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第二章 Gambling with the Devil
2-10-1 切るに切れない赤い糸
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未熟で幾つかの問題を抱えていた滝上の加入は難しいかに思われたが、憧れのロックバンドへの加入に向け、滝上は熱意を見せていた。
だが、仮に滝上が加入したところで、現在のメンバーと音楽的な背景や経歴が大きく異なる滝上を迎えてのレコーディングが順調に進む確証は無かったが、鷲塚はやってみなければ分からないとの認識をプロデューサーの早川と共有し、滝上の加入を見据えて予定が組まれ始めていた。
その検討の中では滝上の加入をどの段階で公表するかについても議論が進められており、鷲塚は不安定な状態を見守ってきたファンへの感謝としてクリスマスに合わせた公表を提案した。
しかし、レコーディングの進捗次第で滝上の加入が白紙になる可能性を憂慮した早川はアルバム制作が確実になった段階での公表が混乱を招かないと考えていた。
鴇田は滝上の加入とルーシーの脱退が天秤にかけられた状態かつ、ケリーの判断が下されない状況で明確な意見を述べる事に後ろめたさを覚えながらも、ルーシーから脱退の意向が伝えられていなければ早川に賛同したであろうと思い、レコーディング会時点での公表が良いだろうと進言する。そして、ファンに対してはファンクラブ向けのクローズドな環境で、新しいめんがーが決まった旨をそれとなく伝えてはどうかとも提案した。
鷲塚は確定情報を早期に公表する事でバンド活動への期待感を高めたいと考えてており、限定的で思わせぶりな公表には難色を示したが、鴇田と早川の説得を受け、年明けから順次情報を公開する話題づくりの方向で進めると承諾した。
鷲塚らとの話し合いを終えた鴇田はメンバーとの話し合いという体でリハーサルスタジオへと向かった。奇しくも今、ルーシーはケリーに対して脱退の意向を伝達しているのである。
鴇田がスタジオに入ると既にルーシーの姿は無く、頭を抱えて項垂れるケリーと、所在なさげに鴇田を待つハリーだけが残されていた。
「あぁ、鴇田さん」
ハリーは苦笑いを浮かべ、鴇田に会釈する。
「……ケリー」
鴇田は静かにケリーの側へと進み、手近な椅子に腰を下ろした。
「鴇田さんは……どう思ってるんですか」
顔を上げたケリーは澱んだ眸を鴇田に向けた。
「バンド活動の観点からは……ルーシーが滝上君と活動すべきだと考えています。ですが、ルーシーがそれを望まないなら、無理強いは出来ません。彼はスタジオミュージシャンではなく、このバンドのメンバーであり、価値観の共有を迫られる立場です。それが出来ないなら、出ていくのが順当でしょう」
どちらの側にもつかないビジネスマンとして、鴇田はあえて毅然とした態度でケリーを突き放した。
「……どうやっても、決めるのは、俺なんですね」
「私はメンバーではありませんからね」
ケリーは溜息を吐き、再び頭を抱えて項垂れた。
「……ケリー、君は滝上君の事を、本心ではどう評価しているんです?」
「……俺に、少し似ているな、と」
鴇田とハリーは沈黙したままケリーの言葉を待ったが、続く言葉は聞こえない。
「では、ミュージシャンとして、ギタリストとして、彼をどう評価しますか」
「ミュージシャンとしては……ちょっと、認識、甘いかなってところは、ままありましたけど、でも、それを埋めようとして頑張っているのは事実で、俺達のファンだって言ってくれる若い人が来てくれるのは、すごくいい事だと思います」
「分かりました……それなら、ルーシーの事は、どう思っているんですか」
ルーシーの名を聞くなり、ケリーは取り乱した様に髪を乱雑に掻き上げる。
「ルーシーの事は……なんていうか、メンバーというか、戦友? こう、彼って、ツアーの真っ最中にいきなり入ってきて、それなのに、凄く頼もしくて……ずっとギターテックだと思ってたコリーが、メンバーになった時、付き合いが浅かった分、彼は一番最初にコリーをメンバーって捉えていたのも有って、職人肌っていうのも似通っていて、彼が居たから、コリーとうまくやれたってところがあって……付き合いは、コリーよりも短いのに、凄く頼れる人だなって思っていました」
「これから先も、一緒に音楽を続けたいと思いますか」
「もちろん」
「しかし、彼は滝上君との活動は出来ないと考えていて、滝上君が加入するなら如何なる慰留にも応じる意思はない……ケリー、覚悟を決めて下さい」
