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第2章 過去と現在
10 ルカの誕生日会~至福のひと時~
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「ルカお誕生日おめでとうございます!」
「「おめでとう!!」」
その声を合図に会場全体に響き渡るほどの爆音を立ててカラフルな紙テープが上から降り注ぐ。
誕生日会などで良くあるクラッカーです。
でもこの世界にはなかったので、それに似たものを魔法を使ってクラッカー風に仕立て、それを今回試してみたと言う訳。
結果大成功!
皆にも協力してもらって凄く盛大な誕生日会の幕開けになった。
今日はルカの十五歳の誕生日。
毎年お祝いしているけど今回はルカのお母様、セレーナさんもいるし、そして最近良くいらっしゃる殿下も参加しています。
ちゃっかりと。
いつも頑張ってくれているルカにたまには一休みしてほしいという思い、それとセレーナさんとも楽しい時間を過ごしてほしいと思っているのですよ。
「皆さんありがとうございます」
皆からの盛大な祝福に嬉しそうに微笑むルカ。
色々あったけど、この日を無事に迎えることが出来て良かった。
会場には出来立ての料理や、大人の方が飲むお酒などが用意されていて皆それぞれ楽しんでいるみたい。
私も少し料理をとって頂いた。
やっぱりうちの料理人さんは凄い!とても美味しいです。
一人で堪能していると同じく料理を持った殿下が近づいてきた。
「今回のパーティーも盛大だな」
「それはそうですよ。家族のお祝いなんですから」
「そうだったな。あいつもいつもより嬉しそうにしているようだな」
「そうですね。あっ!」
そんな話をしながらふとルカを見るとセレーナさんと何やら話し込んでいて、会話が聞こえずとも分かる。
とても幸せそうな顔をしている。
「良かったな無事に会うことが出来て」
「はい、本当に良かったです」
感動してしまい溢れそうになる涙を指で拭っていると頭にポンっと手を置かれ慰められた。
「殿下……」
「まったく当の本人よりも感動するなんて、エルも相変わらずだな」
「良いじゃないですか。主としてそして家族としてルカの幸せな顔を見れるのは嬉しい事なんですから」
「ここまで思ってもらえるとは奴は十分幸せだな」
そう言うと殿下はルカの方へ向かって行く。
「殿下?」
「少し話があるんだ。エルも一緒に来てくれ」
そう言うので私もあとから続いて行った。
「すまないが少し良いか?」
「殿下」
「あら、貴方が話に聞いていたアルフレッド殿下ですのね」
ふんわりとした笑みを浮かべたセレーナさん。
「お初にお目にかかりますわ。私はセレーナ・アシェンバート。ですが今はただのセレーナですわ」
「私はアルフレッド・オルデシア。貴殿とは初めて会うが誰かから私のことを聞いていたのか?」
「ええ、息子のルカからですわ。とても素晴らしい王太子様がいらっしゃると、良く話してくれていたのですよ」
「母様っ」
その話が出た途端、隣から制しの声が上がった。
「あら、照れているの?」
「……っ」
普段はあまり見ることのできないような真っ赤な顔をしたルカが恥ずかしそうにおどおどしていた。
「ふふ、直接こうして殿下と話せる機会が会って良かったわ。ちゃんとルカの事、お礼が言えるもの」
「お礼?」
「ええ、ルカと仲良くしてくださって感謝いたしますわ。出来る事ならこれから先も仲良くしていただきたいとこの子の母親としても思っていますわ」
「そんな礼を言われるほどの事ではないさ。こちらこそその、友人として接してくれると助かる、な」
最後の方はルカに対して。照れながらもちゃんと伝えられて偉いですよ殿下。
ほらルカも嬉しそう。
毎回会うごとにこの二人の間にはバチバチと火花が散っているように見えて、仲が悪いのかなとも思ったことがあるけど、どうやら今回でそれはなくなった、のかな?
