学費払ったけど卒論の添削されなかった件について

進学先を間違えた話

７．正しかったのかは、分からなくても

　福祉系の大学に行って大失敗しましたけど、正直、あの時思想を曲げなかった事だけは後悔していません。
　普通、逆ですよね。
　でも、私は高校を出る時考えていました。
　大好きなヘヴィメタルが聴けなくなったら私のアイデンティティは終わりだ、と。

　ヘヴィメタルって基本的にやかましいですし、暗い事や嫌な事を喚き散らかしている曲だってあります。だけど、一絡げには出来ないカオスが面白くて、躁状態なくらいポジティブな曲も有るんです。
　だから、どんな事があっても、ヘヴィメタル大好きな自分は失いたくありませんでした。

　仮令、それが“優しい世界を作る為の勉強”と相容れなくても。

　何もかも放り捨てて、理想論だけ追い求める様にしていたら、きっと馬鹿ポジティブに別の進路に進めていたと思います。しかし、それが本当に私の望んだ物かと立ち止まったら、きっと終わりでした。
　どうしようも無く手詰まりな現状を目の当たりにしても、私は私である事を諦めなかった事だけは絶対に後悔しません。高校を出る時考えたもうひとつの事、小説を書くという事を裏切らなかった、それだけでも十分なのです。

　きっと、優しい世界の為に生きていたら、小説を書く事もしなくなっていたでしょうし、暗黒を喚き散らかすヘヴィメタルなんて聴かなくなっていたでしょう。
　しかし、それは一つの節目に考えた自分を裏切る事である以上、きっと何処かで後悔して、今よりも手詰まりになっていたかもしれません。

　そりゃ、手詰まり状態で酷い思いを色々しましたが……ヘヴィメタルが好きだった事で、素晴らしい音楽に出会う事が出来たり、小説を書くという事に、やっと本気で向き合えたり……それで散々苦い思いだってしていますけど、それでもまだ書こうと思えたり……考える事でしか、苦悩する事でしか生きていけない私は、私としてある意味正しい選択をしたのだと思っています。

　……今更になって発掘した、大学生の頃書いた唯一の短編を思い返して、心底思いました。
　あの頃散々苦悩していた私は、私のまま、変わりなく此処に居るな、と。
　丁度その作品を描いた後でしたからね、散々愚痴を並べたあの講義を受けたのは……。