ケリーは俯いて黙り込む。
「私もハリーも、ケリーの決断を尊重すると決めています。君がやりたい様にやる事、それが最善だと」
だが、仮に滝上が加入したところで、現在のメンバーと音楽的な背景や経歴が大きく異なる滝上を迎えてのレコーディングが順調に進む確証は無かったが、鷲塚はやってみなければ分からないとの認識をプロデューサーの早川と共有し、滝上の加入を見据えて予定が組まれ始めていた。
その検討の中では滝上の加入をどの段階で公表するかについても議論が進められており、鷲塚は不安定な状態を見守ってきたファンへの感謝としてクリスマスに合わせた公表を提案した。
しかし、レコーディングの進捗次第で滝上の加入が白紙になる可能性を憂慮した早川はアルバム制作が確実になった段階での公表が混乱を招かないと考えていた。
鴇田は滝上の加入とルーシーの脱退が天秤にかけられた状態かつ、ケリーの判断が下されない状況で明確な意見を述べる事に後ろめたさを覚えながらも、ルーシーから脱退の意向が伝えられていなければ早川に賛同したであろうと思い、レコーディング会時点での公表が良いだろうと進言する。そして、ファンに対してはファンクラブ向けのクローズドな環境で、新しいめんがーが決まった旨をそれとなく伝えてはどうかとも提案した。
鷲塚は確定情報を早期に公表する事でバンド活動への期待感を高めたいと考えてており、限定的で思わせぶりな公表には難色を示したが、鴇田と早川の説得を受け、年明けから順次情報を公開する話題づくりの方向で進めると承諾した。
鷲塚らとの話し合いを終えた鴇田はメンバーとの話し合いという体でリハーサルスタジオへと向かった。奇しくも今、ルーシーはケリーに対して脱退の意向を伝達しているのである。
鴇田がスタジオに入ると既にルーシーの姿は無く、頭を抱えて項垂れるケリーと、所在なさげに鴇田を待つハリーだけが残されていた。
「あぁ、鴇田さん」
ハリーは苦笑いを浮かべ、鴇田に会釈する。
「……ケリー」
鴇田は静かにケリーの側へと進み、手近な椅子に腰を下ろした。
「鴇田さんは……どう思ってるんですか」
顔を上げたケリーは澱んだ眸を鴇田に向けた。
「バンド活動の観点からは……ルーシーが滝上君と活動すべきだと考えています。ですが、ルーシーがそれを望まないなら、無理強いは出来ません。彼はスタジオミュージシャンではなく、このバンドのメンバーであり、価値観の共有を迫られる立場です。それが出来ないなら、出ていくのが順当でしょう」
どちらの側にもつかないビジネスマンとして、鴇田はあえて毅然とした態度でケリーを突き放した。
「……どうやっても、決めるのは、俺なんですね」
「私はメンバーではありませんからね」
ケリーは溜息を吐き、再び頭を抱えて項垂れた。
「……ケリー、君は滝上君の事を、本心ではどう評価しているんです?」
「……俺に、少し似ているな、と」
鴇田とハリーは沈黙したままケリーの言葉を待ったが、続く言葉は聞こえない。
「では、ミュージシャンとして、ギタリストとして、彼をどう評価しますか」
「ミュージシャンとしては……ちょっと、認識、甘いかなってところは、ままありましたけど、でも、それを埋めようとして頑張っているのは事実で、俺達のファンだって言ってくれる若い人が来てくれるのは、すごくいい事だと思います」
「分かりました……それなら、ルーシーの事は、どう思っているんですか」
ルーシーの名を聞くなり、ケリーは取り乱した様に髪を乱雑に掻き上げる。
「ルーシーの事は……なんていうか、メンバーというか、戦友? こう、彼って、ツアーの真っ最中にいきなり入ってきて、それなのに、凄く頼もしくて……ずっとギターテックだと思ってたコリーが、メンバーになった時、付き合いが浅かった分、彼は一番最初にコリーをメンバーって捉えていたのも有って、職人肌っていうのも似通っていて、彼が居たから、コリーとうまくやれたってところがあって……付き合いは、コリーよりも短いのに、凄く頼れる人だなって思っていました」
「これから先も、一緒に音楽を続けたいと思いますか」
「もちろん」
「しかし、彼は滝上君との活動は出来ないと考えていて、滝上君が加入するなら如何なる慰留にも応じる意思はない……ケリー、覚悟を決めて下さい」
ケリーは俯いて黙り込む。
「私もハリーも、ケリーの決断を尊重すると決めています。君がやりたい様にやる事、それが最善だと」
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