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第二章 Gambling with the Devil
2-11-1 Skin O' My Teeth
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十一月の冷たい風が肌を刺す早朝、リンは鞄一つでネットカフェから出てきたレインと合流した。
「ごめん……殺されるかと思って、つい」
「いや、ええんやけど……どないすんねん」
「しゃちょーが弁護士立ててくれたから、丸投げ」
まだ怯えた様子で鞄を抱えるレインに、リンの表情はマスクの下で盛大に歪む。
「まあ、ええわ……ほな、行こか」
「うん」
リンはレインと連れ立って中心市街地から少し離れた駅に向かい、其処に停めた車で曰く付きの古民家へと向かった。
事件が起こったのはこの前日、十二時間ほど前の事だった。
リアルツーディーの作業場所兼タレント寮として借り上げられているレインの自宅では、五十嵐小春の配信が行われていた。
配信内容はこの数日に寄せられた有料コメントに対する返答が主な内容で、ランは翌日の撮影の為にネイルアートをする手元を画面に映しつつ、返答や謝辞を述べるものだった。
配信は一時間ほどで終了し、ランはレインの自宅で一泊して翌日の撮影を行う予定だったが、配信直後、不審な来訪客が有った。インターフォン越しに確認すると、黒づくめの屈強そうな男が映っており、ランは戦慄した。この一ヶ月ほどは事件が起きていないものの、関東では連続強盗事件が発生していたのだから。
――どちら様ですか?
ランは落ち着いて問いかけたが返答は無く、玄関扉のノブが乱暴に鳴らされた。
新手の強盗団の下見か、あるいはなりふり構わぬ押し込みか。
ランは半ばパニックルームになっているトイレへと駆け込み、緊急通報に至った。
――黒ずくめの男が玄関扉を開けようとガチャガチャしてるんです!
トイレの中には建物住所と最寄りの警察署の電話番号が貼り出されており、ランはそれを頼りに通報場所を告げる。その間にも玄関扉からは物騒な音が聞こえ、遂には鍵が開けられた。
――か、鍵がーっ!
通報するランの声が聞こえた為か、不審者はトイレの扉に手を掛け、乱暴な口調で鍵を開けろと激しく音を立てた。
鍵は外から簡単に開けられないが、非常時の開錠に備えて外の洗面台の戸棚に安置されている。それに気付かれたらどうするのか、そもそも物取りの犯行なら顔を見られる前に逃げるはずなのになぜ自分にこだわるのか、もし火を点けられたらどうするのか。暗闇のトイレでランが混乱していると、遂に扉に物理的な衝撃が走る。
ランが思わず絶叫したところで、何者かがそれを制した。
サイレンはまだ聞こえず、その場にいる誰かが止めに入ったらしいが、ランにはその状況が分からなかった。
――其処に居るのは誰だ! 出て来い!
一昔前の鬼教師の様な厳しい口調にランは扉の向こうで首を振った。
――勝手に人様の家に居座って、まさか、女か!
安否を心配する電話の向こうの声と扉の向こうの怒号に挟まれたまま、ランは物置棚の奥に手を突っ込んだ。閉じ込められた際の最終手段にと置かれているバールを握り、覚悟を決めたのだ。
程無くして巡回中の緊急車両が盛大なサイレン音と共に駆け付け、開け放たれた玄関扉から警察官が駆け込んできた。
「ごめん……殺されるかと思って、つい」
「いや、ええんやけど……どないすんねん」
「しゃちょーが弁護士立ててくれたから、丸投げ」
まだ怯えた様子で鞄を抱えるレインに、リンの表情はマスクの下で盛大に歪む。
「まあ、ええわ……ほな、行こか」
「うん」
リンはレインと連れ立って中心市街地から少し離れた駅に向かい、其処に停めた車で曰く付きの古民家へと向かった。
事件が起こったのはこの前日、十二時間ほど前の事だった。
リアルツーディーの作業場所兼タレント寮として借り上げられているレインの自宅では、五十嵐小春の配信が行われていた。
配信内容はこの数日に寄せられた有料コメントに対する返答が主な内容で、ランは翌日の撮影の為にネイルアートをする手元を画面に映しつつ、返答や謝辞を述べるものだった。
配信は一時間ほどで終了し、ランはレインの自宅で一泊して翌日の撮影を行う予定だったが、配信直後、不審な来訪客が有った。インターフォン越しに確認すると、黒づくめの屈強そうな男が映っており、ランは戦慄した。この一ヶ月ほどは事件が起きていないものの、関東では連続強盗事件が発生していたのだから。
――どちら様ですか?
ランは落ち着いて問いかけたが返答は無く、玄関扉のノブが乱暴に鳴らされた。
新手の強盗団の下見か、あるいはなりふり構わぬ押し込みか。
ランは半ばパニックルームになっているトイレへと駆け込み、緊急通報に至った。
――黒ずくめの男が玄関扉を開けようとガチャガチャしてるんです!
トイレの中には建物住所と最寄りの警察署の電話番号が貼り出されており、ランはそれを頼りに通報場所を告げる。その間にも玄関扉からは物騒な音が聞こえ、遂には鍵が開けられた。
――か、鍵がーっ!
通報するランの声が聞こえた為か、不審者はトイレの扉に手を掛け、乱暴な口調で鍵を開けろと激しく音を立てた。
鍵は外から簡単に開けられないが、非常時の開錠に備えて外の洗面台の戸棚に安置されている。それに気付かれたらどうするのか、そもそも物取りの犯行なら顔を見られる前に逃げるはずなのになぜ自分にこだわるのか、もし火を点けられたらどうするのか。暗闇のトイレでランが混乱していると、遂に扉に物理的な衝撃が走る。
ランが思わず絶叫したところで、何者かがそれを制した。
サイレンはまだ聞こえず、その場にいる誰かが止めに入ったらしいが、ランにはその状況が分からなかった。
――其処に居るのは誰だ! 出て来い!
一昔前の鬼教師の様な厳しい口調にランは扉の向こうで首を振った。
――勝手に人様の家に居座って、まさか、女か!
安否を心配する電話の向こうの声と扉の向こうの怒号に挟まれたまま、ランは物置棚の奥に手を突っ込んだ。閉じ込められた際の最終手段にと置かれているバールを握り、覚悟を決めたのだ。
程無くして巡回中の緊急車両が盛大なサイレン音と共に駆け付け、開け放たれた玄関扉から警察官が駆け込んできた。
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