夜想曲は奈落の底で

詩方夢那

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第二章 Gambling with the Devil

2-8-2 水と油

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 メンバー一同と滝上は会議室に移り、鷲塚と鴇田を交えての懇談が始まった。
「実際に音を出してみて、どうだった?」
 音楽的な部分に口を出さないと決めてスタジオに入らなかった鷲塚は一同を見回した。
「一言で言うと、才能ある若者、って感じでした」
 ケリーは音楽的な知識に乏しくも独特なセンスを見せた滝上を評価する。
「俺も似た様なもんですね、こう、現場叩き上げのギタリストって感じで、よくやってると思います」
 ハリーはケリーに同調してルーシーを見遣るが、ルーシーはその視線を鷲塚に向け、話を進める様に圧力をかける。
「そうか、それならよかった。それで、もし彼を迎えるとして、どう思う?」
 ハリーとケリーは顔を見合わせ、ケリーは何かを決めた様に頷いて口を開いた。
「正直言うと、歌謡曲への理解は俺と通じる所も有ります。ただ、レゲエっぽさとか、パンクっぽさっていう持ち味は面白いけど、イエロー・リリー・ブーケには馴染まない様に思います。だから、滝上君がこの先どういうスタイルで続けていきたいかっていう事を大切にしたいかな、と」
 鷲塚は滝上を見た。
「リューショー君はこの先もレゲエとかパンクの方向で活動したいかい?」
「あ、別にこだわりは無いっす。先月まで活動してたバンドがそういうスタイルで、その自信作があれだっただけで、またバンドが出来るなら、新しい事もやりたいっす!」
「そうか……それじゃあ、現役のメンバーと会ってみて、この先こんな風に活動したいっていうビジョンは出来たかい?」
「そうっすねぇ……もし憧れのメンバーさんと一緒にやれるとしたら、モッズスーツっていうんすかね、あぁ言うカチッとした格好でステージに立ってみたいっす!」
「モッズスーツか……モッズスーツに憧れたきっかけは?」
 目を輝かせる滝上に、ルーシーは静かに問いかけた。
「え?」
「モッズスーツというとビートルズが登場した頃のイギリスのファッションだけど、歌謡曲の他に、そういうロックやパンクのクラシックにも興味があるのかな、と」
「あ、いや、自分、ビートルズは知らないっす。ただ、先輩に勧められて聞き始めたバンドのメンバーがモッズスーツで、かっこよくて」
「海外のバンド?」
「日本のバンドっす、自分、英語嫌いで洋楽はキホン聴かないんで」
「そっか」
 ルーシーは鷲塚を見るが、鷲塚はケリーとハリーに意見を求める様に視線をそちらへ向ける。
「ステージでの理想は分ったよ。ただ、俺達はメンバーが決まったらすぐにレコーディングに入るから、音楽的な理想みたいなものも聞かせてくれないかな」
「えっと、音楽の方はー……自分、ケリーさんの歌謡曲っぽいセンス、マジ尊敬してるんで、そう言う歌謡曲っぽいロックがやりたいっす!」
「そっか。それじゃあさ、こんな音にしたいとか、こういう風に弾きたいとか、そういう理想は?」
「え? えっと……」
「使ってみたいギターとか、そういうのあるよね」
「特にー、無いっすね。自分、音楽作れたらそれでいいんで」
 ケリーと滝上のやり取りに一抹の不安を覚えてハリーはちらとルーシーを見た。すると、ルーシーもまたハリーを見ていた。
「そっか、まあ、やってみないと分からないというか、新しい事のビジョンはまだ、ちょっと分かんないってところかな」
「そうっすね」
 ケリーはハリーに意見を求め、そちらを見遣る。
「まあ、先々の事はその時考えたらいいんじゃないかな。それはそうと、レコーディングが有るならライブもする事になるし、コリーの弾いた曲には難しいのも混ざってるから、レコーディングよりも長丁場になるライブを見据えたリハーサルみたいな物をしてから話を進めるのがいいかなと俺は思うよ」
 ハリーはケリーと鷲塚を見た。
「確かに、この先はライブも少しずつ増えていくし、制限付きが続くようならライブビューイングやスタジオ配信も見据えた活動が必要になるな」
「てなわけで、ライブの定番曲で本格的なセッションをしてから結論を出すってのでどうでしょう」
「分かった。リューショー君、予定を教えてくれるかね」
 鷲塚は滝上の予定を聞きつつ、ケリーにどの曲でセッションをするかを確認し、セッションの日程が決められた。
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