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第二章 Gambling with the Devil
2-12-2 Beautiful Madness
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「だけどさ、おかげで俺はちゃんとした人間に成れたよ。とーさん基準じゃあ塵以下かもしれないけれど、俺は俺なりに、俺にしか出来ない事を見つけられた。今更、それを邪魔されたくはない」
つかみどころのない声音が不意に強張り、不気味な地鳴りの様な低い響きを帯びる。その刹那、悪魔を目の当たりにした悪魔祓い氏の如く、父親が怒号を上げた。
「何様のつもりだ、この親不孝者がっ!」
父親は立ち上がり、息子を見下ろしながら続けた。
「何が自分にしか出来ない事だ! たかが道楽だろうが! いい年になってまともに就職もせずに俺に恥を掻かせやがって! 同期の連中の子供はみんなとっくに独立して、孫まで生まれてるんだぞ!」
「……だから何」
レインは光の無い瞳で父親を見上げた。
「なんだその目は!」
幼い頃、同じ言葉にとてつもない恐怖を覚えていた事をレインは思い出す。だが、彼は今、その過去を怒りの焔で焼き払う。
「散々俺にもかあさんにも恥を掻かせておいて、申し訳ないと思わないのか!」
「確かに、ストレート大卒で一流企業に入って仕送りする様な生活が出来なかった事は事実だけど、だからって人様に迷惑をかける様な生き方はしてない」
「ろくに働きもせずに生きていて、何が迷惑をかけて無いと言える!」
「働いてたよ。てか、今でも働いてるし」
「音楽は」
「音楽じゃなくて、通信入ってからはショップのバイトしてたし、今でもパーツショップの手伝いしてる」
「それが仕事か!」
「仕事だよ。給料貰って働いてるんだから」
「そんなもん仕事に入るか!」
「それって世の中を下支えしてる非正規労働者全部に対する悪口じゃん」
「うるせえ! そんな恥ずかしい事が仕事に入るか!」
「懲役じゃないなら普通に仕事だよ」
「貴様なんぞ豚箱にぶち込まれてる方がよっぽどましだった! それなら死んだと言い張れたのにな!」
「親不孝って罵っておいて次はそれですかそうですか」
父親に抱いていた全ての恐怖を怒りに焼き払った今、レインに残る感情は呆れた虚無感だけである。
「だったら此処で殺してやろうか!」
「おじさん」
ルーシーは静かに立ち上がり、父親の肩を押さえた。
「ユウキ君は少々言い過ぎているかもしれませんが、世の中、俗にいう立派な人間なんて、そういないんですよ」
父親は怒りの形相をルーシーに向けた。
「もし、それを理由にしてユウキ君を罵倒するなら、僕はどうなるんです? 僕だってミュージシャンで、その上実の両親から絶縁言い渡された放蕩息子なんですよ?」
「君と由雨生は別だ! 君は立派にメジャーデビューをして、アイドルのプロデューサーをやって、素晴らしい活動をしているじゃないか!」
「所詮日本の中、事務所の後ろ盾とメディアの提灯記事のおかげでしかありません」
「だとしても」
「ユウキ君と比べたら、僕は虚像でしかないんです。考えてみて下さい、一人の人間が、一人で譜面を書いて、機械を動かして、世界中に一万人のリスナーを集める事がどういう事か……きっと僕には出来ないでしょう。それが出来ていたら、三畳一間の倉庫みたいな部屋で悶々と音楽講師なんてやって無かったです」
「うちの倅はただの半端者だろうが! せっかく許してやったバンドを早々に辞めやがって!」
「確かにユウキ君はすぐにバンドを辞めましたが、体を壊したまま続けられる訳がないですよね」
「は?」
怒りに歪んだ父親の表情に、ルーシーは眉を顰めた。
「まさかおじさん、なんでユウキ君がバンドを辞めたか、知らなかったんですか」
つかみどころのない声音が不意に強張り、不気味な地鳴りの様な低い響きを帯びる。その刹那、悪魔を目の当たりにした悪魔祓い氏の如く、父親が怒号を上げた。
「何様のつもりだ、この親不孝者がっ!」
父親は立ち上がり、息子を見下ろしながら続けた。
「何が自分にしか出来ない事だ! たかが道楽だろうが! いい年になってまともに就職もせずに俺に恥を掻かせやがって! 同期の連中の子供はみんなとっくに独立して、孫まで生まれてるんだぞ!」
「……だから何」
レインは光の無い瞳で父親を見上げた。
「なんだその目は!」
幼い頃、同じ言葉にとてつもない恐怖を覚えていた事をレインは思い出す。だが、彼は今、その過去を怒りの焔で焼き払う。
「散々俺にもかあさんにも恥を掻かせておいて、申し訳ないと思わないのか!」
「確かに、ストレート大卒で一流企業に入って仕送りする様な生活が出来なかった事は事実だけど、だからって人様に迷惑をかける様な生き方はしてない」
「ろくに働きもせずに生きていて、何が迷惑をかけて無いと言える!」
「働いてたよ。てか、今でも働いてるし」
「音楽は」
「音楽じゃなくて、通信入ってからはショップのバイトしてたし、今でもパーツショップの手伝いしてる」
「それが仕事か!」
「仕事だよ。給料貰って働いてるんだから」
「そんなもん仕事に入るか!」
「それって世の中を下支えしてる非正規労働者全部に対する悪口じゃん」
「うるせえ! そんな恥ずかしい事が仕事に入るか!」
「懲役じゃないなら普通に仕事だよ」
「貴様なんぞ豚箱にぶち込まれてる方がよっぽどましだった! それなら死んだと言い張れたのにな!」
「親不孝って罵っておいて次はそれですかそうですか」
父親に抱いていた全ての恐怖を怒りに焼き払った今、レインに残る感情は呆れた虚無感だけである。
「だったら此処で殺してやろうか!」
「おじさん」
ルーシーは静かに立ち上がり、父親の肩を押さえた。
「ユウキ君は少々言い過ぎているかもしれませんが、世の中、俗にいう立派な人間なんて、そういないんですよ」
父親は怒りの形相をルーシーに向けた。
「もし、それを理由にしてユウキ君を罵倒するなら、僕はどうなるんです? 僕だってミュージシャンで、その上実の両親から絶縁言い渡された放蕩息子なんですよ?」
「君と由雨生は別だ! 君は立派にメジャーデビューをして、アイドルのプロデューサーをやって、素晴らしい活動をしているじゃないか!」
「所詮日本の中、事務所の後ろ盾とメディアの提灯記事のおかげでしかありません」
「だとしても」
「ユウキ君と比べたら、僕は虚像でしかないんです。考えてみて下さい、一人の人間が、一人で譜面を書いて、機械を動かして、世界中に一万人のリスナーを集める事がどういう事か……きっと僕には出来ないでしょう。それが出来ていたら、三畳一間の倉庫みたいな部屋で悶々と音楽講師なんてやって無かったです」
「うちの倅はただの半端者だろうが! せっかく許してやったバンドを早々に辞めやがって!」
「確かにユウキ君はすぐにバンドを辞めましたが、体を壊したまま続けられる訳がないですよね」
「は?」
怒りに歪んだ父親の表情に、ルーシーは眉を顰めた。
「まさかおじさん、なんでユウキ君がバンドを辞めたか、知らなかったんですか」
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