今の二人は仲の良い友人に私には見えるから。
「それから言っておかなければならないことがある」
急にそう言った殿下は真面目な顔になり、和んでいた雰囲気が一気に緊張したものへと変わっていった。
様子の変わった殿下に私達も黙って聞く姿勢をとる。
「今回の件、私に恨みがある者が起こした騒動だと聞いた。だからそのことについて謝らせてほしい」
強く拳を握りしめて俯いてしまう。
「やめてください。殿下のせいではありません」
「いや、私のせいだ。それにエルまでも巻き込んでしまった。本当にすまなかった」
そう言って殿下は私達三人に向かって頭を深く下げた。
驚きのあまり一瞬固まってしまったけどすぐに我に返り、慌てて殿下に言う。
「殿下っ、頭を上げてください!貴方のせいじゃありませんよ」
私がそう言うとそれに続けてルカも口を開く。
「その通りです。今回の件は僕の問題。貴方のせいではありません」
「二人の言う通りですよ。殿下、頭を上げてください」
最後のセレーナさんの言葉でゆっくりと頭を上げて、少し不安げな表情で見つめてくる。
「殿下、それからルカ、今回のことは誰のせいでもないんですよ。だから自分を責めないで下さいね」
「そうよ。それにこうしてまた皆に敢えて私も嬉しいわ」
そう言って周りを見回すセレーナさん。
そう言えば彼女は母様と友人だと言っていたし、さっきも話しているのを見かけたっけ。
楽しそうに話していて、私も将来そんな親友が出来たらいいな何て胸をふくらませてしまう。
「……本当にすまない」
「もう謝らないで下さい。らしくないですよ」
「だが何かしなければ私の気が済まない。せめて何か望むことはないか?」
「望み、ですか?」
「ああ、何でも良い。私に叶えられることならば叶えよう」
ルカは目を閉じ何やら考えている様子。そして暫くして思いついたのか目を開けると挑戦的な目を殿下に向けた。
「では殿下。僕と一度手合わせ願えませんか?」
「手合わせ?」
「はい」
ルカの申し出に私とセレーナさんは驚きを隠せない。
そんな中殿下だけは真剣に考えているみたいだった。
「分かった、良いだろう」
「ありがとうございます」
「私も一度お前と手合わせして見たかったのだ。この機会にお互い全力で実力を見せ合おう」
「そうですね。しかし殿下が相手でも僕は手加減しませんよ」
「当然だ。手加減などしたらそれこそ返り討ちにしてくれる。楽しみに待っていろ」
喧嘩に発展するのでは……?とセレーナさんと固唾をのんで見守っていたけどその心配はなかったようです。
違う意味で燃えているみたいだし。
何はともあれ、殿下とルカが仲良くなってくれたようなので良かったですよ。
今日の誕生日会はルカにとって良い思い出になったはず。そう思いたいですね。
そしてそのあとも食事をしたりお喋りをしたりと楽しく有意義な時間を過ごし、ルカの十五歳の誕生日会は幕を閉じたのでした。
「「おめでとう!!」」
その声を合図に会場全体に響き渡るほどの爆音を立ててカラフルな紙テープが上から降り注ぐ。
誕生日会などで良くあるクラッカーです。
でもこの世界にはなかったので、それに似たものを魔法を使ってクラッカー風に仕立て、それを今回試してみたと言う訳。
結果大成功!
皆にも協力してもらって凄く盛大な誕生日会の幕開けになった。
今日はルカの十五歳の誕生日。
毎年お祝いしているけど今回はルカのお母様、セレーナさんもいるし、そして最近良くいらっしゃる殿下も参加しています。
ちゃっかりと。
いつも頑張ってくれているルカにたまには一休みしてほしいという思い、それとセレーナさんとも楽しい時間を過ごしてほしいと思っているのですよ。
「皆さんありがとうございます」
皆からの盛大な祝福に嬉しそうに微笑むルカ。
色々あったけど、この日を無事に迎えることが出来て良かった。
会場には出来立ての料理や、大人の方が飲むお酒などが用意されていて皆それぞれ楽しんでいるみたい。
私も少し料理をとって頂いた。
やっぱりうちの料理人さんは凄い!とても美味しいです。
一人で堪能していると同じく料理を持った殿下が近づいてきた。
「今回のパーティーも盛大だな」
「それはそうですよ。家族のお祝いなんですから」
「そうだったな。あいつもいつもより嬉しそうにしているようだな」
「そうですね。あっ!」
そんな話をしながらふとルカを見るとセレーナさんと何やら話し込んでいて、会話が聞こえずとも分かる。
とても幸せそうな顔をしている。
「良かったな無事に会うことが出来て」
「はい、本当に良かったです」
感動してしまい溢れそうになる涙を指で拭っていると頭にポンっと手を置かれ慰められた。
「殿下……」
「まったく当の本人よりも感動するなんて、エルも相変わらずだな」
