江田に向かって島原が怒鳴るが、井江田は殆ど言葉になって無いのになんでと言う感じで不服そうである。
「ああ、マスクされてたの言いましたっけ―」と横田が言うと
「それで確り把握出来ました」と少し元気を取り戻した声で柚木が聞く。
「新山さんから送って貰った写真で確認しましたけど―間違いなかったよね」
と島原と井江田に確認する様に言う横田。 
「間違いなかったでしょ―」と島原。
柚木が横田と島原の方を見つめると顔を見合わせる二人。
「今日、高山さんは―」と言うマユの質問には井江田が答える。
「潤君とデートだそうです」
「あの坊やが好きと言うか物好きと言うか―」と島原が言うと
「物好きの何処が悪いんや」と声を真似て言う中里。
「いまいち似てない」とマユ。
「ルーラに比べたらまだまだですね」と井江田。
「ルーラに全然顔似せれないから仮面作ろうかなって思ってるの、今3Dプリンターで直ぐに作ってくれるのよね」とルーラの物真似で言う中里。
「そんなもん作って如何すんですか」と井江田。
「それを被って素人歌真似グランプリに出ようかと思って」と言う中里に井江田が素直な疑問を投げる。
「そんなもん被って唄えんですか」    
始めてそれに気づいて間の抜けた顔になる中里。
その中里に向かって「それよ」と言ってから全員に
「その可能性ない、誰かが仮面を被ってて―口元を細工したのでマスクで隠してたって言う」
と結構な大声で言う柚木。
「口元を隠す為にマスクだったんですかね―そう言えば3Dプリンターでケーキの見本作って貰ってましたね」
と横田が淡々と言うと得意そうに井江田が続いて来る。
「あたしの言った通りじゃない」
「言ってねえし、唯の憶測だろ」ときっぱりと井江田の言葉を拒絶する島原だが、柚木と目が合って仕舞う。
すると少し間を置いて毅然とした態度で喋り出す。
「3Dプリンター屋さん当たってみますよ。真実が他にあるなら突き止めるのが私達の使命ですから」
この島原の言葉は全員を殆ど唖然させたが、それから一人歩きし出してとんでもない探偵団の使命の一つの元になって仕舞う。「真実を突きとめる」と言う訳の判らない事の元に―。

四十
すっかり日が沈んだ中、高山と潤が路を歩いている。
高山は潤の方をちらちら見て気に掛けている様が見て取れるが会話はずっと途切れている。しかし
「虐待されてたんじゃないのか」と言う遊園地で聞きたかったけど聞けなかった言葉で復活させる高山。
「僕が悪い事をしただけだよ」と撥ねつける様に答える潤。
「潤がそう言うならもおこれ以上言わないけど、躾だとしたら酷過ぎるな」
と言う高山の言葉に何も言わずに歩き続ける潤。
「亡くなったお母さん―それともパティシエのお父さん」
「言わないんでしょ」
「―悪い事って何をした」
高山を睨む潤。
既に二人は潤の家が見える所まで来ていて、店舗の灯りが付いていないのが確認できる。
「お店再開させないの」と言う言葉に
「知らないよ」と連れない潤。
その潤がスマホを取り出して何か操作する。
「何やってる」
「今日熱いからエアコンのスイッチ入れたの」と言う潤。
「進んでんな」
「お姉ちゃんの家、出来ないの。家はだいたい何でも出来るよ」
「出来るか、あんな安アパートで」と言う高山の自嘲気味の言葉に少し笑った潤が言う。
「行ってみたい」
「今度来てみるか、腕によりを掛けた手料理をご馳走するぞ」
その言葉に返事を躊躇う潤。
「如何した」と言う高山に、少し間を置いて
「何でもない」と潤が言うと潤の家のガレージの前に車が止まる。
ガレージのシャッターが上がり車が中に入って行く。
ガレージの前を通り過ぎる二人だが、車の方に目をやった高山と車から出て来た有三の目が合う。
高山が少し頭を下げると潤と並んで立っている高山に嫌な顔になる有三だが軽く頭は下げる。
続いて河西が降りて来るが自分の方を見ている潤と高山に気づいて極まりの悪そうな顔になっていく。
高山が河西から潤の方に視線を移すと、そこには高山に対してこの状況でどんな顔をすればいいか判っていない潤の顔があった。それは少しませてるとは言え七歳の男の子にとって当然の事だった。高山も勿論そう思った。見ていると悲しくなって見続けれなかった。高山は抱き締めてやりたいと思ったが、出来なかった。高山と潤の関係は未だそこまでの物になっていなかった。だから高山は声を掛けようと思い言葉を探した。そんな大した物ではないにせよ頭の中を必死に探したがそれは存在していなかった。

