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第二章 Gambling with the Devil
2-12-1 Beautiful Madness
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レインが大阪の外れの古民家に転がり込んで三日、問題の代理人となっている弁護士の安川からレインへ、当事者が直接面談する形で話し合いが出来ないかと連絡があった。
無論、安川はレインと彼の父親を対面させまいと話を進めたが、直接会わないのなら話はしないと父親側が譲らず、公式な調停へもつれ込む事の労力と費用の負担を鑑みた安川は渋々レインに連絡を寄越した様子だった。
レインも安川の疲弊した声音から帰京せざるを得ないと理解し、顔を合わせるなら出来る限り人目の有る場所、最低でも個室を備えた居酒屋の様な飲食店かカラオケボックスである事、そして、弁護人と被害者それぞれに複数名の立会人を同席させる事を条件に承諾した。
連絡を受けた翌日、とうに正午を過ぎたプラットホームに出るとゴースト・モノリスのマネージャー、小鳥遊がレインを待っていた。
「適当なカラオケボックスを押さえました。被害者側は代理人の亀山社長と私、あちら側は親父さんがお一人、それと、緊急連絡先から隆さんに連絡させてもらって、同席してもらうようにお願いしました」
「そっか……迷惑かけてすみません」
「いえ、こちらとしては小春さんに怖い思いさせられて、聆さんにも手を出そうとされてるんです、何でもしますよ」
小鳥遊は車を出し、レインの自宅からはそう遠くない立地にあるカラオケボックスを目指した。そして、近くの駐車場に車を預けると、其処には亀山社長が待っていた。
「あ、ああ、やっときたぁ……」
タクシーを頼んでいた亀山は寒空の下、小鳥遊とレインが到着するのを待っていた様子だった。
「お店で待ってなかったんですか……」
「だってあんな乱暴者を使った相手だぞ? 小鳥遊君一人に任せられない」
呆れた小鳥遊に返された亀山の言葉に、小鳥遊は心なしか不機嫌な表情を浮かべた。
「……ドリンクバーで頼んでありますから、ホットコーヒーでも飲んで下さい」
店に入ると既に弁護士の安川と苦虫を噛み潰した表情の父親が座っており、部屋の外で呆れた様子のルーシーが待っていた。
「ごめんね、また変な事に巻き込んで」
レインの言葉にルーシーは首を振った。
「この件に関してはおじさんが悪いし、むしろ話を聞かせて貰えてよかった。キミに手を出す様な事はさせたくない」
「重ね重ねごめん……行こっか」
覚悟を決めた様にレインは個室の中に入った。しかし、全員が腰を下ろしたところで、誰一人として口を開こうとはしない。
「……早速ですが、梅枝さん。全員揃いましたし、お話を」
安川が議論を促した途端、レインと父親は凄まじい視線をぶつけ合い、父親の方が口を開いた。
「なんで家に居ないんだ! しちめんどくさい事をしてまで居座ったくせに!」
「勝手にタイヤロックされたら堪ったものじゃないし、帰るに帰れなかっただけだよっていうか不意打ちで拉致監禁しようとかどういう神経してんだよ!」
レインの勢いに押され、父親は口を開かない。
「それともさ、なに? 見合いを断った腹いせ? そんなに俺が言う事聞かないのが憎い?」
父親は歯軋りしてレインを睨みつけた。
「だったらさ、聞ける様な事を言ってよ。言う事聞かせる為に事故物件みたいな女の人ばっかり紹介てさ。それとも何? 俺が傷つくのが見たくて仕方がないとでも?」
「貴様!」
「悪いけど、俺は音楽を辞めるつもりなんて無いし、とーさんみたいな生き方が出来る人間じゃないし、だからって言われるまま人生滅茶苦茶にされるつもりはない!」
冷え切って光の無いレインの瞳に見据えられ、父親は再び歯軋りする。
「だってこの国に、わざわざ海の向こうのレーベルからブラックゲイズでアルバム出せる人間が何人居る? 海の向こうの出版社から何か出せる人間に、とーさんは成れる?」
「それが」
「とーさんは優秀だったよ、ビジネスマンとしては。でも父親として今や最低だよ。子供の頃には、自分にしか出来ない事を見つけろ、その為にはいくら勉強しても足らないんだから、俺みたいなバカはとにかく勉強だけしろって言ってたよね。ピアノ習う事にすら嫌味言ってさ」
レインの幼少期が決して幸せな物ではなかった事を察し、亀山と小鳥遊は思わず顔を見合わせた。