「良いじゃないですか。主としてそして家族としてルカの幸せな顔を見れるのは嬉しい事なんですから」
「ここまで思ってもらえるとは奴は十分幸せだな」
そう言うと殿下はルカの方へ向かって行く。
「殿下?」
「少し話があるんだ。エルも一緒に来てくれ」
そう言うので私もあとから続いて行った。
「すまないが少し良いか?」
「殿下」
「あら、貴方が話に聞いていたアルフレッド殿下ですのね」
ふんわりとした笑みを浮かべたセレーナさん。
「お初にお目にかかりますわ。私はセレーナ・アシェンバート。ですが今はただのセレーナですわ」
「私はアルフレッド・オルデシア。貴殿とは初めて会うが誰かから私のことを聞いていたのか?」
「ええ、息子のルカからですわ。とても素晴らしい王太子様がいらっしゃると、良く話してくれていたのですよ」
「母様っ」
その話が出た途端、隣から制しの声が上がった。
「あら、照れているの?」
「……っ」
普段はあまり見ることのできないような真っ赤な顔をしたルカが恥ずかしそうにおどおどしていた。
「ふふ、直接こうして殿下と話せる機会が会って良かったわ。ちゃんとルカの事、お礼が言えるもの」
「お礼?」
「ええ、ルカと仲良くしてくださって感謝いたしますわ。出来る事ならこれから先も仲良くしていただきたいとこの子の母親としても思っていますわ」
「そんな礼を言われるほどの事ではないさ。こちらこそその、友人として接してくれると助かる、な」
最後の方はルカに対して。照れながらもちゃんと伝えられて偉いですよ殿下。
ほらルカも嬉しそう。
毎回会うごとにこの二人の間にはバチバチと火花が散っているように見えて、仲が悪いのかなとも思ったことがあるけど、どうやら今回でそれはなくなった、のかな?
今の二人は仲の良い友人に私には見えるから。
「それから言っておかなければならないことがある」
急にそう言った殿下は真面目な顔になり、和んでいた雰囲気が一気に緊張したものへと変わっていった。
様子の変わった殿下に私達も黙って聞く姿勢をとる。
「今回の件、私に恨みがある者が起こした騒動だと聞いた。だからそのことについて謝らせてほしい」
強く拳を握りしめて俯いてしまう。
「やめてください。殿下のせいではありません」
「いや、私のせいだ。それにエルまでも巻き込んでしまった。本当にすまなかった」
そう言って殿下は私達三人に向かって頭を深く下げた。
驚きのあまり一瞬固まってしまったけどすぐに我に返り、慌てて殿下に言う。
「殿下っ、頭を上げてください!貴方のせいじゃありませんよ」
私がそう言うとそれに続けてルカも口を開く。
「その通りです。今回の件は僕の問題。貴方のせいではありません」
「二人の言う通りですよ。殿下、頭を上げてください」
最後のセレーナさんの言葉でゆっくりと頭を上げて、少し不安げな表情で見つめてくる。
「殿下、それからルカ、今回のことは誰のせいでもないんですよ。だから自分を責めないで下さいね」
「そうよ。それにこうしてまた皆に敢えて私も嬉しいわ」
そう言って周りを見回すセレーナさん。
そう言えば彼女は母様と友人だと言っていたし、さっきも話しているのを見かけたっけ。
楽しそうに話していて、私も将来そんな親友が出来たらいいな何て胸をふくらませてしまう。
「……本当にすまない」
「もう謝らないで下さい。らしくないですよ」
「だが何かしなければ私の気が済まない。せめて何か望むことはないか?」
「望み、ですか?」
「ああ、何でも良い。私に叶えられることならば叶えよう」
ルカは目を閉じ何やら考えている様子。そして暫くして思いついたのか目を開けると挑戦的な目を殿下に向けた。
「では殿下。僕と一度手合わせ願えませんか?」
「手合わせ?」
「はい」
ルカの申し出に私とセレーナさんは驚きを隠せない。
そんな中殿下だけは真剣に考えているみたいだった。
「分かった、良いだろう」
「ありがとうございます」
「私も一度お前と手合わせして見たかったのだ。この機会にお互い全力で実力を見せ合おう」
「そうですね。しかし殿下が相手でも僕は手加減しませんよ」
「当然だ。手加減などしたらそれこそ返り討ちにしてくれる。楽しみに待っていろ」
喧嘩に発展するのでは……?とセレーナさんと固唾をのんで見守っていたけどその心配はなかったようです。
違う意味で燃えているみたいだし。
何はともあれ、殿下とルカが仲良くなってくれたようなので良かったですよ。
今日の誕生日会はルカにとって良い思い出になったはず。そう思いたいですね。
そしてそのあとも食事をしたりお喋りをしたりと楽しく有意義な時間を過ごし、ルカの十五歳の誕生日会は幕を閉じたのでした。
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