幸せな人生を目指して

える

文字の大きさ
153 / 229
第8章 ノスタルジア

4 小さな天使

しおりを挟む
久々に再会を果たせたと言わんばかりの女の子の喜びように、私まで胸が温かくなる。
純粋で満面の笑みを浮かべる彼女が眩しい。

けれど見つめていると漸くその視線に気付いた様子で、ハッと我に返った彼女は殿下を盾に後ろに隠れてしまった。
極度の人見知りのようだが、それでも気になるのか少し顔を覗かせて様子を伺っているところがまた可愛らしい。

「こらメリル。隠れていては彼らに失礼だろう?」

どうしたものかと困っていると察してくれたのかどうなのか、助け舟を出してくれた殿下が彼女の背中をそっと押す。

「はい…」

背中を押されて小柄の身体を更に小さくしながら一歩前に出てくると彼女はぺこりと頭を下げた。

「は、はじめまして…。メリル、です…」

か、可愛いっ…!
一挙一動が私のツボを押しまくる。

華奢で小柄、艶のあるオレンジの長い髪、パッチリとした大きく丸いターコイズの瞳。
珍しい組み合わせと言うそれだけで目立つ容姿だけど、顔の整い具合も重なって人の目を引き付ける子だ。
見目麗しいとはまさにこの事。天使が舞い降りたと言われても納得するね。

「初めまして。私はエルシア・シェフィールドと言います。こちらはレヴィ・ローレンス君です」

「おい、何勝手に教えてるんだよ」

自分の紹介とそれからレヴィ君の事もちゃっかり紹介してあげたら小声で怒られ睨まれた。
根は優しいけど初対面の相手に愛想良くしなさそうって思っての行動だったのに。と不満に思ったものの、それを言うとまた怒られるので黙っておきますね。
そうしてレヴィ君の小言を完全にスルーし、怖がらせないように彼女――メリルちゃんににっこりと笑いかける。
すると警戒が解けてきたのか、彼女もつられるように笑った顔を見せてくれた。

「良かったですね、メリル様」

「うん…」

案内の男性にメリルちゃんは嬉しそうに頷くと、そのくりっとした大きな目で私を見上げる。
その愛くるしさに私の心臓は撃ち抜かれ、ズキューンと効果音が聞こえてきそうな衝撃を受けたのだった。


「では皆さん。そろそろ先へ急ぎましょう」

「そうだな。それにしても久しいな。メリル、彼は元気にしているか?」

「はい!……でも最近はお仕事がいそがしいみたいで、あまりお話しできないの」

「そうか…。今は寂しくてももうすぐ終わらせてメリルに会いに来るさ。なんたってメリルを溺愛しているからな」

仲良く手を繋ぎながら並んで歩く二人の会話が耳に入ってくるけど、なんだかメリルちゃん悲しそうで、そんなメリルちゃんを殿下が優しく気遣う。無邪気で明るい殿下とは違い、あまり見せない大人びた優しい表情でメリルちゃんの話を聞いていた。
殿下に弟か妹がいたらこんな感じでちゃんとお兄ちゃんをしていたんだろうな。なんて新たな彼の一面を見て嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになった。



「こちらで王太子殿下がお待ちです」

そう言って案内されたのはオルデシアの王城でも良く見た玉座の間、ではなく応接室のようだった。
ひとえに応接室と言ってもここは王城。飾られている一つ一つの装飾は私でも目が眩んでしまう程価値があるに違いないのだけど。

「失礼するぞ」

国が違えど彼も王族。一言断ったが扉をさっさと開け、まるで自分の家のように堂々とした足取りで中に入って行く。
そしてそれに続いて入って行くメリルちゃん。

…?
そこで私の頭にはてなマークが浮かび上がった。

メリルちゃんは装いからして身分の高い家の子なんだろうけど一緒に入って大丈夫なのだろうか?
この先にいるのは王太子殿下だよね?

重要な話をするだろうし、この先は限られた人しか入る事が出来ないと思っていたんだけどな。
そんな率直な疑問だった。

だけどその疑問はこの後直ぐに解ける事となる。



その部屋へと足を踏み入れた途端、雰囲気がガラッと変わる。
応接室は来客をもてなす部屋でもある為、必要最低限で物は多くなくて広々としており、大きな窓が設けられそこから差し込む日の光が机と来客者用の椅子に降り注ぐような作り、配置になっていた。

そしてその椅子には一人の少年がおり、後ろには側近だろう若い男性が控えるようにして立っている。

「遠路遥々申し訳ない。シュレーデル王国、そして我が王城へ良く来てくれた。貴殿達を歓迎する」

「こちらこそ到着が遅くなってしまって申し訳ない。ここまでの案内、そして歓迎感謝する」

椅子に腰かけていた少年はその場で立ち上がると、良く通る声で私達に歓迎の言葉をかけてくれて、それに対して殿下も丁寧にお礼を述べ気持ちを伝えていた。


……この方が王太子殿下……。と言うか気が付いてしまったんだけど、髪と瞳の色がメリルちゃんと同じなんだけど……。これは嫌な予感…。

「お初にお目にかかる。私はリハルト・フォン・シュレーデル。そしてそこにいる子が――」

胸の前に手を当て紳士的に名乗るリハルト殿下。王子様スマイルも忘れる事なく添えて。

そしてアルフレッド殿下の隣でちょこんと佇むメリルちゃんを手招きし、自分の方へと呼び寄せた。
彼女は嬉しそうに駆けて行き彼女の頭を一撫でしてから肩に手を置くと私達の方へと顔を向けさせる。

「もう知っているかもしれないが、この子はメリル。私の可愛い妹だ」

「メリル・フォン・シュレーデルです」

その嫌な予感は的中した。
メリルちゃんも王族でした……。私ってばちゃん付けで呼んでたよ…恐れ多い事を。
リハルト殿下の妹。つまりは王女殿下……。

口走ってはいないだろうけど間違ってもメリルちゃんなんてもう呼べない……。

メリルちゃ…王女殿下は仕事が忙しいらしいリハルト殿下に久しぶりに会えたのだろう。本当に嬉しそうだ。


そんな仲睦ましい兄妹をよそに私は一人途方に暮れたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...