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第2章 過去と現在
8 再会…ルカside
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最初に一目見て母だと分かった。
あの日から少しも変わっていない、綺麗なままの母の姿。
行方不明だと聞いた時は頭が真っ白になってどうしたらいいのか分からなかった。
けれどエル様と情報を頼りに探し出し、無事に救い出すことが出来た。
そこまでは良かったが、いざ会いたかった人を目の前にすると何て話し掛けたらいいのか分からなくなってしまい、一歩を踏み出せない。
そんな時。
「ほらルカ。早く行ってあげてくださいよ!」
そう言い僕の背中を押してくれたのがエル様だった。
「……はい」
その一言で迷いは無くなり、ようやくあの人の元へ歩き出す事が出来た。
辺りは日が沈み暗く、空からの月明かりだけがこの場所を照らしている。
月明かりを頼りにあの人の元に一歩ずつ歩み寄る。
遠くからでも分かる透き通った綺麗な水色の髪。
それが優しく吹く夜風で靡く。まるで夜空に輝く宝石のよう。
懐かしく感じる。こうして会うのは二年ぶり。
時間が経つのはあっという間と言うけれど、僕にとってこの二年間はとても長いものに感じた。
ようやく会えたのだ。勇気を出せ、エル様にも背中を押してもらったんだから。
それを胸に、背を向けるあの人に思い切って話し掛ける。
「あ、あの、すみません……」
思っていたよりも声が震え、それに自分でも驚いてしまう。
こんなに緊張するものなのか……?
らしくないなと思っていると、あの人がゆっくりと振り返った。
髪と同じ色の水色の瞳が僕をまっすぐに見つめてくる。
風で揺れる髪を白く細い手でそっと抑え、
「ルカ……、会いたかったわ」
そう涙を流し、美しい笑みを浮かべた母から目が離せない。
「……無事で良かったです」
「貴方も。元気そうで良かったわ」
「……」
「ルカ、こっちにいらっしゃい」
そう言うと両手を広げ、おいでと言うように微笑んだ。
それに恥ずかしさはあったものの、それ以上に嬉しさが勝り、ゆっくりと歩み寄って行く。
そして目の前まで来ると細いスラッとした腕が僕を抱きしめた。
「あの日から毎日貴方のことを思っていたわ。会いたかった、ルカ。大きくなったわね」
そう嬉しそうに囁く母様の声を聞いた途端、涙が溢れて頬を伝う。
涙腺が壊れてしまったのかと思うほど、次から次へと溢れて止まらない。
こんなに泣くのは生まれて初めてかもしれない。
母と別れたあの時でさえ泣くことを我慢したのだ。
それがこの瞬間、念願が叶って今まで感じていた寂しさ、悲しさ、不安、孤独。そう言った心の奥底に押し込めていた負の感情が一気に溢れ出してしまったような、そんな心情。
その全てが涙となって溢れる。
こんなにも会えて嬉しいなんて。
こんなにも涙が止まらない事なんて……。
本当に無事で良かった……。
涙が止まらず言葉もろくに話せない僕を、母は気にせず何も言わずに優しく抱きしめてくれていた。
とても懐かしい香りがする。少し前のことを思い出すな。
家に居たときはこんな風に抱きしめてくれることが良くあった。
その度に母の温もりを感じられて、父や兄からは与えられなかった無償の愛と言うものを母からは沢山もらえて、愛されていると実感することが出来たのだ。
母だけが僕の味方。そんな母が僕は大好きだった。
「母様……」
小さく呟くとそれを聞いた母は嬉しそうに笑って、
「やっと母様って呼んでくれたわね。あの頃のように」
そう言って微笑する母につられ、僕も笑った。
それから少しの間言葉は少なかったけれど、お互いがお互いの再会の時間を心の底から喜んだのだった――。
あの日から少しも変わっていない、綺麗なままの母の姿。
行方不明だと聞いた時は頭が真っ白になってどうしたらいいのか分からなかった。
けれどエル様と情報を頼りに探し出し、無事に救い出すことが出来た。
そこまでは良かったが、いざ会いたかった人を目の前にすると何て話し掛けたらいいのか分からなくなってしまい、一歩を踏み出せない。
そんな時。
「ほらルカ。早く行ってあげてくださいよ!」
そう言い僕の背中を押してくれたのがエル様だった。
「……はい」
その一言で迷いは無くなり、ようやくあの人の元へ歩き出す事が出来た。
辺りは日が沈み暗く、空からの月明かりだけがこの場所を照らしている。
月明かりを頼りにあの人の元に一歩ずつ歩み寄る。
遠くからでも分かる透き通った綺麗な水色の髪。
それが優しく吹く夜風で靡く。まるで夜空に輝く宝石のよう。
懐かしく感じる。こうして会うのは二年ぶり。
時間が経つのはあっという間と言うけれど、僕にとってこの二年間はとても長いものに感じた。
ようやく会えたのだ。勇気を出せ、エル様にも背中を押してもらったんだから。
それを胸に、背を向けるあの人に思い切って話し掛ける。
「あ、あの、すみません……」
思っていたよりも声が震え、それに自分でも驚いてしまう。
こんなに緊張するものなのか……?
らしくないなと思っていると、あの人がゆっくりと振り返った。
髪と同じ色の水色の瞳が僕をまっすぐに見つめてくる。
風で揺れる髪を白く細い手でそっと抑え、
「ルカ……、会いたかったわ」
そう涙を流し、美しい笑みを浮かべた母から目が離せない。
「……無事で良かったです」
「貴方も。元気そうで良かったわ」
「……」
「ルカ、こっちにいらっしゃい」
そう言うと両手を広げ、おいでと言うように微笑んだ。
それに恥ずかしさはあったものの、それ以上に嬉しさが勝り、ゆっくりと歩み寄って行く。
そして目の前まで来ると細いスラッとした腕が僕を抱きしめた。
「あの日から毎日貴方のことを思っていたわ。会いたかった、ルカ。大きくなったわね」
そう嬉しそうに囁く母様の声を聞いた途端、涙が溢れて頬を伝う。
涙腺が壊れてしまったのかと思うほど、次から次へと溢れて止まらない。
こんなに泣くのは生まれて初めてかもしれない。
母と別れたあの時でさえ泣くことを我慢したのだ。
それがこの瞬間、念願が叶って今まで感じていた寂しさ、悲しさ、不安、孤独。そう言った心の奥底に押し込めていた負の感情が一気に溢れ出してしまったような、そんな心情。
その全てが涙となって溢れる。
こんなにも会えて嬉しいなんて。
こんなにも涙が止まらない事なんて……。
本当に無事で良かった……。
涙が止まらず言葉もろくに話せない僕を、母は気にせず何も言わずに優しく抱きしめてくれていた。
とても懐かしい香りがする。少し前のことを思い出すな。
家に居たときはこんな風に抱きしめてくれることが良くあった。
その度に母の温もりを感じられて、父や兄からは与えられなかった無償の愛と言うものを母からは沢山もらえて、愛されていると実感することが出来たのだ。
母だけが僕の味方。そんな母が僕は大好きだった。
「母様……」
小さく呟くとそれを聞いた母は嬉しそうに笑って、
「やっと母様って呼んでくれたわね。あの頃のように」
そう言って微笑する母につられ、僕も笑った。
それから少しの間言葉は少なかったけれど、お互いがお互いの再会の時間を心の底から喜んだのだった――。
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