幸せな人生を目指して

える

文字の大きさ
32 / 229
第2章 過去と現在

9 終息

しおりを挟む
襲撃と誘拐事件から二日。早くも事件は鎮圧されつつある。

それもこれも皆、国王陛下をはじめ、王城の騎士団、そして父様達の迅速な対応があったから。


あの後、襲撃に関わっていた全ての人達を捕縛、連行できたと父様から聞いて一安心。

そしてルカとセレーナさんは無事再会を果たし、最初は二人とも戸惑っていたものの今はもうすっかり打ち解けている様子。本当に良かったです。


そしてアシェンバート伯爵とその息子アロイスさんも無事だったみたい。

直接は会っていないけど、襲撃から逃げて来てそれを騎士団が発見して保護したとか。

発見された時腰が抜けて動けなかったそうで、態度はいっちょ前なのにいざと言う時は大切な人を置いて逃げるタイプだなと私は冷静に分析しました。

正直あの二人にはセレーナさんは勿体ない。

そんな二人の元にセレーナさんを帰すのはちょっと……、と言うのもあるけど。

そこで父様と母様に話しをしてみたところ、それなら二人の元には帰さずむしろこの屋敷で一緒に暮らせば良いのでは?という意見が出て、私もそれに賛成したのだけど当の彼女は首を振って承諾しなかった。

ルカのことを助けてくれただけでなく自分までもお世話になるわけにはいかないと断固聞き入れない。

こちらとしては迷惑なんてみじんも思っていないけど。それにセレーナさんは母様の友人ですし、嫌な気なんてしないのに。

説得虚しく断られ続けられるけど、彼女は今帰る家がない身。

それにルカともせっかく再会を果たせたのだからこれからは一緒に居て欲しいと言う私の願いで、一緒の屋敷ではなく、でもいつでも会えるよう屋敷のすぐ近くの空いている離れを提供してみた。

すると渋々と言った感じだったけど、それならと何とか受け入れてくれて、そっとルカを見れば心なしか嬉しそうにしていた。


そうしてセレーナさんの住むところが決まった後、二年前伯爵家で何があったのかを話してくれた。

跡継ぎが一人いれば他の子どもはいらないという考えを持つ伯爵。そして冷酷非道な態度。セレーナさんはそれを快く思っていなかった。

でも自分が伯爵に何を言っても変わるとは思えないし、指摘したことで更に悪化してしまうのではないかと不安だったという。

そんな日々が続き、限界だと思い始めたある日。セレーナさんはとんでもないことを耳にしてしまう。

それはルカの暗殺計画の話だった。

その計画を側近の男と話しているのを偶然聞いてしまったそう。

それを聞いたセレーナさんは絶望感にさいなまれた。いくらルカが跡を継がない、伯爵にとっていらない子だったとしてもそれだけで暗殺何て考える親はいない。

そんなことを考える親は親ではない。

セレーナさんはその時伯爵に殺意が芽生えてしまったと言っていた。

セレーナさんにとってルカはかけがえのない大切な息子。

利益なんていらない。後も継がなくて良い。ただ元気に笑って生きてくれてさえいればそれで良い。

それなのに何も悪いことはしていないのに何故ルカが死ななければならないのか。


一度殺意が生まれると抑えが利かなくなってしまうことも多い。

恨みは確かにあった。けれど彼女は伯爵を手にかけることはしなかった。

すんでのところで留まれた。

その時彼女の脳裏にルカの裏表のない、素直な笑顔を思い出したから。

父から愛されていないと気づきながらもいつもセレーナさんの前では気丈に笑みを浮かべていたルカ。

幼いながらにとても優しい子に育ってくれた誰よりも愛している息子。

そんな気持ちを改めて思い出し、思いとどまったセレーナさんはルカを助けるために行動を起こした。

それも秘密裏に。絶対に二人には気づかれてはいけない。

そんな不安な中、急いで友人だった母様に状況とルカを預かってほしいと言うことだけを伝えこっそりとルカを安全な場所に逃がしたのだそうです。


そこから先は私にも何となく分かるけど、セレーナさんも一緒に逃げなかったのはルカの事を誤魔化すための時間稼ぎ、それから伯爵の行動を監視するためだったのでしょう。

選択の余地がなかったにしても、出来る事ならルカの傍で守ってあげたかったはず。

それが叶わずこうして一人、何も知らないルカを送り出した。その時の彼女の心情を考えると胸が苦しくなる。



そして数年後、ついに対立していた者達から襲撃を受けてしまい、しかもその中にはブロイド伯爵の勝手な逆恨みもあり関係ないセレーナさんが誘拐されてしまい、それを聞いた私達が救出に向かい、無事救い出すのに成功してルカとも再会を果たせた、と言う事で騒動は終わりを告げた。


話し終えた後セレーナさんは悲しそうな顔で、

「あの人私と出会った時はあんな人じゃなかったのに……、変わってしまったわね」

そう小さく呟いているのが聞こえた。

何でも伯爵の性格は元は温厚でとても優しい人だったらしく、結婚をして子どもの話なども楽しそうにしていたのだそうで、それを聞いて話に聞いていた伯爵とあまりにも違うので信じられない思いになった。

セレーナさんが言うのだから本当なのでしょうけど。

伯爵が変わってしまったのは結婚して少し経った頃で、伯爵家の当主、家族を養わなければならないという様々な責任が段々とストレスへと変わって行ってしまったようでその頃から誰に対しても敵対心を剥き出しにし、冷たくなっていったのだそうです。

その話を聞いては同情もしたくなるけど、今回のことを考えるとそれは出来なくなる。

誰かれ構わず敵に回そうとするのは宜しくないです。

きっと性格が変わっていなかったら今も周りの人と良好な関係を築けたはずなのに。

その時の伯爵だったらセレーナさんが誘拐されたのを聞いたら飛んで行ったのでしょうね。

今の父様のように。

もしも母様が同じ目に遭ったらまさに電光石火のごとく、父様は飛んで行くことでしょう。


何はともあれ今回の件は確かに伯爵がまいた種が原因で起こった騒動です。

でももう一人、あのブロイド伯爵が襲撃何て馬鹿なことを考えなければ襲撃なんて起こらなかったはずです。

やっぱりあの人は色々な意味で好きになれない人種。

もう関わりたくないと本気で思いましたね、はい……。


と言う事で、様々な人達の尽力によって襲撃騒動と誘拐事件は無事解決したのだった。


もう会うことはないと思うけど、もしも伯爵とどこかで会うことがあってその時まだ懲りていないようだったら今回以上にこてんぱんに懲らしめてやりましょうと今心に誓ったのでした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

処理中です...