「そのくせ、家の事は全部かーさんに任せて、なのにかーさんから好きな物をいくつも取り上げて、無理矢理改宗もさせたんでしょ?」
ルーシーは思わずレインの父親を見た。
父親は返す言葉が見つからない様子で、ただレインを睨んでいた。
無論、安川はレインと彼の父親を対面させまいと話を進めたが、直接会わないのなら話はしないと父親側が譲らず、公式な調停へもつれ込む事の労力と費用の負担を鑑みた安川は渋々レインに連絡を寄越した様子だった。
レインも安川の疲弊した声音から帰京せざるを得ないと理解し、顔を合わせるなら出来る限り人目の有る場所、最低でも個室を備えた居酒屋の様な飲食店かカラオケボックスである事、そして、弁護人と被害者それぞれに複数名の立会人を同席させる事を条件に承諾した。
連絡を受けた翌日、とうに正午を過ぎたプラットホームに出るとゴースト・モノリスのマネージャー、小鳥遊がレインを待っていた。
「適当なカラオケボックスを押さえました。被害者側は代理人の亀山社長と私、あちら側は親父さんがお一人、それと、緊急連絡先から隆さんに連絡させてもらって、同席してもらうようにお願いしました」
「そっか……迷惑かけてすみません」
「いえ、こちらとしては小春さんに怖い思いさせられて、聆さんにも手を出そうとされてるんです、何でもしますよ」
小鳥遊は車を出し、レインの自宅からはそう遠くない立地にあるカラオケボックスを目指した。そして、近くの駐車場に車を預けると、其処には亀山社長が待っていた。
「あ、ああ、やっときたぁ……」
タクシーを頼んでいた亀山は寒空の下、小鳥遊とレインが到着するのを待っていた様子だった。
「お店で待ってなかったんですか……」
「だってあんな乱暴者を使った相手だぞ? 小鳥遊君一人に任せられない」
呆れた小鳥遊に返された亀山の言葉に、小鳥遊は心なしか不機嫌な表情を浮かべた。
「……ドリンクバーで頼んでありますから、ホットコーヒーでも飲んで下さい」
店に入ると既に弁護士の安川と苦虫を噛み潰した表情の父親が座っており、部屋の外で呆れた様子のルーシーが待っていた。
「ごめんね、また変な事に巻き込んで」
レインの言葉にルーシーは首を振った。
「この件に関してはおじさんが悪いし、むしろ話を聞かせて貰えてよかった。キミに手を出す様な事はさせたくない」
「重ね重ねごめん……行こっか」
覚悟を決めた様にレインは個室の中に入った。しかし、全員が腰を下ろしたところで、誰一人として口を開こうとはしない。
「……早速ですが、梅枝さん。全員揃いましたし、お話を」
安川が議論を促した途端、レインと父親は凄まじい視線をぶつけ合い、父親の方が口を開いた。
「なんで家に居ないんだ! しちめんどくさい事をしてまで居座ったくせに!」
「勝手にタイヤロックされたら堪ったものじゃないし、帰るに帰れなかっただけだよっていうか不意打ちで拉致監禁しようとかどういう神経してんだよ!」
レインの勢いに押され、父親は口を開かない。
「それともさ、なに? 見合いを断った腹いせ? そんなに俺が言う事聞かないのが憎い?」
父親は歯軋りしてレインを睨みつけた。
「だったらさ、聞ける様な事を言ってよ。言う事聞かせる為に事故物件みたいな女の人ばっかり紹介てさ。それとも何? 俺が傷つくのが見たくて仕方がないとでも?」
「貴様!」
「悪いけど、俺は音楽を辞めるつもりなんて無いし、とーさんみたいな生き方が出来る人間じゃないし、だからって言われるまま人生滅茶苦茶にされるつもりはない!」
冷え切って光の無いレインの瞳に見据えられ、父親は再び歯軋りする。
「だってこの国に、わざわざ海の向こうのレーベルからブラックゲイズでアルバム出せる人間が何人居る? 海の向こうの出版社から何か出せる人間に、とーさんは成れる?」
「それが」
「とーさんは優秀だったよ、ビジネスマンとしては。でも父親として今や最低だよ。子供の頃には、自分にしか出来ない事を見つけろ、その為にはいくら勉強しても足らないんだから、俺みたいなバカはとにかく勉強だけしろって言ってたよね。ピアノ習う事にすら嫌味言ってさ」
レインの幼少期が決して幸せな物ではなかった事を察し、亀山と小鳥遊は思わず顔を見合わせた。
「そのくせ、家の事は全部かーさんに任せて、なのにかーさんから好きな物をいくつも取り上げて、無理矢理改宗もさせたんでしょ?」
ルーシーは思わずレインの父親を見た。
父親は返す言葉が見つからない様子で、ただレインを睨んでいた。
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