四十一
「あの有名パティシエの三屋有三さんがやられているチェリーブロッサムと言うケーキ屋さんのケーキの見本と言うかサンプル、あれお宅で作られてると思うんですけど間違い無いですよね」
と事務所で当てずっぼの電話を島原がやっているが
「―ええ、そうですけど」と言う返事が電話から聞こえて三回目で見事に3Dプリンター屋さんを探し出した事が示されOKサインを出す島原。
「素晴らしい出来に感動しまして是非内も作って戴きたいと思い電話を差し上げたんですけど、今から伺っても宜しいですか」と島原が言うと
「申し訳ありませんが本日業務は終了しておりまして―」と言う声が帰って来る。
「明日なら宜しいでしょうか」
「はい、何時頃が御都合宜しいでしょうか」
と言う声が聞こえて来ると横田のスマホが鳴り「もしもし」とそれに出る横田。
「此処にはもう寄らないでそのまま帰られるんですか――嫌、あたし達ももう帰りますけど―」

四十二
「確かにそお言われれば少し不自然な感じだったかな―そお言えばさっき潤のパパさん、あのパティシエの若い女と車で帰って来たよ」と一人になって夜道を歩いている高山が電話をしている。
「本当ですか―]と言う横田の言葉に自分なりに考える高山だが事態は悪い方に進ん出いると考えるしかないと思えた。

四十三
事務所で電話を続けている横田がそれを止めて有三と河西が一緒に車で帰って来た事を他の者に伝える。
横田の方を島原以外の四人が見るが電話を続ける横田に声を掛ける事はしない。
「その二人とこっちとの間に嫌な空気が流れてたな」と受話器から聞こえる高山の声に横田が
「その御二人、出来てるそうですよ」と返すと
「そお―そおだろうね―」と言う声が受話器から漂って来る.その捉え処のない高山の声は犬の捜索と言う依頼はもう過去の事だと言う事を表現していた。
一方、島原は話が付いた様で電話を切って井江田に
「一緒に行こうぜ」と声を掛けるが、曖昧に頷く井江田。
その井江田を睨みつける島原。

四十四
3DIと書かれたドア内側の応接室で社員の谷山に島原と井江田が向き合っている。
「あそこのケーキ本当に美味しいですよね、ホント食い過ぎて太っちゃいました」
ふっくらとした島原のその言葉に思わず笑って仕舞う谷山。
「ケーキのサンプルだけですか、頼まれたのは」
と言う島原の言葉に答えるのを躊躇する谷山。
「人の顔とか頼まれてないですか―」
と続ける島原に間を置いて言う谷山。
「ええ、よく御存知ですね」
美沙子の写真を見せる井江田が
「この方の顔ですよね」
と言うと少し間を置いて小さく二度頷く谷山。

四十五
女子大の校舎F棟の階段を高山と潤が登っている。
「何処行くの」と聞く潤に
「此処で一番好きな場所」と答える高山。
階段を上がり屋上に通じるドアを開けて屋上に出る二人。
そして見晴らしのいい所に場所を取る二人。
「いい所だろ」と言う高山の言葉に頷く潤。
「小嶋さんて分かる」とつ続ける高山。
「あの汚い部屋に居た人」 
と言う潤に頷いてから大きく首を横に振って言う高山。
「汚くないって、ちょっと古いだけ」
「あの怖い人―」
「違う、後ろのの方に座ってた綺麗な人」
頷く潤。
「なんか潤の態度が不自然だって言う様な事言ってたの―」
と言う高山の言葉に潤は反応しない。
「潤、何か隠してる事ない―話してくれれば力になるから」
「――知らないよ」
「ケーキ御馳走になった時に居たママ、本当のママだったの」
「―何馬鹿な事言ってるの」
「内の島原と井江田がケーキのサンプルと一緒に潤のママの仮面を作って欲しいと言う発注があったのを確認しているの」と言う高山の言葉に
「―知らないって言ってるでしょ、僕は関係ないんだよ」
と少し苛ついて言う潤。
「関係ないって、何か知ってる事があるのね」
「―煩いんだよ」 
高山は潤の顔を見詰めようとするが、目を逸らす潤の顔は混乱した物になっている。

四十六
木田家の玄関に峯山と中西がやって来ている。
「此処みたいですね」と中西が言うと
「そうみたいね」と言って木田と書かれた表札の横のインターホォンのボタンを押す峯山。

四十七
廊下を歩いていた新山を捕まえて仕入れた情報を捲し立てながら一緒に歩いている柚木がなかなか口を開かない新山に説得する様な言葉を吐く。
「徹底的に調べれば絶対何か出て来ますよ」
仕方がないと言った様で口を開く新山。
「3Dプリンター屋さんで奥さんの仮面を作って貰ったと言うだけで家宅捜索出来ないよ」
「証拠隠滅されてからでは、遅いですから」
「アリバイあるんだよ」と言う新山に少し間があって、自分の考えを話し始める柚木。
「仮面を被って誰かが潤君のママを演じてたのなら、既に殺されてて冷凍されていた可能性があるんじゃないかって―あそこの風呂、スマホで外から操作出来るみたいなんですよ」
「想像が逞しいね」
「スマホで遠隔操作して風呂を付ける事で死亡推定時刻を狂わせたんですよ。死体を凍らせてたのなら辻褄が合うと思うんです」と諦めない柚木に手を拡げて勝手にどうぞと言う様な様を作る新山。
  
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